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フード  |    2026.04.27

骨のない鱧を調理「鱧割烹いきがい」とは?世界唯一の技術と実食レポ|松山【前編】

「鱧は骨切りする魚」そう思っている方がほとんどではないでしょうか。

しかし、その常識を覆す料理人がいます。

愛媛県松山市にある「鱧割烹いきがい」は、400年以上続く常識を覆した技術で、注目を集めています。

本来、鱧は細かく骨を断つ「骨切り」という技術で食べるのが一般的とされてきました。

しかし同店では、その前提が存在しません。骨を“切る”のではなく、“取り除く”

これまで誰も成し得なかった調理法によって、「骨のない鱧」を提供しているのです。本記事では、愛媛・松山に誕生した唯一無二の鱧専門店「鱧割烹いきがい」の魅力を、前編として紹介します。

鱧割烹いきがいとは

世界初の技術「鱧の7枚おろし」

「鱧割烹いきがい」は、2025年7月に愛媛県松山市で開業しました。同店の特徴は、単なる割烹料理店ではないという点にあります。

「鱧」という一つの食材に特化し、その可能性を極限まで引き出している専門店です。

愛媛県は、実は全国でも有数の鱧の産地です。その一方で「骨が多く扱いが難しい魚」として、地元でも広く親しまれてきたとはいえませんでした。

今では、同店の味を求めて全国から多くの人が訪れます。一般のお客様だけでなく、料理人や水産関係者も多いのは、ここでしか体験できない料理があるからです。

鱧といえば京都というイメージが強い中、その価値を再定義し、地域の食文化として昇華させているのが、この「鱧割烹いきがい」です。

鱧割烹いきがいの店主

向上心と情熱の塊

鱧割烹いきがいの店主は塩沢研さんで、広島県出身の料理人です。全国を渡り歩く中で、愛媛の食材の豊かさに魅了され、松山に拠点を移しました。

もともと四国に縁があったわけではありません。それでも店主は、「この土地の食材を最大限に活かしたい」という想いから、愛媛に根をおろします。

そして出会ったのが、「鱧」という食材でした。複雑に入り組んだ骨を持つ鱧は、料理人にとっても扱いが難しい魚です。

1匹の中に3,000本の骨があるとも言われています。それでも店主は、この魚と真正面から向き合うことを選びました。

鱧は「骨切り」が常識

生き様を通して、仕事や人生で大切なことに気付かされます

鱧は骨が非常に多い魚です。全体で約3,000本の骨があります。そのため一般的な調理では、骨を取り除くのではなく「骨切り」を行います。細かく包丁を入れ、骨ごと食べられる状態にする技術です。

笑顔がステキです

ただしこの方法では、身も同時に細かく刻まれてしまいます。その結果、刺身として提供することはできません。

骨がないことで、料理の幅は大きく広がります。刺身だけでなく、編み込みや皮料理など、これまでにない表現が可能に。従来の鱧料理では難しかった調理も実現できます。

骨は乾燥させて出汁に使います

店主は、「骨がないだけで料理の可能性は無限に広がる」と語ります。骨そのものを取り除くことで、鱧本来の旨みを損なうことなく味わえる状態を実現しています。

さらに、愛媛のブランド鱧「下灘の夕凪鱧」を使用するなど、店主は食材へのこだわりも徹底しているのが特徴です。

骨を「切らずに取る」唯一無二の技術

他の料理人とは違う考え、行動をしたからこそ達成した偉業

同店では、骨切りを行いません。代わりに行うのは、すべての骨を包丁のみで捌き取るという技術です。

骨の構造を理解している店主は、身と骨の境界を見極めながら丁寧に分離していきます。

カウンター席

工程は10以上で、すべて手作業で行われます。この技術により、鱧の身をそのままの状態で残すことが可能になります。

骨を完全に取り除くことで、鱧を刺身として提供できるようになります。これは従来の調理法では不可能とされてきたものです。

熟練の技術

しかし店主の技術によって、身の食感や旨みをそのまま味わえる料理が成立します。

同店には、魚の扱い方にも大きなこだわりがあります。一般的には鮮度を保つために冷やしますが、ここでは魚の体温を変えません。目安は10〜12度で、水揚げ時の温度を維持します。冷やしすぎると細胞が死んでしまうためです。

店主はこう語ります。「食べた魚が胃に届き、胃酸を浴びたその瞬間を、細胞の死処にしたい」

目指しているのは、“生きている状態”をできる限り保つこと。その結果、口に入れた瞬間に“生きている感覚”が伝わります。

実食レポ|感動の体験

歴史上「できない」とされてきた鱧料理3点

今回の取材では、「鱧では不可能」と言われてきた料理を3品作っていただきました。オンリーワンの料理の数々に感動しました。

鱧皮の酢の物|概念が変わる“皮の主役化”

鱧皮のよさが最大限引き出されています

口に入れた瞬間に、驚くほどの弾力としなやかさを感じます。単なる酢の物の枠を超えた完成度が印象的です。特筆すべきは臭みのなさで、この料理では一切感じられませんでした。

酢の酸味も前に出すぎず、あくまで鱧そのものの旨みを引き立てる設計。シンプルながら、考え尽くされた一皿です。

活鱧の刺身|“食感”ではなく“体が反応する旨さ”

体中に「気」が満ちていくのを感じました

鱧は骨が多く、刺身で食べることは不可能とされてきました。その前提を覆すのがこの一皿です。特に印象的なのは、透明感のある旨みです。

まるで生きているような弾力で、味覚を超えた体験として衝撃を受けました。
理由として、温度管理や熟練の技術により、細胞の状態を極限まで保っていることがあげられます。熟成魚の旨さとは異なり、鮮度由来のダイレクトな美味しさを味わえます。

刺身として成立していること自体が革新的でありながら、完成度も極めて高い一皿です。

鱧の三つ編み椀|技術と美の融合が生む新しい和食体験

上品な出汁との相性が最高

まず目を引くのが、鱧を三つ編みにした独創的なビジュアルで、提供された瞬間の驚きが印象に残ります。

一方で、味は極めて繊細です。出汁との調和が計算されており、見た目に反してやさしい味わいです。三つ編みにすることで、食感に微妙な変化が生まれ、ひと口ごとに異なるニュアンスが楽しめる構造になっています。

不可能とされてきた鱧の処理を可能にする技術があって、初めて成立する料理の1つです。

なぜ“骨のない鱧”は生まれたのか

料理業界の新たな歴史を作っていく

この技術が生まれた背景には、料理人としての強い信念があります。

「料理人であれば、魚の骨は残さず取り除くべきだ」その考えのもと、店主は研究を続けました。

結果としてたどり着いたのが、「七枚おろし」という独自の技法です。これは、骨切りでも骨抜きでもない、全く新しいアプローチです。

清潔感あふれる店内

「特別な道具は使わない」この言葉も、この技術の本質を表しています。

必要なのは、鋭い包丁と、指先の感覚。骨を感じ取りながら、流れるように包丁を動かすことで、骨だけを削ぎ落とし、身を傷つけないように仕上げていきます。そのスピードと精度は、まさに職人技。

肩の力が入りすぎると、骨を切ってしまう可能性があるという繊細な仕事。約9年という歳月をかけ、15,000匹の鱧と向き合いながら磨き続けてきたこの技術は、まさに職人の執念といえるでしょう。

前編まとめ|“常識を疑う料理人”が生み出した価値

コースのほか、単品でも注文できます

鱧は「骨切りして食べる魚」その常識を疑い続けた先に生まれたのが、「骨のない鱧」という新たな価値です。

愛媛という土地、鱧という食材、そして一人の料理人の執念。それらが重なり合い、ここにしかない食体験が生まれています。

しかし本当に注目すべきなのは、この技術を生み出した背景です。なぜ骨を取るという発想に至り、なぜここまで極められたのか。そこには、料理を単なる仕事と捉えない独自の考え方があります。

料理人としての長年のキャリアがあるからこそ活かされる技術

後編では、店主の生き方や哲学にフォーカス。料理を通じて人間を高めるという考え方、その本質に迫ります。

後編はこちら

鱧割烹いきがい・店主の哲学「料理を通じて人間性を高める」|松山【後編】

店名鱧割烹 いきがい
住所〒790-0002
愛媛県松山市二番町1丁目9-21魚政ビル1階
アクセス伊予鉄「勝山町駅」から徒歩約6分
営業時間18:00〜23:00
定休日・日曜
・祝日
・第1、第3月曜
(不定休あり)
電話なし
予約・問合せ公式LINE
料金目安・新鱧百珍コース:15,000円(税抜)
・単品:2,000円
SNSInstagram
駐車場なし
※近隣コインパーキング利用

※掲載情報は2026年3月執筆時点のものです

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この記事を書いた人

世界のわたなべけん

地域に眠る人・場所・想いを取材し、 文章✕映像✕出版✕AIで編集、 世界に向けて発信しています。 神社仏閣、地域活動、仕事など、 現場に足を運び、空気感を伝えることを大切にしています。 地域の価値を最大化し、世界に届けるのがテーマです。

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