地域に根差したスポーツチームの価値は、勝敗だけでは測れない時代になっています。
愛媛県を拠点に活動する独立リーグ球団、愛媛マンダリンパイレーツは、野球を軸にしながらも、地域との継続的な接点づくりを大切にしてきました。
後編では、経営企画本部長の栁井利充さん(以下、栁井さん)への取材を通じて地域活動への想いを伺い、PR担当の村尾洋祐さん(以下、村尾さん)の視点から情報発信の考え方も紹介しながら、県民球団としての現在地と未来をひも解いていきます。
地域との接点が、球団の原点をつくる

愛媛マンダリンパイレーツでは2025年9月より、小学生を対象とした「こどものみらいプロジェクト」をスタートさせました。本プロジェクトは、「遊ぶ・食べる・掃除する・働く・語る」という五つのカテゴリーを軸に、子どもたちと自然な形で交流する地域活動です。
学校訪問では、体育の授業で一緒に体を動かし、給食を共にし、昼休みには思いきり遊び、最後は掃除まで一緒に行います。
栁井さんは「私たちは、こちらから何かをしてあげる立場ではありません。地域の皆さんと接点を持ち、コミュニケーションを取ること自体に価値があると考えています」と話します。こうした活動を通じて、選手やスタッフにも前向きな変化が生まれています。
子どもたちと触れ合うことで選手のモチベーションが高まります。子どもたちにとっては、野球選手との出会いが特別な体験となります。活動後に届く「楽しかった」「ボール投げができるようになった」「試合を見に行きたい」といった手紙は、球団にとって大きな励みになっているそうです。
「野球の前に、知ってもらう」県民球団の考え方

愛媛マンダリンパイレーツは、自らを「県民球団」と位置づけています。その背景には、野球を観てもらう以前に、球団の存在や考え方を知ってもらうことが重要だという想いがあります。近年はプロ野球ドラフトで指名される選手も輩出しており、人材育成という目的でも着実に成果を上げています。
一方で、応援は自然に生まれるものではありません。「知らない選手の試合を、いきなり見に行くのは簡単ではありません。だからこそ、地域活動を通じて関係性をつくり続けることが大切です」と栁井さんは語ります。
PRがつなぐ活動と共感

こうした地域活動の価値を、どのように伝えていくのでしょうか。
栁井さんは、情報発信において「早く、分かりやすく伝えること」を基本にしながらも、発信方法そのものを常に見直しています。
「SNSや公式サイトで発信するだけでは、十分に届かない現状があります。実際に地域へ出向き、直接お会いした方に伝えることも大切にしています」と話します。
限られたリソースの中でも、受け手の目線に立ち、どうすれば球団の想いを伝えられるのかを意識しているといいます。
今後は、チアダンスや吹奏楽部、地域団体によるパフォーマンスなど、試合を地域の“発表の場”として活用する取り組みも強化していく予定です。球場を、野球ファンだけでなく、地域の人々が集う場所にしていくことを目指しています。
選手も子どもたちから“元気”をもらっている

地域活動は、子どもたちのためだけのものではありません。村尾さんは、選手たちの変化についてこう語ります。
「正直、雨の日や練習の翌朝早いイベントは大変だと思います。でも、子どもたちと触れ合うと本当に元気をもらっているんです」
最初は「しんどいな」と感じている選手もいるといいます。しかし、実際に子どもたちと交流が始まると表情が変わるそうです。
「子どもたちが泣いたり嫌がったりすることはほとんどありません。終わった後には選手からも『やってよかった』という前向きな言葉が出てきます」
地域活動は一方通行ではなく、選手自身のモチベーションにもつながっています。愛媛マンダリンパイレーツの地域活動は、子どもと選手の双方にとって意味のある時間になっています。
「広報のサポート」という立場から

「私は広報のサポートという立場です。プレスリリースを作成してメディアに配信したり、直接お声がけする部分を代行したりしているイメージです」と村尾さんは話します。
球団のリソースが限られる中で、情報発信の質を高めるサポートを行っているそうです。特に意識しているのは「メディアとの連携」です。
「マンダリンパイレーツの方針として、地元メディアと連携して、一緒に愛媛県を盛り上げたいという思いがあります。自分たちだけでは限界があるので、第三者の視点から活動や試合結果を報じてもらいたいと考えています」
愛媛から全国へ。広がる可能性

愛媛マンダリンパイレーツの取り組みは、地域にとどまりません。村尾さんは今後の展望についてこう話します。
「愛媛マンダリンパイレーツをきっかけに、県外の方にも愛媛に興味を持ってもらえたら嬉しいです」
目指しているのは、単なる知名度向上ではありません。「子どもたちが『愛媛ってすごいよ』と誇れるような存在でありたい」
インターネットを通じて情報が全国へ届く時代だからこそ、地方発の挑戦には可能性があります。愛媛マンダリンパイレーツは、野球を軸にしながら、愛媛の魅力そのものを全国へ発信しようとしています。
まとめ

栁井さん、村尾さんお二人に共通していたのは、終始変わらぬ丁寧さと誠実さでした。質問一つひとつに真摯に向き合い、言葉を選びながら伝えようとする姿勢からは、マンダリンパイレーツという球団が大切にしている価値観そのものがにじみ出ていました。
「地域とともに歩む」「子どもたちの夢を支える」「メディアと連携して、一緒に愛媛を盛り上げる」それらは単なる理念ではなく、日々の積み重ねの中で実践されているものです。華やかなプレーの裏側には、こうした地道で温かな取り組みがあります。
愛媛から全国へ。その挑戦は、丁寧に、そして着実に続いています。マンダリンパイレーツの歩みは、これからも地域の未来とともに広がっていくでしょう。




