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教育  |    2026.01.12

「生きる力」を育む保育園の実践|田嶋先生が語る保育の本質とは

「子どもの主体性」を掲げる保育園は多いが、その言葉の本当の意味を現場で実践し、体現している保育者はどれほどいるのだろう。

今回お話を伺ったのは、にじのいろ保育園運営本部で本部長を務める田嶋先生。保育士として現場で経験を積み、その後四つの保育園を開設してきた彼女の言葉には、一般的な保育観とは一線を画す、深い洞察と覚悟が込められていた。

「子どもが中心」という近年の保育観に対して、「人はみんな真ん中でしょ」と語る田嶋先生の考えは、保育の本質を問いかけてくる。

生きる力を育む保育園を開設しようとしたきっかけ

「生きる力を掲げた保育園を開設しようと思ったのは、会社を作る頃からです」と田嶋先生は語る。2016年7月27日に会社を設立し、翌年4月の開園に向けて準備を進めていた当時から、この理念は一貫していた。

その背景には、保育園をつぎつぎと開設する会社での経験もあった。「そんなに保育園を作って大丈夫なのと思ってた」と苦笑する田嶋先生は、以前務めていた保育園で同僚を亡くしている。

「その同僚はすごく体調が悪いって言ってたんだけど、なかなか病院に行けなくて。そのまま時間が過ぎて、気付いたら…」

仕事の重圧により亡くなった同僚への思いもあり「もっと楽しく働きやすい会社を作ろう」と決意し、自らの手で理想の保育園を作ることを決めた。

「園での仕事時間が、生活の大部分でしょ。そこで気持ちよく仕事ができないと人生楽しくないじゃない」。子どもだけでなく、職員一人ひとりの気持ちを尊重し、楽しく働ける環境を整えることが、結果的に子どもたちの生きる力を育むことにつながるという信念がある。

「みんなが生きやすく、願いがかなうような園にしたい」。その思いが、生きる力をモットーとする保育の原点となった。

子どもの主体性についての考え方

「主体性を大切に」という言葉を聞くと、田嶋先生の表情は真剣になる。「子ども中心の保育をしているとか言っている人がいたら、私はその考えとはちょっと違います」

その理由を尋ねると、明確な答えが返ってきた。「人はみんな真ん中でしょ。私と同じように働いている人もそうです」。子どもだけを中心にするのではなく、すべての人が等しく尊重されるべきだという考え方だ。

主体性という考え方が間違って解釈されると、子どもの要求を何でも受け入れるわがままな育て方になりかねないと、田嶋先生は危惧する。「子どもの思いを尊重しすぎて、自由にやらせると、責任が伴わない。失敗してしまったら、ああ残念っていう経験を子ども自身がしなきゃいけない」。

主体性が社会で通用しない形で育ってしまえば、小学校、中学校、そして社会に出た時に困るのは子ども自身だ。「主体性は自由奔放や責任の回避ではなく、自ら考え行動し、社会に適応する力」と田嶋先生は考える。

保育園見学の際に「子どもの主体性を大事にします」と伝えると、「子どもを自由にさせているんだ」と誤解されることが多いという。「そうじゃなくて、活動の中で、子どもたちが自分で考えるという仕組みを大事にしているのであって、なんでもかんでも自由にやっているわけじゃない」。

伝え方の難しさを痛感しながらも、保育者や保護者に時間をかけて理解してもらえるように努力している。

保育で一番力をいれていること

田嶋先生が保育で一番力を入れているのは、「先生と子どもたちが共に考え、活動に取り組む」プロセスだ。

「いろんな活動の取り組みを先生と共に考えているところかな。指導ではなく、子どもたちと共に考える」。この姿勢は、子どもたちの経験を一方的に設計するのではなく、子どもたちと一緒に創り上げていくという意味を持つ。今回取材日に行っていた焼き芋も、子どもたちと一緒に考えて取り組んできた。

特に重視しているのが、つながりと成長の積み重ね。「例えば給食当番なんてそうだけど、去年これができたから今年はこれができるみたいな活動を重視している」。小さな成功体験の積み重ねが、子どもたちの自信となり、生きる力の基盤となっていく。

最終的な保育園のビジョン

画像左:田嶋夏枝先生 画像右:にじのいろ保育園星野園長先生

最後に保育園の最終的なビジョンについて尋ねると、田嶋先生の答えは意外なものだった。

「私にはこの保育園をどうしていきたいということはないです。この保育園がどうなっていくんだろうかというのしかないです」

明確な目標やゴールを設定するのではなく、園長先生や職員、子どもたち、そして地域の特性の中で、この保育園がどのように変化し成長していくかを見届けたいというのが、田嶋先生のビジョンだった。

この徹底した姿勢は、トップダウンで理想を押し付けるのではなく、現場の自主性と創造性を最大限に尊重するという考え方の表れだ。

保育園という場が、そこに関わるすべての人にとって意味のある場所となり、それぞれが生きる力を育んでいく。その過程を信じ、見守り、支えていくこと。それこそが、田嶋先生の描く保育園の未来なのかもしれない。

「生きる力」とは、与えられるものではなく、日々の経験と人とのつながりの中で、一人ひとりが自ら獲得していくものだ。田嶋先生の言葉と実践は、保育の本質を改めて問いかけてくる。

にじのいろ保育園に関する詳細は、公式サイトをご覧ください。

千葉市認可保育園「にじのいろ保育園」

住所:〒260-0843 千葉市中央区末広2-12-17
TEL:043-312-1187
公式サイト https://nijinoirohoikuen.jimdofree.com/

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この記事を書いた人

田畑 幸康

千葉県船橋市で2人の子育てに奮闘中の元保育士ライターです。 我が子の育児はまさに試行錯誤の毎日。「これでいいのかな?」と悩むことも少なくありません。 そんな私のリアルな経験談と保育士目線を交えながら、千葉県に特化した子育て情報を発信します。少しでも皆様のお力になれたら嬉しいです!

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