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フード  |    2023.10.17

さまざまな土地での暮らしと今をつなぐジャム作り「61+(スワソンテアン)」|栃木県野木町【後編】

【前編】では、61+(スワソンテアン)主催の五十嵐洋子さんに「スープ活動」からジャム作りに至った経緯や、保存食に惹かれる理由についてお話を伺いました。【後編】では、材料となる果物へのこだわりやジャムに込める想いについてさらに深掘りしていきます。

生産者ごとに違う果物の味

元々東京に住んでいた森田さんは、野木町に移り住んで野菜や果物のおいしさに感動したと言います。

「農家さんごとに味が違うことを初めて知ったんです。ここに来て、トマトなら〇〇さん、きゅうりなら〇〇さん、という買い方をするようになりました」

生産者に詳しい森田さんの情報が、ジャムの材料を探すのにもとても役立ったそう。五十嵐さんの友人や森田さんの紹介で、低農薬や無農薬にこだわって果物を育てる生産者と出会いました。

低農薬で栽培するために土づくりからこだわったいちご(写真提供:五十嵐さん)

「消費者のみなさんはどんな材料を使っているかについて敏感だなと感じます。それに自分も野菜を作るので、農薬を使わないことの大変さも知っています。でもそういう畑は土もふかふかで虫もたくさんいて、環境がとてもいいんですよね」と、五十嵐さんは言います。

ジャム作りを始めて、自分たちの住む町で思った以上にたくさんの果物が作られていると知ることができたのも、2人にとっては驚きでした。

「春のいちごからジャム作りを始めて、2人で次はブルーベリーはどう?その次は梨、その次は……と作っているうちに1年が経っていたんです。野木町でこんなにいろんな種類の果物が栽培されていると初めて知りました」と森田さん。

現在61+では、イベント出店時限定のものも含めて11種類、年間400本のジャムを2人ですべて手作りしています。

瓶詰めも漏斗を使って1つ1つ手作業で行います

地元産の果物を使ったジャムは町ならではの魅力ある商品として「野木ブランド」に認定されており、ふるさと納税返礼品にも選ばれています。しかし、まだまだ地元での知名度は低いと五十嵐さんは言います。

和梨のジャムには「野木ブランド」の認定シールが貼られています

「委託販売をしてもらうお店を増やして、町内の方にももっと知ってほしいと思っています。そのためにも、ジャムの種類をもう少し増やしたいですね」と意欲的です。

イベント出店時のラインナップ。和梨、ブルーベリー、ぶどう、プラム、和梨とカルダモンのジャムが並びます

異国情緒漂う組み合わせが私らしさ

61+(スワソンテアン)という名前はフランス語ですが、五十嵐さんの名前に含まれる数字に今まで住んだ場所の数を足したものだそうで、野木町は11か所目の住まい。そんな五十嵐さんがふるさとのように感じている場所があります。それは子どもの頃に4年ほど過ごしたスイスです。特に食生活にはすごく影響を受けたと言います。

「山のレストランの煮込み料理。家で親と作った現地のスープ。どれもワインやスパイスなどの香りが豊かで、個性的な食事の数々を鮮明に思い出します」

今でもヨーロッパの食材に惹かれるのは、この頃の体験がベースにあると感じているそう。

海外での暮らしで培った感性は、ジャムに加えるスパイスやこだわりのラベルにも現れています。

プラムジャムにはプレーンのほかにシナモンとモヒートの3種類があります(写真提供:五十嵐さん)
ラベルのイラストはフランス在住のイラストレーターの友人によるもの。ジャムの種類を1枚1枚手書きするのも五十嵐さんのこだわり

さまざまな土地で暮らし、食文化だけでなくその場所ならではの暮らしの知恵や生き方を見てきた五十嵐さん。だからこそ、どこか異国情緒漂う雰囲気をジャムにもまとわせることが、自分にとっては自然だと言います。

「これからも野木町の良さや果物のおいしさをジャムを通して紹介していきたいです。同時に、スパイスなど地元にはあまりない組み合わせを作ることで自分のオリジナリティを大切にしていきたいと思います」

自身のルーツである各地のテイストを取り入れながら、地元の魅力を届けるジャム作り。お話を伺って、さまざまな土地での暮らしと今の暮らしが繋がっていくその様は、まだまだ無限の可能性を秘めていると感じました。

61+では、毎月1〜6日限定で、オンラインショップもオープンしています(都合により次回オープンは12月予定)。

また11月5日(日)には、栃木市の小松屋家具店で開催されるマルシェ『食と器と家具と』にも出店予定とのこと。61+以外にも、衣・食・住それぞれに心を込めた作家さんが多数出店するので、お近くの方はぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

61+(スワソンテアン)に関する情報

Instagram https://www.instagram.com/ykig_61/
オンラインショップ https://61jam.stores.jp/
ふるさと納税サイト 「ふるさとチョイス」 https://www.furusato-tax.jp/product/

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この記事を書いた人

那須あさみ

山口県出身、栃木県在住4児の母。日々、子どもたちに翻弄されながらもライターとして活動中。趣味は読書、映画鑑賞、ヨガ。お店も人も自然も、まだまだ知られていない地元の魅力をみなさんにお届けしたいと思います。

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