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バックストーリー  |    2026.07.17

「塩は調味料ではなく基本食糧」伯方塩業・石丸一三社長が語る企業の使命

「は・か・た・の・しお♪」

誰もが一度は耳にしたことがあるフレーズではないでしょうか。

愛媛県に本社を構える伯方塩業株式会社は、全国的な知名度を誇る「伯方の塩」を製造・販売する企業です。しかし、そのルーツをたどると、単なる食品メーカーではなく、日本の塩文化を守ろうとした消費者運動から生まれた珍しい企業であることがわかります。

今回は伯方塩業株式会社代表取締役社長の石丸一三(いしまるかずみ)さん(以下、石丸社長)に、創業の精神や塩づくりへの想い、そして未来へのビジョンについてお話を伺いました。

現場を知る社長だからこそ見えるもの

石丸社長が伯方塩業へ入社したのは1982年。

以来40年以上にわたり営業畑を歩み続けてきました。

「私は営業しかやっていません」

そう笑顔で話す石丸社長ですが、その経験こそが現在の経営に活かされています。

2013年に取締役へ就任し、2018年には代表取締役社長へ。

前任社長が製造部門の基盤づくりを進めた一方で、今後は営業力強化が必要だと判断され、長年営業を担当してきた石丸社長へバトンが渡されました。

企業経営において製造と販売は両輪です。

石丸社長は「良いものを作るだけでは企業は続かない」と語ります。

どれだけ品質の高い商品を作っても、それを選び、使い続けてくれるお客様がいて初めて企業として成り立つ。

その考え方には、長年現場でお客様と向き合ってきた営業職としての視点が色濃く表れていました。

消費者運動から誕生した日本でも珍しい企業

伯方塩業の最大の特徴は、その成り立ちにあります。

今から50年以上前、日本では塩づくりの大転換が行われました。

それまで親しまれてきた流下式などの塩田が廃止され、より効率的な製法へと移行していったのです。

しかし、その変化に疑問を抱いた人たちがいました。

「効率だけを追い求め、品質が置き去りになっているのではないか」

そのような思いを持った消費者たちが立ち上がり、自然塩存続運動を展開。その流れの中から誕生したのが伯方塩業でした。

石丸社長はこう語ります。

「塩は単なる調味料ではありません。水や空気と同じように、人が生きていくために欠かせない基本食糧です」

この考え方こそ、現在も受け継がれる伯方塩業の原点です。

品質の基準は“昭和の塩”

現在の伯方の塩は、輸入天日塩田塩と日本の海水を原料にしています。

これは創業当時、日本の海水から直接塩を作ることが認められず、輸入天日塩を使用することが条件だったためです。

ただし、石丸社長は「原料が変わっても目指す品質は変わらない」と話します。

その基準となっているのが、昭和28年から46年頃まで瀬戸内海沿岸で作られていた流下式塩田の塩。

消費者運動が守ろうとした塩そのものです。

伯方塩業では、その品質を今も目標に掲げながら塩づくりを続けています。

塩の違いがわかるのはシンプルな料理

石丸社長自身が好きな塩の使い方について尋ねると、意外にもシンプルな答えが返ってきました。

「おにぎりですね」

また、肉料理でもソースをたっぷり使うより、塩だけで食べる方が塩の良さがわかると言います。

素材の味を引き出す。

それが塩本来の役割なのかもしれません。

子どもたちに伝えたい“塩の大切さ”

伯方塩業では工場見学や塩つくり体験にも力を入れています。

その理由について石丸社長は、「小さい頃の経験は大人になっても残るから」と話します。

海水を煮詰めると塩になる。

液体が固体へ変化する。

そのような体験を通して、子どもたちは自然や食べ物への関心を深めていきます。

小学生だけでなく、専門学校や料理学校でも講演を行い、食育活動を続けているそうです。

目指すのは“塩を選ぶ人”を増やすこと

今後の展望について伺うと、石丸社長は意外な答えを口にしました。

「伯方の塩を広げることだけが目的ではありません」

大切なのは、食に関心を持つ人を増やすこと。

その結果として、「塩も選んで使うべきものだ」と考える人が増えればいいと語ります。

また、日本では減塩の重要性が広く知られるようになりましたが、「塩=悪」という誤解もあると言います。

必要以上に摂りすぎるのは問題ですが、人間にとって塩は欠かせない存在。

適量を正しく摂取することが大切だと強調しました。

未来へ受け継ぐ使命

経営者として最も大切にしていることは何か。

その問いに石丸社長は迷わず答えました。

「会社を次の世代へつなぐことです」

伯方塩業には約160名の社員が働いています。

家族を含めれば600人近い生活がこの会社に関わっています。

社員が安心して働き、次の世代へ企業をつないでいくこと。

それが経営トップの責任だと語ります。

最後に若い世代へのメッセージをお願いすると、石丸社長はこう締めくくりました。

「夢と希望を持って挑戦してほしい。今日より明日、少しでも良くしていこうという気持ちを持ち続けてほしい」

塩づくりの歴史を守りながら、新しい未来へ挑戦し続ける伯方塩業。

その姿勢こそが、半世紀以上にわたって愛され続ける理由なのかもしれません。

伯方塩業株式会社 会社概要
項目内容
会社名伯方塩業株式会社
創業1973年
本社所在地【松山本社】
愛媛県松山市大手町2丁目3-4
【伯方本社】
愛媛県今治市伯方町木浦甲841
代表者代表取締役社長 石丸 一三
主な事業塩の製造・販売
代表商品伯方の塩
工場伯方工場、大三島工場

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この記事を書いた人

世界のわたなべけん

地域に眠る人・場所・会社を取材し、 世界に向けて発信しています。 現場に足を運び、丁寧に伝えることを大切にしています。 地域の価値を最大化し、世界に届けるのがテーマです。

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