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スポット  |    2024.08.03

『浜松市楽器博物館』で楽器が奏でる”世界”を体験しよう【前編】

楽器のまち・静岡県浜松市にある『浜松市楽器博物館』。
ヨーロッパだけでなく、アジア、アフリカ、アメリカなど世界中から集められた楽器を展示しています。

「ただ楽器が展示されているだけでしょ?」と思うことなかれ!
浜松市楽器博物館は、楽器を通して『世界を体験できる』博物館なのです。

今回取材させていただき、音を出すだけではない楽器の奥深さと魅力を知りました。
楽器は多くのメッセージを現代のわたしたちに伝えてくれています。まさか、楽器とあの話がこんなところで繋がっていたなんて…と驚いたのは一度や二度だけではありません。

楽器に興味のある方はもちろん、楽器に触れる機会が少ないという方こそ新しい発見のある施設です。ぜひチェックしてみてください!

見て聴いて体験できる『浜松市楽器博物館』

楽器博物館の入り口

浜松駅北口から北東へ歩いて約10分のところに『浜松市楽器博物館』はあります。

ヤマハやカワイ、ローランドなどの楽器メーカーが軒を連ね、昔から楽器製造産業が盛んな浜松市。『音楽のまち』活動の中心を担う施設のひとつとして1995年4月に開館しました。国内では初となる公立の楽器博物館です。

浜松市楽器博物館が取り組んでいるのは『生きている』博物館。
まずはその魅力を、写真とともにご紹介します。

【見る】世界の楽器1,500点を地域別・種類別・年代別に展示

見渡す限り楽器が並ぶ。規模の大きさや装飾のきらびやかさに目を奪われる。
アジアエリア(1F)

楽器と聞くとどうしてもピアノやトランペットなどヨーロッパをイメージする方が多いでしょう。
浜松市楽器博物館は『世界の楽器を偏りなく同じ目線で平等に展示する』がコンセプト。日本を始めとしたアジアや中東、アメリカやアフリカなど、世界中の楽器を展示しています。収蔵している楽器は全部で約3,300点あるというから驚きです。

常設展では地域別、種類別、年代別に1,500点を展示し、特別展や企画展、テーマ展も開催しています。
館内は1階と地下1階に分かれており、展示室は合わせて4つ。地域ごとはもちろん、年代ごとにも展示されているので、巡るだけでも楽器の移り変わりがわかるように工夫されています。

アフリカの楽器の中でも太鼓を集めて展示しているエリア。大小さまざまな太鼓があるが、それぞれ装飾が違う。
アフリカエリア(地下)

館内を巡ると、見たことのない楽器の多さに驚かされます。
アフリカエリアでは、太鼓を意味する『ンゴマ』の展示に「あれもこれも『ンゴマ』!?」と見つけるのが楽しくなりました。

モンゴルの伝統楽器「馬頭琴」の展示

<スーホの白い馬>で登場するモンゴルの『馬頭琴』も展示されており、本やアニメなどで知った楽器を目にできるのも嬉しいポイントです。
(筆者は<のだめカンタービレ>で登場したテルミンを見てテンションが上がりました)

手前に電子楽器、奥には国産洋楽器がずらりと並ぶ
電子楽器・国産洋楽器エリア(1階)

世界に名を知られている地元楽器メーカーのヤマハやカワイ製を始め、さまざまな国産の洋楽器も展示。長い年月を経た味わい深い楽器から最新の電子楽器まで、日本の楽器製造の歴史が一目で分かります。戦前に製造された懐かしい楽器から近代的な電子楽器までがずらりと並ぶ室内は圧巻です。

【聴く】楽器の演奏が流れるヘッドホンやモニターで音色を楽しむ

展示されている楽器の前にはヘッドホンが設置されている。モニターで演奏している様子を見れる場合も。
左はオセアニア、右はヨーロッパの管楽器エリア

館内では、楽器の前にヘッドホンやモニターが設置されています。ヘッドホンを耳につけたりモニターの前に立ったりすれば、楽器の音色をすぐ聴けるようになっているのです。
ボタンを押せばその場で音楽が流れる、ヘッドホン不要の展示もありました。

低音金管楽器「セルパン」の展示。まるで黒い蛇のようにうねうねと曲がりくねった形をしている。
17〜19世紀に広まった低音楽器『セルパン』

あまり知られていない楽器も多く展示されており、中には「どう演奏するの?」と思うような楽器もあります。音色とともにモニターで演奏する様子も見られるのは嬉しいですね。

無料で貸し出してくれるイヤホンガイド、学芸員の方が楽器を解説してくれるギャラリートークやガイドツアーも、耳から学習できておすすめです。
日によってはコンサートやワークショップも行っています。

ギャラリートークの予定やイベントの開催はホームページから確認できるので、ぜひ聴きたい楽器やコンサートに狙いを定めて訪れてみてくださいね。

【体験する】音の出る仕組みを知り、体験ルームでは実演を

年代順に鍵盤楽器が展示されている

ヨーロッパの鍵盤楽器が並ぶスペース地下1階の『鍵盤楽器エリア』では、触わって仕組みを理解できる展示があります。

ピアノを細切りにしたかのような模型。突き上げ式と呼ばれる音が鳴る構造が見えるようになっている。

楽器の合間にあるのが、ピアノを切り出したような模型です。赤い矢印が示す鍵盤を押すと、ピアノの内部の動きが見えるようになっています。

ピアノと同じ鍵盤楽器であるチェンバロにも同様の展示がありました。外からは同じように見えても、内部構造は異なります。違いが直接目で見てわかるため、子どもも大人も「そういうことか!」と納得できますよ。

体験ルームの入り口
国産洋楽器や電子オルガンが並ぶ先にある体験ルーム入口(1階)

しっかりと自分で楽器を演奏したい方におすすめなのが『体験ルーム』です。お子さん用に、靴を脱いで楽器を体験できるスペースも設けられています。

体験ルーム内に並ぶ楽器たち

打楽器からハンドベル、琴にギター、見ただけでは使い方がわからない珍しい楽器まで、体験できる楽器がたくさん並んでいて、思わずどれから試そうか迷ってしまいます。
自分で思う存分音を出せるだけでなく、演奏に必要な慎重さやコツなど、新しい発見もあるのが体験ルームの面白さです。
楽器を見るだけではわからない内部の仕組みや、演奏する楽しさを実際に体験しながら学べる工夫がされています。

楽器以外も収集!?絵や置物もより深く知るための重要なカギ

浜松市楽器博物館では、本や楽譜、CDやDVDなどに加え、絵や置物も所蔵しています。
楽器以外の資料を集めている理由は、楽器の形や実物だけではわからない情報を知るためです。

例えば、こちらの2つの太鼓。どうやって演奏するか想像してみてください。

大きな2つの太鼓が並ぶ

ティンパニのようにふたつ並べて叩くところをイメージした方が多いのではないでしょうか。

では、楽器のすぐ横に展示されている置物を見てみましょう。

馬に括りつけた左右の太鼓を、またがる人がバチで叩く置物が6体並ぶ

「馬に括りつけて使うの!?」と思ったのは、筆者だけではないはず…
もちろん置いて演奏する場合もありましたが、パレードなど行進しながら演奏する、軍楽隊用の楽器でもあったのです。

中には、形だけでは演奏方法や使い方が伝わっていない楽器もあります。絵画や置物などは、楽器だけではわからない当時の服装や時代背景、演奏風景などを教えてくれる重要な資料です。

集められた楽器にまつわる絵画や置物なども館内に展示されています。当時の演奏風景を思い浮かべながら、見て回るのも楽しいですよ。

世界中の楽器を見て聴いて体験することで、生まれた土地によってそれぞれ特徴が異なることに気付かされます。

しかし、楽器は単に音を奏でるだけの存在ではありません。昔から人々の生活のすぐそばにあった楽器は、人類の歴史や文化、時代のニーズや人々の価値観までも映し出してくれます。

後編では、浜松市楽器博物館が注力しているギャラリートークや展示、広報の増田さんからお聞きした、楽器が語る驚きの世界をさらに深くご紹介します。
楽器の意外な一面を知ることで、あなたの楽器への見方が一変するかもしれません。お楽しみに!

浜松市楽器博物館

住所:静岡県浜松市中央区中央3-9-1

アクセス:浜松駅北口から徒歩約10分

駐車場:専用駐車場はなし
 ※周辺に有料駐車場あり

開館時間:9:30~17:00

休館日:毎月第2・4水曜日
    (祝日の場合は翌日、8月は無休)
    年末年始
    ほか、整理や点検などで臨時休館日あり  

入館料:大人800円、高校生400円
 ※中学生以下、70歳以上は無料
 ※20名以上で団体割引あり(予約必須)

電話番号:053-451-1128

HP:https://www.gakkihaku.jp/

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この記事を書いた人

中村 ことは

パン職人ライター。趣味は旅行・神社仏閣巡り・着物。 歴史が感じられるものや場所、職人の技がきらりと光る工芸品も大好物です。 静岡県西部を中心に、私だからこそ紹介できる魅力を発信していきます。

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