空のコーヒーカップに温かいコーヒーが注がれる瞬間を見ながら、カップの底を打つ音に耳を傾け、香りを味わう…。
「Coffee SCARECROW(コーヒー・スケアクロウ)」では、はじめに空のコーヒーカップがテーブルに届けられる。その後、マスターの髙柳さんが目の前で出来立てのコーヒーをトポトポと注いでくれるのだ。
さらにユニークなのは、食べ物のメニューに世にも珍しい“焼きうどん”があること。それも種類が豊富で「梅」や「バジル」などが展開されており、訪れたお客さんを驚かせている。
後編では独特のコーヒーの提供方法や、中田の町ではなかなか見かけない焼きうどんの誕生秘話ついてお話をお伺いした。
独特のコーヒー提供方法

——非常に気になったのが、このお店ではまず空のコップを置いて、マスターが目の前でコーヒーを注いでくれますよね。これは何かお考えがあってやられているのですか?
「学生時代に働いていたアルバイト先の喫茶店が、そういう風にやっていただけなんですよ」
——そうなんですね!でもすごい珍しいなって思いました。
「今はペーパーで淹れるコーヒーが主流だから、すでに注がれたものをお出しするだけだけど、サイフォンコーヒーはポコポコやってるところから売りになってくるんですよね。ビジュアルもおもしろいですし、あったかいカップでお飲みくださいっていう意味合いも込めて、目の前で淹れたてのコーヒーを注いでいます」

多くのお店では、すでに注がれたコーヒーが出てくるのが一般的だが、コーヒーを飲み終わるまでの瞬間を、まるで絵巻のように五感で楽しめるのがスケアクロウの特徴なのだろう。
サイフォン式のコーヒーは、たしかに見応えがあるし何度見ても楽しい。
ユニークすぎる「焼きうどん」たち

——コーヒーも最高ですが、焼きうどんもユニークで美味しいですよね。私の妻がナポリタンを食べたのですが、焼きうどんはどのようにして誕生したのですか?
「私が教師を辞めて喫茶店を始めようって言った時に、何か示し合わせたかのように周りから『喫茶店って言ったらナポリタンだよね』って単純に言われたもんで、最初はナポリタンを作ろうと思ったんです」
「ただ、うちにはガスコンロの口が3つしかありません。スパゲティのためにいつもお湯を沸かしてるってことができなかったので『ダメだ』と思った時に、たまたま冷凍の讃岐うどんでナポリタンを作ってみたんです」
「冷凍だったらすぐにできるから、電子レンジがあればいいですし。そうしたらカミさんが美味しいって言ったんですよ。それで焼きうどんを提供することになりました。ただ、他の味に関してもカミさんのオッケーが出たものしか出していません」

——厳しい奥さまの審査があるのですね。焼きうどんだと醤油ベースが主流かと思うのですが、ここには本当にたくさんの種類がありますよね。
「はい。最初はナポリタンとホットサンドだけだったんですけど、徐々に味の種類を増やしていきました。苦肉の策だったのですが、逆におうどんでいろんな味を楽しむことって皆さんあんまりなかったみたいで、来たお客さまは喜んでくれます」
喫茶店といえばナポリタン!というイメージは私にもある。しかし、それを焼きうどんで表現し、さらには青じそや梅、バジルなどのさまざまな味に展開するのは驚きだった。
多様な焼きうどんの味を楽しめるのは、横浜中を探し回ってもおそらく「Coffee SCARECROW(コーヒー・スケアクロウ)」しかないだろう。そんな斬新かつ美味しい料理に出会えるとあって、連日多くのお客さんが来店するのも頷ける。
また、焼きうどんと同様に味の種類が豊富なホットサンドや、奥さまお手製のスイーツも必ず食べておきたい一品。何度か足を運ぶ機会があれば、順番に味わっていくのも楽しみの一つだ。
横浜市泉区の中田という町でお店をやる理由

——私が来た時もすでにお店にはお客さんが多くいましたが、やはり地元のお客さんが多いのでしょうか?
「そうですね。地元のお客さまも多いのですが、Googleで見たって言って車で来てくれたり電車を乗り継いで来てくれたりとかはあります。あと、地元じゃなくても喫茶店巡りが好きだって方も来てくれますよ」
——地域とのつながりも深そうですが、お二人はこの町がお好きですか?
「はい。我々はよく散歩をするんですけど、山あり谷ありの多い横浜市でいうと、中田はフラットなところが多いからいいんですよね。あと、どこへ買い物に行くにしても、ここだと中田駅も立場駅も12、3分で行けるので便利です」
「中田に暮らしてる人は、割と地元の人もいるんだけど、この辺の住宅街っていうのは新しく引っ越してきた人も多いんです。そういう意味合いにおいては、個人的な意見ですがしっかりした人が多いっていうか、しっかりとした考えの持ち主の方が多いからいいなと思います」
「コーヒー・スケアクロウ」の今後

——この先、お店を運営していくなかで、展望とか夢とかってありますか?
「我々は60半ばなんで、もう長くはできないと。ただ、開店当時から来てくれているお客さまのお子さんが、今度4月に小学生になるとかで。そういう子たちが10年ぐらい経って中学のおしまいとか高校生ぐらいになると、もしかしたらコーヒーを飲むかもしれないから、その辺までお店を続けられたらいいのかなって思っています」
お客さんのなかには小さなお子さんもいるのだそう。その子たちが成長してコーヒーが飲めるようになったら、このお店に来てほしいと語る髙柳さんご夫婦。ほっこりとする回答に、ついつい笑みが溢れてしまう。

「Coffee SCARECROW(コーヒー・スケアクロウ)」は、今日も温かな陽光に照らされながら、優しいカカシと一緒にお客さまを待っている。
ほのぼのとした髙柳さんご夫婦の愛情に包まれながら、ぜひ心に染み入る豊かなひとときを過ごしてほしい。

「Coffee SCARECROW(コーヒー・スケアクロウ)」
〒245-0015
神奈川県横浜市泉区中田西2-28-63
電話番号:045-801-6740