松山市の中心部にあるアーケード街「銀天街」の路地にあるうどん屋「ことり」。前編では、「鍋焼きうどん」と「いなり寿司」のみで、創業から75年も営業を続けてこられた魅力を解説しました。
後編では、3代目店主「中矢有伊子」さんに対してインタビューした内容を紹介します。お店を継いだ思いや将来の夢、収入面の変化など、営業中にも関わらず丁寧に答えていただきました。
ことりファンの方や、ことりへの訪問を考えている方は参考にしてくださいね。
プレッシャーとは共存するもの
お店で働き始めたのはいつですか?
中矢さん:お店に携わるようになったのは9年ぐらい前です。代表になったのはその2、3年後だったと思います。なので、今から6、7年ぐらい前に代表になりました。
プレッシャーはありませんでしたか?
中矢さん:プレッシャーでした。ただもう毎日をこなしていくといったらおかしいですけど、プレッシャーを跳ねのけるためにただがむしゃらに一生懸命やっただけですね。
継いだ以上、あるものをなくしたらいけないっていうプレッシャーはずっと続くと思います。つぶさないように楽しみながら乗り越えるというよりは、共存していく感じです。
先代から受け継いでいるので、プレッシャーはこの店を辞めるときまでずっと続くと思います。
辞めようと思ったことはありますか?
中矢さん:あんまりないですね。辞めるのは簡単ですけど、始めることの方が難しいじゃないですか。
食べに来るのをお客さんが楽しみにしてくださっているから、簡単に辞められないし、辞めたいと思ったことはそんなにないです。
今後もレシピは変えない
お店が75年も愛され続けている理由はなんでしょうか?
中矢さん:先代たちが作り上げていたものがあるからだと思います。
お店の強みは何ですか?
中矢さん:懐かしさ、早さ、明るさですかね。
創業当時から、うどんといなり寿司のレシピは変わっていないのでしょうか?
中矢さん:一緒ですね。昔から食べに来られてる方は、レシピを変えるとわかると思うんですよ。だから変えないようにしています。
細く長く続けたい
将来的にお店を大きくしたりメニューを増やしたりすることはありますか?
中矢さん:メニューを増やすことはないですね。店を大きくするっていうのもそんなには考えてはいません。
この店が基本で、今のところ手いっぱいなので。店舗を増やすとなると、他の人の手を借りることになると思うので、余裕ができれば考えます。まだちょっと考えてないですね。
今後の夢や目標はありますか?
中矢さん:細く長く続けることですね。最初はいろいろと壮大な夢を持ってたんですけど、長く続けていくことの方が大事かなって思うようになってきました。今の状態を1日でも長く続けられることがまずは目標です。
ある程度安定したなとか、気持ちの部分でちょっと余裕ができたなっていうときに、次のチャレンジとして、もう1店舗出すことなどは希望としてあります。
長く続けているお店を尊敬
同業に限らず、目標とするお店はあります?
中矢さん:目標とするお店さんはたくさんありますね。
長く続けていらっしゃるお店さんはどこも尊敬しています。
サラリーマン時代と比べると年収はかなり上がりました?
中矢さん:いいえ。忙しいから儲けてるでしょうってすごくよくいわれるんですけど、薄利多売なのでそんなことはありませんね。
原材料費にお金がかかるんでしょうか?
中矢さん:割とかかっています。今って、いろいろなものが値上がりしているので余計にお金がかかっている状況です。
ですが、うちの要としているいりこと昆布だけは変えられないので、値段が上がろうが下がろうが買わせてもらっています。
お忙しい中ありがとうございます
インタビューを終えて
ことりの三代目・中矢さんは全身から明るいオーラが漂うステキな女性でした。お客さんに接する中矢さんを見ると、仕事を楽しみつつ目の前のお客さんに喜んでもらおうとしていることがよく伝わります。
昭和24年創業のお店を受け継ぎ、日々営業していくプレッシャーは相当なものだと想像します。プレッシャーはなくならないかも知れませんが、「共存していく」という力強いメッセージがとても印象的でした。
今後はインバウンドが伸びることも予想されており、愛媛を代表するうどん屋としてことりが担う役割は大きいものです。時代の変化に関係なく、ことりは末永く愛され続けることでしょう。
愛媛に旅行で来るときは、ぜひことりの絶品うどんといなり寿司を楽しんでくださいね。