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スポット  |    2024.10.17

深谷を行き交う人の心あたたまる宿|旅館 きん藤

埼玉県・深谷市。2024年7月発行の新一万円札に描かれている「渋沢栄一」の故郷として、注目を集めているエリアです。また深谷市の玄関口であるJR深谷駅は、東京駅を模した駅舎のデザインが美しいと言われています。そんな深谷駅から徒歩8分のところに佇む老舗旅館「きん藤」に伺いました。

この旅館、なんと1825年創業の老舗旅館なのだそう。江戸時代、中山道最大の宿場町と言われていた深谷には、約90件もの宿がありました。その中で、今もなお営業を続けている宿は「きん藤」だけ。2023年9月にはリニューアルをし、現在、6代目店主の石川克正さんと妹の友子さんが切り盛りしています。

移り変わる時代とともに多くの人から愛され続けている旅館の魅力を、女将である友子さんに聞きました。

深谷へ来たお客様に喜んでいただくために

深谷牛すき焼き付プランの夕食

「今、ビジネスホテルが多くある中で、うちが違うのは、やはり自慢の夕食が出るところだと思うんです」と笑顔で語る女将さん。店主の克正さんは旅館をする前、料理屋での経験があったそうで旅館の料理にもこだわっているのだとか。

「夕食は、なるべく深谷の食材を使用しています。地元野菜や卵農家さんの卵など、深谷の食材を堪能できますよ。なかでも深谷牛のすき焼きがつくプランは、お肉はもちろん深谷ねぎの天ぷらも味わえるメニューを用意しています」

深谷を訪れたお客様へ、現地のものを美味しく食べて欲しいという『おもてなし』を感じられます。

旅の思い出作りを支える、女将さんの温かい心

女将の友子さん

「毎日ドラマがあるんですよ」と微笑む女将さん。例えば、お父さんのサプライズのお祝いをしたり、全国大会へ行く前に家族旅行で来ていたり、遠方から初めて深谷に遊びに来ていたり、きん藤に来たお客様との何気ない会話が楽しみのひとつだとか。

「すごい全国大会に出るんだよと言われたら、 応援したくなったり、一緒に寄り添いたくなります。 お客様とは一晩一緒に過ごすので、この旅館で思い出を作るお手伝いをしたいし、ここに来てよかったと思って欲しいです。常連さんとは長い付き合いになっていますので、もはや家族のような存在で、会うたびに嬉しくなります」

お客様との出会い・何気ない会話を大切にする女将さん。お客様を惹きつける秘密は、そんな姿勢にもありそうです。

辞める勇気が無かった。続けることで生まれた使命感

「私たちが子供の頃は、まだ旅館が2、3軒残ってたんです。しかし、残っている旅館も次の代がいなくて辞めるか、次の商売を見つけて違うことを始めていきました。最後、うちが旅館を辞めなかったのは、辞める勇気がなかったんじゃないかな 」

歴史ある旅館として愛される「きん藤」は、数々の葛藤を乗り越え"今"があるそう。

「コロナ禍のときには、お客様ありきの旅館業はとても苦しかったんです。このときに『旅館はここで辞めて、空いた土地を活用して駐車場にすればいい』という話にまでなっていました。しかし、心のどこかで本当に辞めていいのかという葛藤を何度も繰り返したんです。そして辞める勇気を一向に持てず、ここまできました」

笑顔の裏には、数々の葛藤や旅館業を継いでいく責任など、計り知れない背景があったのだろう。それでも、辞める選択をせずにここまで続けている旅館だからこそ、深谷に根付き、多くの人から愛されているのだと感じます。

そして、今後の旅館業についての答え。約200年も続く老舗旅館「きん藤」を、ここまで続けてきたからこそ感じることがあるようです。

「今や、最後の1件にしかできないことがあるのではないか、 この街道文化を引き継ぐのはうちなんじゃないかという、新しい使命を感じています」

そして最後に「ほっとできるような旅館でありたい」と、女将さんは柔らかい笑顔で話してくれました。今までもこれからも、深谷を行き交う人の心あたたまる旅館として、歴史を紡いでいくことでしょう。

旅館 きん藤

ホームページ:https://kintow.net/

住所:埼玉県深谷市本住町7-52

TEL:048-571-1341

アクセス:深谷駅から徒歩約8分

駐車場:あり

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この記事を書いた人

長尾 そら

山梨県出身、埼玉県北部在住のライター。地域にあるオンリーワンの魅力探しが大好き。心にビビッとくる地域の魅力を、最大限に活かしてお届けします。趣味はサウナ・旅行・山登り・キャンプ・ゴルフ。

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