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バックストーリー  |    2026.04.27

鱧割烹いきがい・店主の哲学「料理を通じて人間性を高める」|松山【後編】

前編では、ハモの骨を“切る”のではなく“取り除く”という前例のない技術と、「鱧割烹いきがい」の料理の魅力に迫りました。

後編では、その技術を生み出した店主・塩沢研さんの価値観や、哲学に焦点を当てます。なぜ不可能に挑み続けるのか。

前編はこちら

骨のない鱧を調理「鱧割烹いきがい」とは?世界唯一の技術と実食レポ|松山【前編】



なぜ鱧一筋であり続けるのか。その言葉の一つひとつには、料理を超えた“生き方”がにじんでいました。本記事では、店主が語る仕事観や、人生との向き合い方などを紹介します。

料理は「誰かのため」ではなく自分を高める手段

侍という印象を抱きます

鱧割烹いきがいの料理を語るうえで、最も重要なのが店主の考え方です。一般的に料理人は、「お客様のために」という言葉を大切にします。

しかし店主は、少し違います。

「料理は自分自身を高めるための手段」と捉えているのが特徴です。一見すると冷たく聞こえるかもしれません。

一流のプロの仕事は本当に美しい

ですが実際には、その考え方こそが高いクオリティにつながっています。自分の成長を追求した結果、自然に料理の質も高まる。その先にお客様の満足が生まれる、つまり順番が違うのです。

難しいものに挑戦することで人は成長する

一切無駄のない動き

店主が鱧に特化した理由は明確です。「難しいから」です。簡単にできることでは、人は大きく成長できません。

「鱧は骨が多く、扱いが非常に難しい魚だからこそ挑戦する価値があった」と店主。

「難しい課題に向き合い続けることで、人間としての成長につながる」という考え方が、すべての行動の軸になっています。

3,000匹の積み重ねが生んだ技術

まるで時が止まったかのような静寂

現在の技術に至るまで、決して順調だったわけではありません。最初は1匹さばくのに1時間以上。身は崩れ、骨は残る。理想とは程遠い状態でした。

それでも店主はやめませんでした。やめることは、人としての成長を止めることと同じだからです。

1週間ほど乾燥させ、旨味を凝縮

約3,000匹、この数を超えた頃、店主は鱧の骨格を理解できるようになったそうです。

そこから技術は一気に伸びていきました。日々の積み重ねが、確実に結果へとつながっています。

成長はある日突然訪れる

肩の力を抜くからこそ最大限の力を発揮できると学びました

店主は、「成長には段階がある」と語ります。日々の積み重ねの中で、ある日突然、感覚が変わる瞬間が訪れます。技術が一段階上がる感覚です。

この変化は、「およそ2年に一度のペースで訪れる」といいます。

ただ努力するのではなく、成長のリズムを理解しながら挑戦し続けるところも、店主の特徴の1つです。

時間を作るために仕事を変えた決断

今後のご活躍にも大注目

技術を磨くために、店主は環境そのものを変えています。もともとは料理店で店長として働いていましたが、練習時間を確保するために退職。

その後、お茶漬け専門店を開業しました。仕込み時間を減らし、空いた時間をすべて鱧に使うためです。この生活を7年間続けました。

新鮮な鱧

結果として、現在の技術を形にできたそうです。「成長のために、環境を変えるのは効果的」と知っている人は多いかも知れませんが、店主のように実行できる人は限られるでしょう。

思い込みが成長を止める最大の原因

鱧の骨

店主が強く語るのが「思い込みの危険性」です。

調理の専門学校の教科書にも書かれるなど、「鱧の骨は取れない」のは、料理業界での常識でした。よって、誰も挑戦しませんでした。

しかし、400年以上不可能とされてきたことを、店主は世界で初めて実現しています。

思い込みは、人間の成長を止める最大の要因です。常識を疑うことからすべてが始まる」と店主はいいます。

集中しないことが成功につながる理由

教えを請う料理人には惜しげなく技術を教えています

意外かもしれませんが、店主は「集中しすぎない」ことを大切にしています。

「強く意識すると、余計な力が入ります」その結果、繊細な作業が崩れてしまうため、意識するのは呼吸だけだとか。

「吸って吐く、それだけに集中します」と店主。すると自然に力が抜け、正確な動きができるようになります。

これは料理に限らず、あらゆる仕事に通じる考え方です。

10年後を見据えた未完成の現在地

高みを目指し、チャレンジし続ける姿勢に学ぶところは多い

店主は現在の自分を、「まだ完成していない」と考えています。完成までには、あと10年と見据えています。

目指しているのは、技術と精神が一致した状態です。いわば「禅」の境地。料理と自己成長が完全に重なる状態を目指しています。

店主は今もなお、日々の積み重ねを続けています。

技術は教えるものではなく見て学ぶもの

日々の改善が成長を生む

店主の技術を学びたいと、多くの料理人が訪れます。店主は見学を歓迎していますが、「教える」ことは簡単ではありません。なぜなら、この技術は言葉で伝えられるものではないからです。

実際に見て、感じて、自分で試す。その過程が重要です。試行錯誤こそが、本当の学びにつながりますよね」と店主はいいます。

すべての人に刺さらなくてもいいという考え方

人間性を高めるために難しい鱧料理と向き合う店主

店主は、すべての人に好かれようとは考えていません。「価値観が合う人に届けばいい」そう考えています。

鱧だけを提供するというスタイルも、その考えの表れです。お客さんに、多くの選択肢はありません。

それでも来る人は来る。その関係性を大切にしています。

鱧割烹いきがい「料理とは人間を磨くための行為」

人生で1度は訪れたいお店の1つ

鱧割烹いきがいは店主にとって、ただお客さんに料理を提供するだけの場所ではありません。料理を通じて人間性を高める場所です。

  • 技術を磨く
  • 常識を疑う
  • 積み重ねを続ける

そのすべてが、一皿の料理に込められています。そしてその背景には、「今日は昨日のやり直し」という強い信念があります。

日々を積み重ねることで、人は少しずつ成長していきます。鱧割烹いきがいには、唯一無二の料理を味わうとともに、店主の生き様に感動する時間がありました。

店名鱧割烹 いきがい
住所〒790-0002
愛媛県松山市二番町1丁目9-21魚政ビル1階
アクセス伊予鉄「勝山町駅」から徒歩約6分
営業時間18:00〜23:00
定休日・日曜
・祝日
・第1、第3月曜
(不定休あり)
電話なし
予約・問合せ公式LINE
料金目安・新鱧百珍コース:15,000円(税抜)
・単品:2,000円
SNSInstagram
駐車場なし
※近隣コインパーキング利用

※掲載情報は2026年3月執筆時点のものです

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この記事を書いた人

世界のわたなべけん

地域に眠る人・場所・想いを取材し、 文章✕映像✕出版✕AIで編集、 世界に向けて発信しています。 神社仏閣、地域活動、仕事など、 現場に足を運び、空気感を伝えることを大切にしています。 地域の価値を最大化し、世界に届けるのがテーマです。

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