コーヒーの中でも印象的な甘みや酸味を持つ、スペシャルティコーヒー。
国際基準をクリアしたコーヒーランクの最上位に位置付けられ、流通はコーヒー全体の10%と言われます。
そんなスペシャルティコーヒーに向き合い続け、上質な1杯を手軽に楽しめるのが、東京・大田区の住宅と町工場が入り混じる街中にある「BUCKLE COFFEE(バックルコーヒー)」です。
コーヒー豆のポテンシャルを最大限に引き出すためのこだわりと、町工場が身近だからこそ伝えたいものについて、オーナーの石山俊太郎さん、店長の石本岳さんにお話を伺いました。
コーヒーは同じ産地でも味や香りが変わる
日常のひとときに飲むことが多いコーヒー。考え事をしていたり、スマホを眺めたりしながら何気なく飲んでしまいますが、実は一つひとつ味や香りに個性があるのを知っていましたか?店長の石本さんがこう教えてくれました。
「コーヒーは同じ産地でも、違った味わいが楽しめるんです。例えば同じコロンビア産でも、地域や農園の違いや、収穫した年の出来具合によっても味や香りが変わってきます。さらに生豆の焙煎度によっても変化するので、産地だけではいつも同じ味とは限らないんですよ」
実際、お店に来られるお客様からも「同じ産地だけど、別のお店で飲んだときと味が違う」という声をいただくことがあるそう。そのため、BUCKLE COFFEEではメニュー表示にある工夫がされています。
味の特徴からコーヒーを分かりやすく色分け
BUCKLE COFFEEのコーヒーメニューは、特徴によってコーヒーを4つのカラーに色分けしています。
赤ワインのようなベリーの味わいは紫色、柑橘のような爽やかさならオレンジ色、酸味・甘み・苦味のバランスがとれたものはグレー、ビターなテイストはブラウン。それぞれのカテゴリから各2種類をラインナップし、8種類のコーヒーから好きなものを選ぶスタイルです。
「自分好みの味に合わせて選んでもらうことで、いつもお客様が今日のコーヒーも美味しいと味わってもらえるように、色で分かりやすく表示しました。また、味を4パターンに分けて展開することで、コーヒーに味の多様性があるのを知ってもらいたいという狙いもあります」
さらに、BUCKLE COFFEEでは購入時のポイントカードに豆の銘柄を色に合わせたペンで記入する仕組みがあります。カードを見たスタッフが、お客様の好みを一目で分かりやすくするための工夫だそうです。
経験と緻密なデータから生み出される味 豆の選定から商品化までの流れ
BUCKLE COFFEEのコーヒー選びは、生産者さんを調べるところから始まります。
スペシャルティコーヒーの基準を満たしていることはもちろん、どの国の、誰が作っているかが確認できるかといったトレーサビリティも大切にしているから。こうして選ばれた豆の中からサンプルを決め、商品化テストに入ります。
サンプルの豆は、生豆の水分量や焙煎窯内の温度、焙煎した豆の焼き色を確認し、味をチェック。このとき、BUCKLE COFFEEではこれらの工程を人の勘や経験だけに頼らず、機械を使ってデータをとり、味と数値を突き合わせながら商品化できるかを判断するそうです。
焙煎機の空気の抜け具合や、ガスの火力の強さを調節しながら、仮説と検証を繰り返し、商品化に至るまで2ヶ月近くかけるのだそう。オーナーの石山さんはこう話します。
「職人による感覚はもちろん大切ですが、それと同じくらい再現性も重要だと思っています。再現性を出すためにはデータによる裏付けが必要です。
良いものを作って提供したいと考えたときに、データによって定量化することはクオリティを安定的に保つのにつながりますし、より良いものを作る確率も高まります」
データの数値とスタッフの知見で何度も検証を重ねながら、スペシャルティコーヒーのポテンシャルを最大限引き出していくBUCKLE COFFEE。小さな調整を重ねていく姿は、町工場の職人さんが原料を少しずつ形にしていくようでした。
後編では、BUCKLE COFFEEを創業したきっかけや、町工場のある地域ならではの思いについて伺います。
BUCKLE COFFEE
住所:東京都大田区東六郷2-4-14 MANU ZOSHIKI 1F
ホームページ:https://www.bucklecoffee.jp/