松山市・大街道商店街で開催された「えひめ愛ある食の市」。
柑橘やブランド魚が注目を集める中、愛媛県が誇るもう一つの“日本一”をご存じでしょうか。それが、39年連続で生産量日本一を誇る「はだか麦」です。白米の約20倍ともいわれる食物繊維を含み、健康志向の高まりとともに注目を集めています。
今回は、出店4回目となる「愛媛大学大学院農学研究科付属ハダカムギ開発研究センター長」の荒木卓哉さん(以下、荒木さん)と、「愛媛大学客員教授」の垣原登志子さん(以下、垣原さん)にインタビューしました。その模様を紹介します。はだか麦の魅力と課題、そして未来をひも解きます。
ハダカムギ開発研究センターとは

ハダカムギ開発研究センターは、愛媛大学大学院農学研究科に設置された研究拠点で、愛媛県が全国一の生産量を誇るはだか麦の研究・普及を目的に設立されました。
生産技術の向上だけでなく、機能性成分の解明や加工特性の研究などを一体的に行っています。大学と地元企業、農家が連携し、はだか麦の高付加価値化と安定供給体制の確立を目指す実践的な研究機関です。愛媛発の地域ブランド強化を担う中核拠点として注目されています。
食物繊維は白ごはんの約20倍

はだか麦の最大の強みは栄養価です。
「食物繊維が非常に豊富です。白ごはんと比べると約20倍含まれています」
現代人に不足しがちな食物繊維を、日常の食事で補える点が大きな魅力です。
「ごはんに3割ほど混ぜて炊くだけで、十分な効果が期待できます」炊飯器でそのまま炊けるため、特別な調理は不要です。
さらに、軽く火を通したはだか麦をサラダに混ぜると、食感のアクセントになります。スープやハンバーグのつなぎとしても活用でき、自然に食物繊維を摂取できます。

「手軽に、毎日の食事に取り入れてほしい」無理なく続けられることこそ、はだか麦の大きな強みです。
「健康志向の高まりもあり、関心は確実に高まっています」実際、イベント会場でも「いつも使っている」という声や「初めて知った」という来場者が増えているそうです。
加工・流通の壁と向き合う現場の声

荒木さんは、はだか麦の普及にはまだ課題も多いと語ります。
「小麦粉のように“中力粉”“薄力粉”といった明確な基準が、はだか麦にはまだ十分に整っていないんです」消費量が少ないため、加工特性のデータや品質基準の蓄積が進んでいないのが現状だといいます。

さらに、生産面でも「ジメジメした環境に弱く、天候の影響を大きく受ける」と説明しています。安定供給が難しいため、流通拡大の壁にもなっています。

「生産の安定と、商品としてのバリエーション。その両方を同時に進めていく必要があります」消費量が少ないため、加工技術や活用法の研究がまだ発展途上です。研究部会では企業と連携し、商品開発を進めています。
愛媛の“日本一”を持続可能な産業にするための挑戦は、今まさに続いています。
はだか麦バー開発も進行中

えひめ愛ある食の市では、「株式会社母恵夢本舗」との共同開発による「はだか麦バー」も先行販売されていました。
「1本でバナナ約4本分の食物繊維が摂れる設計です」忙しいビジネスパーソンや高齢者の補食としても期待されています。
「生産の安定と商品バリエーションの充実。その両方が大切です」と荒木さんは言います。温暖化や天候不順の影響を受けやすいはだか麦は、生産の安定化も今後の大きなテーマです。
はだか麦の可能性 ― 加工次第で広がる未来

垣原さんは、はだか麦の可能性について「やり方次第でパンにも、お菓子にもなります」と語ります。粉に挽いたはだか麦は、イーストや甘酒を活用することでパンづくりも可能です。酵素を使わず工夫することでコストを抑えながら商品化もできます。

さらに、スープやハンバーグのつなぎ、サラダのトッピングなど用途は多彩です。「食物繊維が豊富で、野菜のような感覚で取り入れられる」と話します。主食にも副菜にもなれる柔軟性こそ、はだか麦の大きな可能性といえます。
はだか麦は、特別な食材ではなく、日常を少し豊かにする選択肢なのかもしれません。
国産で高栄養、それでも手頃な価格

はだか麦の魅力は、栄養価だけではありません。垣原さんは「オートミールと同等の栄養価で、食物繊維はむしろ多い」と説明します。しかも価格は1キロ500円前後と手頃です。
「農家さんから直接仕入れているからこそ、この価格が実現できています」さらに、はだか麦はすべて国産。輸入に頼るオートミールと比べ、安心感もあります。高栄養で国産、それでいてコストパフォーマンスに優れる――それがはだか麦の大きな強みです。
子どもたち・若い世代への普及の取り組み

はだか麦の未来について、荒木さんは「若い世代にどう伝えていくかがとても大切です」と語ります。
愛媛県内では学校給食で月に一度、郷土食材としてはだか麦を使ったパンなどが提供されています。さらに、親子向けの体験教室やイベントを通じて、実際に手に取り、調理し、味わう機会も設けられています。

「食べ方を知らないことが一番の課題」と荒木さん。体験を通して“身近な食材”として定着させることが、次世代への普及の鍵だといいます。日常の食卓に自然に入り込む仕組みづくりが、今後の重要なテーマです。
日本一の誇りを、日常の一杯へ

生産の安定を目指す研究の現場と、暮らしに寄り添う販売の現場。荒木さんと垣原さん、それぞれの立場から見えてきたのは、はだか麦が「可能性を秘めた穀物」であるという事実です。
39年連続日本一という実績は、単なる数字ではありません。それは、愛媛の風土と人の営みが積み重ねてきた証です。
基本情報
- 愛媛大学大学院農学研究科
附属ハダカムギ開発研究センター - 〒790-8566
松山市樽味3丁目5番7号 - TEL:089-946-9526
- FAX:089-946-9526
- E-mail:hbarley@agr.ehime-u.ac.jp




