地域創生メディア  Mediall(メディアール)

オンリーワン・ナンバーワンがそこにある 応援の循環を作る 地域創生メディア

スポット  |    2026.06.30

なぜ人を呼び続けるのか?過去最多の来場数、小倉城庭園にみる活性化のヒント|福岡県北九州市

小倉城と同じ敷地内にある小倉城庭園はいま、人を呼び続けています。2025年度の小倉城の来場者数は約35万人と前年度比約17%増を記録し、小倉城庭園も約18万人と開園以来過去最多を更新しました。

九州の玄関口・福岡市と比べると、小倉城のある北九州市は、九州の外から訪れるにはひと手間かかる場所でもあります。さらに、私が訪れた日はあいにくの雨でしたが、平日にもかかわらず、小倉城庭園には絶えず人の姿がありました。とりわけ目立ったのは海外からの来訪者で、アジア系観光客を中心にさまざまな言語が飛び交い、景観を楽しむ姿が印象的でした。

なぜ、この場所は人を惹きつけるのか——本記事では、実際に小倉城庭園を訪れた筆者の視点から、来場者が絶えない理由と地域活性化のヒントを読み解いていきます。

小倉城庭園(北九州・小倉):過去最多の来場数を記録。インバウンドも増加中

武家作法をもっと身近に。北九州で唯一、「礼法」を伝える小倉城庭園

小倉駅から徒歩15分。小倉城内にある小倉城庭園は、江戸時代に小倉城主・小笠原氏が和歌や茶の湯を嗜むために築いた大名屋敷(下屋敷の別邸)を再現したものです。

小倉城庭園(北九州・小倉):過去最多の来場数を記録。インバウンドも増加中
小倉城庭園(北九州・小倉):過去最多の来場数を記録。インバウンドも増加中

見どころのひとつは、大きな池を巡りながら四季の移り変わりを楽しめる「池泉回遊式庭園」。一歩足を踏み入れれば、豊かな緑に囲まれた池の水面に、空が大きく映し出されます。その広大な空間と静けさによって、市内中心部にいるのを忘れてしまうような開放感があります。

小倉城庭園(北九州・小倉):過去最多の来場数を記録。インバウンドも増加中
小倉城庭園(北九州・小倉):過去最多の来場数を記録。インバウンドも増加中

また、庭園に張り出すように設計された書院造の「書院棟」から外を眺めると、まるで絵画のような庭園風景に入り込むような感覚が。落ち着いた雰囲気のなかで眺める、小倉城の天守閣は印象的でした。

小倉城庭園(北九州・小倉):過去最多の来場数を記録。インバウンドも増加中

そして展示棟には、全国でも珍しい「礼法」をテーマとした展示もあります。武家に伝わる礼法とは、単なる形式的なマナーではなく、相手を思いやる「心」を表すための「形」ーー小倉城庭園が継承する「小笠原流礼法」の歴史、年中行事、人付き合いの作法、調度品の扱い方などがわかりやすく展示されています。

小倉城庭園(北九州・小倉):過去最多の来場数を記録。茶の湯・礼法の展示。

そのほか、予約不要で本格的な茶道体験ができる「立礼席(机と椅子のお茶室)」では、抹茶と季節のお菓子が味わえます。さらに、礼法や香道、茶道を学べる文化講座や小倉織体験コーナーなど、初めての方でも参加しやすい日本文化の体験プログラムも豊富です。

小倉城庭園(北九州・小倉):過去最多の来場数を記録。小倉織の体験展示
小倉織の体験コーナーには実際に手で触れられる展示物も

 

大名庭園の静かな風情の中で、日本文化の奥深さを日常につなげる体験の数々。庭園を歩いて季節の表情を楽しむだけでなく、もう一度訪れてみたくなるような「きっかけ」が小倉城庭園には用意されていました。

雨の小倉城庭園。それでも人が絶えない理由

私が訪れた日は、朝から一日中しとしと雨が降り続き、足元が濡れるような天候の平日でした。それでも日本庭園には、一人、また一人と途切れることなく来訪者の姿が。雨音が静かに響く一方で、遠くからは観光客の驚きや喜びの声が聞こえていました。

先述の「体験」「再訪のきっかけ」以外に、小倉城庭園が人を呼び続ける理由として特筆すべきなのは、写真を意識した仕掛けかもしれません。入口付近に置かれた番傘や、印象的に配置された赤い着物。展示室を含め、多くの場所で写真撮影が許可されており、禁止の表示はほとんど見当たりませんでした。

小倉城庭園(北九州・小倉):過去最多の来場数を記録。インバウンドも増加中
小倉城庭園(北九州・小倉):過去最多の来場数を記録。インバウンドも増加中

写真撮影をあえて許可することにより、気軽に日本文化に触れてみたい層に向けても小倉城庭園は開かれた体験をつくっているように見えました。特に、スマートフォン世代やインバウンドの観光客にとっては、写真を通じて体験を持ち帰れる点が魅力になっているようでした。

なお、小倉のある北九州市では行政がインバウンド誘致に力を入れており、近年は海外からの観光客も増加傾向でもあります。

小倉城庭園(北九州・小倉):過去最多の来場数を記録。インバウンドも増加中。その秘訣
写真撮影可の表示にはイラストや英語も併記されており、直感的にわかりやすい

 

「写真撮影を許可する」というあり方は、滞在の満足度や旅の記憶、そして新たな来訪のきっかけとしても作用しているように感じられます。なかでも「許可をする」という寛容な姿勢自体は大きな投資を必要とするものではありません。ですが、訪れる人の体験価値に与える影響は小さくありません。

地域活性化に課題を抱える他の地域や施設にとっても、検討しやすい工夫の一つと言えるのではないでしょうか。

小倉城庭園(北九州・小倉):過去最多の来場数を記録。インバウンドも増加中。ライトアップされる中庭
日没後はライトアップされる中庭

 

小倉城とともに、過去最高の来場者数を更新し続ける小倉城庭園。未来に向けた地域活性化のヒントが、ここにはあるのかもしれません。

 

小倉城庭園

住所:福岡県北九州市小倉北区城内1-2
電話:093-582-2747

年中無休

営業時間:
4月〜10月 9:00~20:00
11月〜3月 9:00~19:00

年中無休でライトアップショーを開催。(日没後〜閉園時間まで)
※イベントの開催などにより営業時間が異なる場合があります。

公共交通機関
・JR小倉駅から徒歩約15分
・JR西小倉駅から徒歩約10分


・(福岡・山口方面より)北九州都市高速 大手町ランプから車で約8分
・(戸畑・若松方面より)北九州都市高速 勝山ランプから車で約5分

駐車場あり(有料)

入場料:
一般 : 500円(北九州市にお住まいの方 400円)
2施設共通券 700円
3施設共通券 900円

中高生 : 300円
2施設共通券 400円
3施設共通券 550円

小学生 : 150円
2施設共通券 200円
3施設共通券 300円

※ 2施設共通券:小倉城、小倉城庭園に入場できます。
※ 3施設共通券:小倉城、小倉城庭園、松本清張記念館に入場できます。
※ その他、シニア割引、障害者割引あり。詳しくは公式サイトにてご確認ください。

公式サイト: https://kokura-castle.jp/garden/

記事をシェアする

この記事を書いた人

夏子

伝統と現代、文化と商業、都市と地域、日本と海外など、異なる視点を行き来しながら地域や人が持つストーリーを読み解くのが好き。これまでに海外3カ国で暮らし、10年以上かけて国内39都道府県を訪ねました。「旅 × 地方創生」をテーマに、地域の文化や暮らしを、広く伝わる価値として綴ります。

よく読まれている記事

関連記事