愛媛県松山市に属する興居島で、地域おこし協力隊や個人事業主として活躍する髙橋伸一さん(以下、SINITI先生)。
前編では、SINITI先生の歩みや、SINITI先生の運営するキッズスクールへの取材の模様などを解説しました。
後編では、SINITI先生へインタビューさせてもらった模様を紹介します。
今の教育の現状は?

「学校ってめちゃくちゃで、機能してないんです。子どもたちは学校に行ってちゃんとつくえ席に座り授業を聞いて楽しく帰ってくると思うじゃないですか。
子ども同士はSNSでつながっているので、学校にいるときの顔って別の顔なんですよ。
学校でおとなしい子が、実はグループのリーダーのケースもあり、2つの世界を生きてるんですね。

見えない部分がめちゃくちゃあるので、公園に行ったり、校庭で遊んでる子どもたちに近寄って本音を聞き出したりしました。
今の問題はリアルないじめじゃなく、SNS上でのいじめなんですね。例えば不登校の子もスマホを持っており、ほぼ一日中見ています。動画やSNSのほか、出会い系アプリをやっている子もいます。
一見、子どもたちは大人しそうに見えるかも知れませんが、ほど遠いほど闇深い世界が広がっているんです」
ポケットスクールを始めたきっかけは?

「ポケットの中にスマホが入るので、ポケットを通して子どもたちとつながり、本当にいい部分を見つけてあげられる学校を作ろうと思ったのがきっかけです。
ある日突然、私がハローって出てきて『元気出しなよ、君は間違ってないよ』と伝えられればと。
ゆくゆくは菊池省三先生や井本陽久先生など、世の中のすごい人たちとつながり、子どもたちの自己肯定感をあげられるプラットフォームを作ります。『なぜかわからないけど、ポケットスクールにアクセスすると、子どもたちがどんどんよくなっていくらしいよ』となるのを目標にしています」
宿題のプリント廃止や掃除当番自由化などは前例がありましたか?

「いいえ。指導要領を熟読した結果、教師に任されていることがわかったので。
例えば、『◯分間掃除をさせなさい』とはどこにも書いてなかったので、子どもたちが主体的に動くには自分の部屋だと思ってもらわないと駄目だと。自分の部屋は掃除するけど、人の部屋は掃除しないじゃないですか。
『ここだけは汚されたくない、いつも整頓されていたり清潔であったりしてほしいという場所に行ったらどう?』と言ったんです。
その場所が学校にできた結果、子どもたちは熱心にやってたということですね。クラスからは当番っていう言葉が消えました」
独自の教育を始めたきっかけは?

「13年勤めた川崎市の教員を一回辞めたあと、非常勤講師として再スタートしたのがきっかけです。非常勤講師は会議や打ち合わせに出ないし、学年がやってることも教えてもらえないんですよ。
何にも縛られない分、このクラスをなんとかしなきゃいけないと。私は療養休暇の教師の代わりとして、10月にクラスを受け持ち、1ヶ月間担任としてクラスを立て直すように言われました。
10月に療養休暇が発生するということは、クラスがめちゃくちゃで危険な状態なんですよ。初めて教室に入り挨拶するとき、生徒は後ろを向いて聞いていました。
『どうして後ろ向いてるの?』って聞くと、『どうせ教師って俺らのことをバカにしてるんだろう』と返ってきました。そこで『私はあなたが大好き。こうやって心を開いてくれたんだから』と徹底対話したんですよ。

例えば、決して自分を駄目と思わないとか、成長しようと思ってる友達のしていることを否定しないなど。
結果、1ヶ月だったんですけど、めちゃくちゃいいクラスになったんですよ。最後、みんなでワーワー泣きました。最初に反抗的な態度を取っていた男子も、弟子みたいにくっついて歩いてましたね。
言葉が上手じゃないだけで、荒れている子ほど可愛い。嫌いとかむかつくっていうのは叫びだと私は捉えているので、『嫌い』って言われたら、俺が必要なんだなって思って。近寄った方が、子どもたちは素直になるんだと学びましたね」
SINITI先生の指導方法は少数派では?

「そうです。でもそれが『自分を苦しめていませんか?自分で自分の首を絞めていませんか?』っていうことが言いたいですね。それで楽しくやってる先生はいいんですよ。
子どもってどんどん変わっていくんで、今学級のことで悩んでいる先生たちには、『子どもを信じると自分も子どもも楽になる』と言いたいです。
先生はお利口さんとして育っているケースが多いので、人から怒られる、指摘される、叱られることに恐怖を感じる傾向にあります。
これをやったら叱られるんじゃないか、怒られるんじゃないかと思うと、一歩進めなくなるんで、他の先生がやってることをやりたがる可能性が高い。それが宿題だったり、子どもを叱責することだったり、怒鳴りつけることだったりっていう方向に。
それで家庭がうまくいかなかったり、あるいはクラスの子が悲鳴をあげてたりするのでは、本末転倒じゃないですか。そのために、私がサポートさせてもらいたいと思っています」
ポケットスクールの在り方に変化が?

「言い訳なしで、『自分がしたいのはオンライン授業なのかな?』って改めて考えたんですよ。
新しい教育の形を作るという、大きな目標を持っていることに気づきました。それは先生たちの働き方の環境を変えたり、学校の問題点を浮き彫りにすることで先生が働きやすくなったりするお手伝いをすること。
いろいろな思いをしたり、いろいろな動きをしたりしている人の扇の要になる。それがポケットスクールの役割で私のやりたいことだなと」
長年の習慣は?

「早起きですね。5時起きを何十年も続けており、ゆっくり昼に起きたことはないです。
教師時代、絶対6時半、7時には学校にいたかったので、朝起きて散歩してました。思考を整えるために。
島を渡ってきてからも5時に起き、最初の年はギターを担いで砂浜に行っていました」
編集後記

ここまで、SINITI先生へのインタビューの模様を紹介してきました。
SINITI先生を知ったきっかけは、えひめ夢プロジェクトが主催するロケット教室です。SINITI先生はひときわ優しく、柔らかな雰囲気を醸し出しており、子どもたちと笑顔で接していたのが印象的でした。
インタビューを通して、優しい雰囲気とは裏腹に「新しい教育の形を作る」という熱い思いを持って活動していることがわかりました。
SINITI先生に関わる子どもたち、先生、親はよい影響を受けることが期待されます。
教育で悩んだとき、お気軽にSINITI先生へ問い合わせるとよいでしょう。