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フード  |    2025.11.27

105年の歴史が紡ぐ伊那谷からの贈り物――菓子庵 石川「ちいずくっきい」とアルプスファクトリー

菓子庵 石川 アルプスファクトリー

長野県伊那市にある、創業105年を迎えた老舗菓子店「菓子庵 石川」。この店が生み出した「ちいずくっきい」は、今や伊那谷の味として幅広い世代に愛され続けています。

2021年11月、その味をイートインで楽しめる場として「アルプスファクトリー」が誕生。地域の魅力を感じられる新しい拠点として注目を集めています。

4代目代表取締役の石川信頼(いしかわのぶより)さんに、伝統を守りながら革新を続ける菓子庵 石川のこれからと、生まれ故郷の伊那の魅力についてお話を伺いました。

時代を先読みした革新の味「ちいずくっきい」

菓子庵 石川 アルプスファクトリー、ちいずくっきい

「菓子庵 石川」の創業は1920年。信頼さんのひいおじいさんが、和菓子の卸事業を始めたのがその第一歩でした。

真心を込めたお菓子作りで、地元に欠かせない存在へと育っていった和菓子店に、大きな転機が訪れたのは二代目の時代。洋菓子の要素を取り入れはじめた1960年代に「ちいずくっきい」が誕生したそうです。

菓子庵 石川 アルプスファクトリー、きいずくっきい

――当時、洋菓子はまだ珍しかったのではないでしょうか?

当時、和菓子屋がクッキーを出すなんて珍しく「ちいずくっきい」は時代の先駆けでした。常連様に「外国のお菓子みたい!」と驚かれながら、どんどん人気が出て看板商品へと成長していきました。

「ちいずくっきい」は、ほろっと崩れる生地と、ほどよく塩味の効いたクリームのバランスが絶妙のクッキーです。シンプルで飽きのこない味だからこそ、60年以上愛され続けているのだと思います。

現在は、元祖「ちいずくっきい」と、食べやすいサイズの「ちいずぷっちい」の2種類があります。そのほか、駒ヶ根市で採れた黒ごまを使った新作「黒ごまぷっちい」や季節限定品など、地域の素材を活かしたお菓子を展開しています。

「アルプスファクトリー」誕生の背景

菓子庵 石川 アルプスファクトリー

2021年11月、菓子庵 石川の新しい拠点として「アルプスファクトリー」がオープンしました。南アルプスが見渡せる店舗にはイートインスペースを備え、ここでしか味わえないケーキやソフトクリームを提供しています。

――アルプスファクトリーをオープンしたきっかけは何だったのでしょう

創業100年という節目で、和菓子を持って世界を目指すべきか、さまざまな選択肢を考えた時期がありました。

でも、歴史を振り返った時に、その時代その時代に地域の方々に支えられてきたんだなと改めて実感したんです。そして、地域に根ざした企業でありたいと思うようになりました。

その決意を形にした場所が「アルプスファクトリー」です。

菓子庵 石川 アルプスファクトリー

――アルプスファクトリーへ訪れる方に一番オススメしたいポイントは何ですか?

イートイン席から見える山々、これがお客様からも一番好評なんです!

アルプスファクトリーの大きな窓から見えるのは、南アルプスと中央アルプスです。毎朝この景色を見て「あぁ、綺麗だな」と思いながら仕事に入るんです。山の上がちょっと白くなっていたり、紅葉が進んでいたり、季節の移り変わりを感じながら暮らせるのが本当に幸せだと感じています。

訪れた方々にも、四季折々に変化する山の表情を眺めて伊那谷を感じながら、ゆったりとスイーツを楽しんでいただきたいです。

風景とともに味わう絶品ソフトクリーム

菓子庵 石川 アルプスファクトリー、ソフトクリーム

イートインの一番人気は、信州産生乳を使用したソフトクリームと「ちいずくっきい」が同時に味わえる「ちいずくっきいソフト」です。

濃厚ミルクのソフトクリームだけでも幸せな気分になれるのに、さらに底に、老舗のロングセラー商品「ちいずくっきい」の生地が敷かれ、上には「ちいずくっきい」で使われている「チーズパウダー」をトッピング!

ミルクとチーズの何とも言えない絶妙なバランスが、じわじわ注目を集めているそう。

――イートインで人気の「追いチー」サービスとは?

密かに人気を集めているのが、私が考案した「追いチー」です。

ソフトクリームの上にかかっているチーズパウダーを、イートインではセルフで足せます。アルプスファクトリーならではのサービスで、これを楽しみにソフトクリームを召し上がる方もいます。

濃厚なミルク味のソフトクリームを食べながら「ちいずくっきい」の味わいも楽しめるんです。好きなだけ「追いチー」できるのはアルプスファクトリーだけとあって、地元の方にも観光客にも大好評です。

地域内外のお客様が集う心安らぐ場所へ

菓子庵 石川 アルプスファクトリー

アルプスファクトリーは、小黒川スマートインター出口からすぐという好立地に加え、広々とした駐車場があり気軽に立ち寄れます。そして何よりケーキやソフトクリームなど、ここにしかない限定メニューがあり、新しい客層を呼び込んでいます。

――アルプスファクトリーがオープンして新しい変化はありましたか?

本店は、土日だからといって特別お客様が増えるわけではなかったんです。でもアルプスファクトリーは観光のお客様にも分かりやすい立地のため、休日に訪れる地域外のお客様がかなり増えたと実感しています。

イートインでゆっくりスイーツを楽しめること、テラス席で犬と一緒に過ごせることも好評です。

――アルプスファクトリーが目指しているお店のあり方を教えてください。

アルプスファクトリーが、地元の方や伊那に訪れる方にとって心地よい居場所になれたらと考えています。

伊那には、自然に癒されるという要素があると思っています。アルプスファクトリーで山々の風景を見ながらスイーツを食べて「伊那っていいところだな」と感じてもらいたい。都会に戻った観光客や、故郷を離れた人には「ちいずくっきい」を通してこの風景を思い出してもらえたら幸せですね。

そして地元のお客様には、慣れ親しんだ味がいつもそばにあるという安心感を、これからも提供し続けたいです。

100年の恩を、未来へ贈る

菓子庵 石川 アルプスファクトリー、ちいずくっきい

2025年11月、菓子庵 石川は105周年を迎えました。老舗の和菓子屋を未来につなぐ者として、信頼さんの今後にかける決意を伺いました。

――訪れる人たちに、どんな魅力を感じてもらいたいですか?

私は、南アルプスと中央アルプスに囲まれた伊那谷が大好きです。この美しい伊那谷の魅力を一人でも多くの人に知ってもらいたいし、訪れてもらいたい。

そして、訪れた皆さんにも伊那谷を故郷のように感じてもらい、いつでも帰ってきていただきたいと思っています。

――アルプスファクトリーを通して発信していきたい想いを教えてください

100周年という大きな節目に、4代目として代表取締役を務めていることに強いご縁を感じ、新たに「伊那谷を贈る」というコンセプトを掲げました。

地域のお客様、スタッフ、生産者の方々……その時代その時代に支えてくれた人たちがいたから、今がある。100年以上、本当に多くの人に支えられて歴史を作ってきました。その感謝の気持ちを、地域に還元したい想いが強くあります。

「伊那谷を贈る」という言葉に世代を超えて恩を繋いでいくという想いを込め、これからもアルプスファクトリーから伊那谷の魅力を伝え続けていきます。

菓子庵 石川 アルプスファクトリー

住所:長野県伊那市荒井4565-1
TEL:0265-98-0153
営業時間:10:00〜18:00(1月から2月は ~17:30)
イートイン営業時間:10:00~17:00(1月から2月は ~16:30)
定休日:なし(お盆明け、正月明けに臨時休業の場合あり)
駐車場:15台

菓子庵 石川公式サイト https://kashian-ishikawa.com/
★「ちいずくっきい」は、長野県のアンテナショップ「銀座NAGANO」でもお求めいただけます。

map:小黒川SICより車ですぐ

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この記事を書いた人

まな

関東在住。フリーランス(Webマーケター、取材)。20年以上におよぶ会社員生活で得たさまざまな出会いが、人生の財産になっています。Mediallでは、旅先で出会う「オンリーワン・ナンバーワン」をお伝えしていきます。

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