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スポット  |    2024.04.20

クスノキが見守る歴史、御厨天神社の大修復【前編】|東大阪市

近鉄八戸ノ里駅から北へ徒歩15分ほどの場所にある御厨天神社。
市の指定天然記念物であるクスノキを御神木とし、御本社や境内社、石造物に至るまで深い歴史が刻まれた神社です。

このほど大修復を行った天神社について、宮司の田原さんにお話を伺ってきました。

「御厨」の読み方は?歴史ある地に佇む古社の謂れ

突然ですが、大阪の難読地名問題です。

「御厨」は何と読むでしょうか?


正解は、、、


「みくりや」


御〈神の〉+厨〈台所〉という意味です。

東大阪の北部にはかつて、河内湖という湖がありました。生駒山の麓に迫る大きな湖です。
平安時代、湖の周辺一帯は皇室領「大江御厨」と定められ、朝廷に献上する魚介類を獲るための拠点でした。
御厨の地名もこれに由来していて、海産物の荷揚げ場や倉庫があったのではないかとされています。

御厨天神社の正式名は、天神社(あまつかむやしろ)
祭神は大名持命と少彦名命の二柱で、境内社には智葉神社と小宮四社が祀られています。

旧御厨村の中心に位置しているこちらの神社ですが、創建年代は詳しく分かっていないのだそう。

一説では、平安時代中期には存在したのではないかと伝えられていて、千年以上前から御厨の地に鎮座している由緒ある神社なのです。

境内には元禄10年(1697)銘の石灯籠、寛政9年(1797)銘の狛犬など、歴史の深さが窺える石造物が多くあります。

手水舎は正徳元年銘。300年以上前…!


参道の石畳は、各地からさまざまな種類の石材を集めて敷かれた珍しい造りです。
とくに両端の縁石は縦に長いので、同じような大きさの天然石材を新しく調達するのは困難なのだとか。

天然記念物のクスノキ

長い歴史があるのは建築物・石造物だけではありません。
社殿の東側には、東大阪市の天然記念物に指定されているクスノキがそびえ立っています。
なんと樹齢750年!

案内板には樹齢伝承900年と書かれているのですが、田原さんのお話によれば750年ぐらいか、もう少し若いとのことでした。
900年前なら平安時代、750年前でも鎌倉時代です。
いずれにしても、市内で最古のクスノキなのは間違いありません。

市の文化財に指定されたのは平成10年。
幹の太さは約6mもあり、存在感が際立つ立派な御神木です。

こちらの御神木は2~30年前に病気にかかった際、幹分かれの上部が枯れてしまいました。
立ち枯れした部分は伐採されましたが、その原木の一部が社務所の前にオブジェのように安置されています。
幹にできた空洞を埋めるなど、治療の甲斐もあって、今は元気だそうですよ。


クスノキの他にも、目を惹く大きな木がありました。
境内へ入って左手にある、樹齢400年といわれているクロガネモチの木です。

昔は子ども達の遊び場として、恰好の木登りスポットだったようですね。
(今は登っちゃいけません)

文字のようなものが刻まれているのが分かるでしょうか?
はるか昔、地元の子ども達が名前を彫って遊んでいた痕です。
(今はやっちゃいけません)

数年前に病気にかかって治療したこともあり、現在は周囲を柵で囲んであります。

約60年ぶりの大修復工事

御厨天神社は拝殿こそ昭和初期の建築ですが、御本殿は寛政元年(1789)のものとされています。
しかし、どれだけ立派な社寺建築でも、経年による老朽化は避けられません。
昭和36年9月に発生した第二室戸台風では、境内のイチョウが折れて御本社に直撃。拝殿を中心に甚大な被害を受けたといいます。

第二室戸台風による被害(昭和36年9月16日) 資料提供:天神社


長い歴史の中で何度も屋根の葺き替えや修繕を行ってきた天神社ですが、銅板屋根の腐食や木部の傷み、装飾の欠落のほか、地盤沈下などの理由から、ついに大規模な修理・修復工事に踏み切りました。

境内にはもともと御神木の他にもクスノキが生えていましたが、根っこが建築物を持ち上げてしまっており、保全のために一部を伐採・伐根しています。
良質な国産材の入手が難しくなっている中、境内で伐採されたクスノキが修復工事で大いに活躍することになるのです。

田原さんは今回の工事に際し、神社を「真新しくはしない」と考えたそうです。

新しく造り替えるのではなく、使える部分をできる限り残しながら修復する。
昔からある古材を使って元の姿を取り戻す。


現代へと受け継がれてきた神社をさらに後世へ引き継ぐためには、伝統ある木造建築技術が必要でした。

後編では、大修復に携わった職人の伝統技術や知識、歴史ある建築物を「残していくこと」に掛ける想いについてお届けします。

クスノキが見守る歴史、御厨天神社の大修復【前編】|東大阪市

天神社(御厨天神社)

所在地:〒577-0032 大阪府東大阪市御厨1丁目4-29
電話番号:06-6781-8252

近鉄奈良線 八戸ノ里(やえのさと)駅から徒歩約14分
大阪メトロ中央線 長田駅から徒歩約15分

【参照サイト】
その32 意岐部のクスノキは見ていた!親子で楽しむ『東大阪むかしむかし』|まいぷれ東大阪
御厨天神社を訪ねて|エコー東大阪:令和2年11月6日号

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この記事を書いた人

九重 十彩

生まれも育ちも東大阪市。カフェ巡りから一人飲みまで、美味しいものと共に在りたいWebライター。 実は調理師免許を持ってるけど、ほぼほぼ持ってるだけ。 大阪の中核市としての一面と、生駒山系の自然、振り幅の広~い「モノづくりのまち東大阪」の魅力を発信していきます。

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