横浜市青葉区の市が尾駅でヤキマメヤという珈琲豆専門店を営む渡部さん。
開業されて2年、近隣に住んでいる方はもちろん有名飲食店にも豆を卸す隠れた名店です。
季節によって豆の種類を入れ変えながらも常時16種類から18種類の豆を扱い、買いに行くたびに入荷した豆の特徴やおすすめの淹れ方を丁寧に話してくださる珈琲愛に溢れたお店です。
もともと飲食や珈琲関係のお仕事をされていたかと思いきや、趣味が高じて全くの他業種から珈琲豆屋さんになられた面白い経歴をお持ちの方でした。
前編では、珈琲に出会い開業に踏み切るまでのストーリーを
後編では、開業後の苦労やこれからについて話してくださいました。
前職のときから漠然と飲食店に憧れがあった

ーーまず初めに、お店を開業されるまでの経歴などお伺いできますでしょうか?
珈琲豆屋を始めるまでは、不動産の会社を経営していました。
不動産にも色々あるのですが、私の会社では主にチェーン店さんの新店舗として出店する物件を探して仲介することが多かったです。
思い出に残る仕事としては、某大手回転寿司チェーンの仲介をしたことですね。
サテライト店のようなプレミア感のある店舗で、面白い店舗に携れてよかったなと思っています。
その他にも物件を紹介するお店は飲食店が多く、仲介という仕事をしながらも漠然と「飲食店っていいな、いつか自分でも飲食店をやってみたいな」と考えていました。
ーーそうだったんですね。そんな中で珈琲と出会ったきっかけは何だったのでしょうか?
珈琲はもともと好きでした。
好きと言ってもこだわりを持って飲んでいたわけではなくて、手ごろなお店で珈琲豆を挽いて粉にしてもらい、家に帰ってから珈琲メーカーで淹れる程度で。
でもコロナの流行に伴い、次々と飲食店が撤退していくところを目の当たりにして、自分の仕事もどうなっていくのかなと次第に思うようになりました。
飲食店が新規店舗を出店しないことに比例して、私の仕事も落ち着いてきたタイミングで「せっかく時間があるし、珈琲も好きだからハンドドリップで淹れてみたい」という気持ちが芽生え始めました。
専門店へ行き、店員さんに聞きながら一式揃えたことが今考えると開業に繋がる第一歩だったんだと思います。
趣味が高じて始まった研究の日々

ーー趣味に近い状態から始まったんですね。コロナ禍から本格的に珈琲を淹れるようになったということは、今から4年前ぐらいということですよね?
そうですね。
始めは何も分からなかったので、本やYouTubeを見ながら淹れていました。
豆の挽き目もどうすればいいのかよく分かっていなかったので、とりあえず粉にしたような状態から淹れてみて「あれ、美味しくないな……」と失敗を繰り返しながら試行錯誤していましたね。
当時は日々色んな淹れ方を研究することが楽しくて、もっと珈琲の勉強をしてみたいという意欲が出てきたんです。
本業がコロナの影響で落ち着いたタイミングで、1年間の通信教育で珈琲の資格取得講座を受講しました。
卒業まで1年掛かる内容でしたが、勉強が楽しくてどんどん課題提出をしていたら4か月で資格を取得してしまったんです。
ーー半年もかからないうちにすべての課題を提出し終わったということですよね?
はい、気が付いたら終わっていました(笑)
講座では珈琲の歴史や豆の種類の違いなどを学ぶのですが、その中に焙煎の授業というのがあって。
その時に焙煎って面白そうだと思い、小さい家庭用焙煎機を購入しました。
焙煎から自分で行った豆をハンドドリップで淹れてみたらそれはもう美味しくて。
でも自宅で焙煎した豆には欠点もあり、生豆と呼ばれる焙煎前の豆はわりとそのまま置いていても品質は変わらないのですが、自宅で焙煎した後の豆はとにかく品質を維持することが難しいんです。
家庭用焙煎機は性能がお店で扱うものに比べると簡易的なので、火入れをコントロールしづらく、じっくり火を入れることには長けていません。
そのことに気づいてからは、お店で扱うような高性能の焙煎機で焙煎してみたいと思うようになっていました。
とまらない探求心が開業へ繋がった

ーー珈琲への探求心がすばらしいですね。開業前にお店で扱うような焙煎機に触れる機会はあったのでしょうか?
どこかで焙煎機を触らせてもらえないかなと探していたところ、西東京エリアにあると知って。
そのお店は深入り珈琲の名店と言われているところで、私自身も深入り珈琲が好きだったのでぜひ修行させてもらいたいと思いお店を訪ねました。
お店の方に経緯を説明し、その後弟子入りという形で勉強会に参加しながら学びを深めました。
店舗で扱うような焙煎機は自宅で焙煎していたものとはやっぱり全然違うんですよね。
日に日に珈琲のお店をやりたいという気持ちが溢れてきて、修行しながら開業できそうな物件を探して、修行先の窓口担当者の方に見せていました。
開業はためらいよりも自身の想いが勝った

ーー趣味から始まった珈琲が職業になるなんて素敵です。飲食店への憧れがおありだったと伺いましたが、開業するにあたって怖さやためらいみたいなものはなかったのでしょうか?
正直開業する怖さから悩んだ時期もありました。
今までしていた不動産の仕事は、原価というものが存在しないですし収益の規模も大きい業界でした。
時間の余裕も作りやすかったですし、安定を手放す必要はあるのかと両親から反対されたりもしました。
ですが子供も巣立って今までみたいにお金がかかるわけでもない、何より自分が作ったものでお客さんに喜んでもらえる生活がしたいという想いが強かったので、店舗を持つことを決意しました。
コロナ禍が一つの転換期を迎え、趣味で始めた珈琲が職業になった渡部さん。
圧倒的な探求心で突き進んだ先は、かつて憧れた飲食店経営の夢へと繋がっていました。
後編ではお店についてさらに深掘りし、今後の展望について伺いましたのでぜひご覧ください。
自家焙煎珈琲豆店ヤキマメヤ
住所:神奈川県横浜市青葉区市ケ尾町1157-1東急ドエル市ヶ尾アネックスショッピングビル1階
アクセス:市が尾駅徒歩1分
営業時間:11時~18時
電話番号:045-482-3773
定休日:月曜日・第3火曜日
※月曜日が祝日の場合は営業、火曜日が休みとなります。第3火曜日が祝日の場合は営業、第3水曜日が休みとなります。
公式Instagram:www.instagram.com
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