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フード  |    2024.03.27

山梨で長く愛される「くろ玉」の魅力に迫る|澤田屋【前編】

山梨を代表する銘菓のひとつ、くろ玉(くろだま)。あんこ玉に羊羹をかけた、シンプルだけれども職人の技術が光るお菓子です。くろ玉は、2024年で発売から95年を迎えます。

長く山梨で愛されてきた「くろ玉」の歴史と魅力について、澤田屋で広報を担当されている黒澤さんにお話を伺いました。

澤田屋の歴史

明治44年にオープンするお知らせ用に作られた絵葉書

澤田屋は江戸時代末期から、主にお菓子の材料の卸売りをしていました。その後、お菓子の製造と販売をする小売業として独立し、明治44年(1911年)6月10日に創業します。2024年で創業113年を迎え、現在も当時と同じ地に店を構えています。

当時は、職人の育成にも力をいれており、全国から和菓子職人を目指す若者が集まっていました。店舗の敷地内に寮を建て、衣食住をともにしながらお菓子の製造と販売をしていたそうです。

昭和9年頃の職人たちが集まっている写真

高度経済成長期の頃、販路を拡大するため店舗とは別に専用の工場を建設します。工場にも寮を建てて、引き続き職人の育成にも取り組んでいたそうです。

現在は、手作りで職人の技術を磨くという考えを大切に、澤田屋だからできるお菓子作りに取り組んでいます。

くろ玉誕生のきっかけ

創業当時の澤田屋では、果実を使った朝生菓子やお饅頭や大福といった、古くから親しまれている和菓子の製造と販売をしていました。

そのなかで「澤田屋の看板商品となるお菓子を生み出したい」という思いから、1929年(昭和4年)に誕生したお菓子がくろ玉(くろだま)です。

丸めたうぐいす餡に黒糖羊羹の組み合わせは、発売当時から現在まで変わらぬ製法でひとつひとつ手作りされています。

うぐいす餡には、4日かけてじっくり蜜を吸わせて作られた「かのこ豆」も入っており、口の中に入れると豆の食感と風味に、黒糖羊羹の甘さが絶妙なお菓子です。

シンプルだからこそ職人の技術が重要

長く愛されているくろ玉は、職人たちが試行錯誤して完成させた一品。さまざまな形を試したなかでも、丸いあんこ玉に羊羹をかけた姿は「一番きれいで佇まいが美しかった」のだそう。

そして、使用する食材もいろいろと試し、北海道のえんどう豆を使ったうぐいす餡と、沖縄の黒糖を使った羊羹の組み合わせにたどり着きました。

「これは憶測になるのですが、江戸時代末期から卸売りをしていたため、全国の食材が揃っていました。そこから、北海道の青えんどう豆と沖縄の黒糖の組み合わせにたどり着いたのかもしれません」

あまりにもきれいな形をしているので、機械で作られているのかと思っていたのですが、実はほとんどの工程は職人の手作業。

卸先が多いので機械でどんどん作っていると思われがちなんですが、ひとつひとつ手作りしています青えんどう豆のあんこのまわりに黒糖羊羹というシンプルな作りだからこそ、職人の目は必要。難易度の高いお菓子です」

うぐいす餡のあんこ玉には、青えんどう豆を別に煮て作ったかのこ豆が粒ごと入っています。青えんどう豆は前日に水に浸しておき、翌日砂糖を加えながら4日間かけてじっくり蜜を吸わせて作ります。

あんこ玉を丸める部分だけは機械を導入しているそうですが、くろ玉は美しい丸い形が大切。機械から出てきたあんこ玉の形を整えるひと手間も欠かしません。

朝一番に練り始める羊羹は、その日の気温や湿度を見極めながらの作業。どの工程にも必ず職人の目と手が入っています。

火入れした状態の羊羹にあんこ玉を入れてすくい上げる「てんぷら」と呼ばれる工程も、熟練の職人によるものです。

てんぷら作業に使われている道具は、くろ玉専用に作られたもの。あんこ玉をすくえるような形になっています。

Instagramでは、てんぷら作業の様子を見ることができます。鍋に入れたあんこ玉を見失わずにすくいあげ、傷を付けないように道具を引き抜く技術は圧巻です。

均一に作られたくろ玉は、職人の技術の賜物。見た目の美しさも楽しみながら食べたいお菓子です。

くろ玉の楽しみ方

まずはそのまま食べてもらいたいのですが、くろ玉にはさまざまな楽しみ方があります。

「くろ玉は緑茶との相性がバッチリですが、コーヒーにも合うんです。黒糖がさらにコーヒーとの相性を良くしてくれて。くろ玉ブレンドといって、くろ玉に合わせて豆をブレンドして作っています」

その他にも、スタッフの皆さんやお客様から頂いたアイデアを載せたペーパーもあります。

温めるときは電子レンジ600Wで20秒がベスト

筆者も温めて食べる方法を試してみましたが、温めることでより豆のホクホク感が感じられました。

一度見ると忘れられないパッケージ

くろ玉を山梨県内のパーキングエリアやお土産屋などに卸すことになったとき、くろ玉に負けないインパクトのあるパッケージにしたいと、現在のデザインになりました。

「平成の最初の頃にリニューアルしたのですが、今のデザインが根付いているので、それからさらに変えることはできていません。少しデザインを整えるとか、包装紙の質を変えるくらいです」

黒ベースに赤が映える化粧箱、包装紙は赤をベースにしています。武田信玄を思わせるようなデザインは、一度見ると忘れられないインパクトがあります。

美味しいものを作って幸せを広げる

澤田屋という名前の意味についても伺ったところ、人名からではなく漢字の意味から考えて付けられたそうです。

「澤という字は、実りとか幸福とかすごく良い意味を持っていて。田という字も作物を育て広めていくような意味があります。作物を使って美味しいものを作り、幸せを広げていくみたいな意味が込められているんです」

お菓子屋として美味しいものを届けたい思いと、職人の高い技術がひとつになり、くろ玉は長く愛されてきたのだと感じました。

山梨に訪れた際には、ぜひ手に取ってみてください。くろ玉は澤田屋本店のほか、オンラインショップでも購入可能です。

そのほかの取扱店はこちら

お店の情報

澤田屋 本店
■住所
山梨県甲府市中央4-3-24
■電話番号
055-235-1331
■営業時間
9:00-18:00
■定休日
元日・毎週火曜日
※但し火曜日が祝日、1月最初の火曜日、12月最終の火曜日は営業
■ホームページ・SNS
ホームページ
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この記事を書いた人

ひろ

岡山出身、山梨在住のwebライター。 結婚を機に、東京・山梨・兵庫と移り住み、再びご縁があって山梨に戻ってきました。移住してきた私の目線で、地域の良さを発信していきたいです。 好きなことは、食べること、のんびりすること、ライブ参戦。

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