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フード  |    2024.01.28

130年の歴史が育む恵み|陸前高田の奇跡のりんご【前編】

岩手県の南東、三陸海岸沿いの広田湾に面する陸前高田。日本有数のホタテやカキ、ワカメなど海の幸の産地でもある一方、“東北地方の湘南”といわれるほど温暖な気候を活かしたりんごやゆずなど果物栽培も盛んな地域です。海を見下ろす高台にある国内最大級のキャンプ場は、山が近く自然に恵まれた人気スポットとなっています。

かつてこの街は東日本大震災で大きな被害を受けました。震災から12年が経過した現在は、街のインフラもほぼ整いつつあり、次の段階に向けた街づくりが進んでいます。その活動の担い手には自分の街をなんとかしたいという思いで戻ってきた人も多く含まれます。

今回お話を伺ったのは、果樹園「イドバダ・アップル」を営む吉田司さん。震災の経験をきっかけに地元の陸前高田に戻り、ホテルマンからりんご農家に転身したという興味深い経歴をお持ちです。吉田さんのお話を通して陸前高田の魅力を探りました。

前編では、陸前高田のりんごの魅力を
後編では、未来を切り拓くりんごに込めた想いをお届けします。

130年続く陸前高田のりんごのルーツは“家族の幸せ”

収穫したてのりんごを抱える吉田さん。一人で25種類、合計8トンのりんごを栽培しています。

海産物のイメージが強い岩手県で、特産品がりんごということに少し驚きました。陸前高田でりんご栽培が始まったのは今から約130年前、明治時代のことでした。この地域で出稼ぎをしていた大工さんたちが宮城県から梨の苗を持ち帰ったことから、やがてりんごやブドウといった、果樹の栽培が広まりました。

「陸前高田のりんごのルーツには『家族みんなで暮らしていけるように』という願いが込められているんです」

当時は秋になると三重のカツオ船が大船渡や釜石、気仙沼に寄港するので、りんごを売りに行くと郷土土産として大変喜ばれたそうです。りんごを売ったお金で、大晦日は家族揃ってお腹いっぱい食べて笑って年を越すことができたといいます。

陸前高田で作られるりんごは、生産量が限られているので市場にはあまり出回らない希少なもの。購入できるのは陸前高田市内の直売所かオンラインショップのみです。

(吉田さんのりんご販売サイトはこちら→https://idobada4649.base.shop/

一つひとつ丁寧にもいだ実をナイフでスパッと横に割ると、中心から大きな星の形に蜜が入っていました。1口かじるとあふれだす果汁。ここで採れるりんごは、ジューシーで濃い甘さが特徴です。

中心から星形にたっぷり入った蜜

陸前高田の宝を育てる「3つの太陽」

130年も続くということは、この土地ならではの強みがあるに違いない。

「そうなんです。この場所には“3つの太陽”と僕たちが呼んでいる、素晴らしい条件が揃った環境があるんです」と、陸前高田の自然の恵みを教えていただきました。

“3つの太陽”の1つ目は、長い日照時間。ここのりんご畑は南向きの斜面が多いとのこと。だから日当たりがよく、太陽光をたっぷり浴びたりんごになります。

2つ目は、強烈な西日。りんご畑の隣にある氷上山という山が燃えるように赤く染まるほどの強いエネルギーだそうです。

3つ目は、海からの照り返し。周りに遮るものがないので、目の前に広がる広田湾からの反射を浴びることができます。

そのほかにも、東北地方にも関わらず雪があまり降らない気候や、水捌けのよい花崗岩が多い土壌という特徴があることも教えていただきました。こんなふうに、他の場所にはない自然が存在するおかげで、りんごの栽培が続いてることに納得しました。

“3つの太陽”を浴びて育つりんご

後編では、未来を切り拓くりんごに込めた想いをお届けします。
130年の歴史が育む恵み|陸前高田の奇跡のりんご【後編】

陸前高田では、9〜11月のりんごシーズンには、りんご狩りも行っています。その他の時期には、りんご畑での農業体験も行っています。旅の途中で立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

りんご狩り体験
 

集合時間:10:00~16:00
体験時間:約30分~1時間
入園料:お一人様500円(税込)
https://sanriku-travel.jp/archive/contents-1664

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この記事を書いた人

まゆこ

【Webライター】 東京在住。出版社で編集・ライターを経験し、現在は複業ライターとして活動中。実際に行ったおすすめスポット・旅のお役立ち情報を発信します。 得意ジャンルは、美味しいもの・絶景・カフェ・お土産・温泉・神社です。

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