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スポット  |    2025.04.16

子どもから大人まで、絵本が好きな人もそうでない人も。人をつなぐ場所「くわのみ書房」|千葉県習志野市

千葉県・習志野市。京成大久保駅から歩くこと10分。地元の人や大学生で賑わう大久保商店街から少し外れた住宅街に、習志野市で唯一の絵本・児童書専門店「くわのみ書房」があります。

習志野市「くわのみ書房」外観

白と赤を基調とした小さくてかわいらしい外観のお店。その扉を開けると、右手には天井までいっぱいに絵本や児童書が並びます。

コーヒーも飲めるカウンターが4席

左手側にはカウンター4席のカフェスペースもあり、コーヒーや紅茶などをいただきながら、ゆっくりとおしゃべりや絵本を楽しむこともできます。

今回は店主の那須庸仁さんに、お店や絵本に対する想いを伺いました。

お店を通じて生まれる人の繋がり

伺った日は、近所に越してきたばかりだという赤ちゃん連れのママさんや常連さんなど、次々とお客さんが訪れていました。お客さんが来るたびに、その様子を見ながら「どんな本をお探しですか?」「今日は飲み物何にされますか?」とさりげなく声をかける那須さん。その温かい雰囲気に近所の親戚の家に遊びにきたような感覚を覚えました。

習志野市「くわのみ書房」店主の那須さん

60歳で定年退職するまでは、医薬品・医療関係の出版社で記者や編集者として働いていたという那須さん。「自分の人生を自分で決められるような生き方をしてみたい」と考え、50歳ごろにお店を開こうと決意したそうです。せっかくお店を出すならば好きなことがしたいと、コーヒーも飲める本屋さんにすることに決めたそう。

その後は開店資金を貯めつつ、休みの日にはいろいろな本屋さんに足を運んで学びを深めました。定年退職後の2016年に「くわのみ書房」をオープン。お店は今年で10年目を迎えます。

ハンドドリップでコーヒーを淹れる那須さん

お店のカフェスペースでは、那須さんがハンドドリップで淹れるコーヒーのほか、紅茶やジュースも楽しむことができます。カウンターにはお菓子も並び、コーヒー・紅茶とセットでお得にいただけるので、おやつタイムにもよさそうです。

お客さんは、お子さん連れのお父さん・お母さんやおじいちゃん・おばあちゃんのほか、絵本好きの常連さんや、コーヒーを飲みながら那須さんとおしゃべりすることを楽しみにやってこられる方もいるのだとか。

実際に筆者が訪れた際も、ゆっくりとした時間や会話を楽しむお客さんの様子に、地元の方々に愛されていることが伝わってきました。

「くわのみ書房」でいただけるブレンドコーヒー

お店を続けることの面白さについて、那須さんはこう話します。

「お店は決まった時間、決まった場所に開かれ、そこに来ると店主と話もできます。そうすると自然にいろいろな人が集まってきて、この店が一つの核となり、人と人とのつながりがどんどん広がっていくのです。これはお店を出す前には考えていなかったことで、とても面白いですね」

お店で売られている手作りのカード

お店には地元の方が自費出版された本も置かれています。お店のお客様でもあるプロの作家さんが書かれ、一般の書店ではなかなか扱うことがない本も販売し、コンスタントに売れているそうです。地域に根ざした書店ならではの本との出会いも、楽しみの一つになっているようです。

本当に良いと思う絵本を。選書へのこだわりと提案することの難しさ

お店に入って右手側にある大きな本棚

お店の品揃えについて、「本当にいいなと思える本を並べられるのが、個人店のいいところですよね」と那須さんは言います。

たとえば、と言って持ってきてくれたのが、1982年に岩波書店から発売されたミヒャエル・エンデの『はてしない物語』。児童書ですが、立派な箱入りです。さらに箱から出してみると表紙は布張りで、表紙をめくると文字が2色刷りで印刷されているのです。驚く筆者に「特別感があるでしょう?」と話す那須さん。文庫版も出ていますが、この特別感を子どもたちにも味わってほしくてあえてオリジナルの本のみを置いているそうです。

「こどものとも」のバックナンバーが並ぶ本棚

お店には地元の絵本作家さんの作品も多く並んでいました。

しかし、那須さんは、実際にお客さまに絵本を提案するときに、難しさを感じることもあるといいます。

「長い間愛されてきたロングセラーの絵本には、その本ならではの魅力があると思うのですが、今のお客様が好む絵本とのギャップを感じることもあります。たとえば、昔の絵本はモノクロで描かれたものなど、一見地味な作り絵本も多いのですが、やっぱり購入する親御さんたちからすると『モノクロの絵本よりもカラーの方がよいのでは……』と思いますよね。でも実際は、モノクロの絵本でも子どもたちには喜ばれることも多いので、どう提案したらいいのかと試行錯誤しているところです」

一番嬉しいのは「子どもが喜びました!」という声

店内にある可愛らしい子供用の椅子

最後にこの仕事のやりがいについて伺うと、那須さんはこう語ってくれました。

「お勧めした絵本を買ってくださった方が、しばらくしてまたご来店して『子どもがとても喜びました』と教えてくださったとき。『やったー!』と思いますね。この瞬間が何よりも嬉しいです」

今回の取材の帰り、筆者の3歳の娘にいくつか絵本を選んでもらいました。早速家に帰って読み聞かせをすると、「もう1回読んで!」と娘は大ハマり。娘はしばらくその本ばかり何度も何度もリクエストしていました。

子ども連れの人も、絵本が好きな人も、おしゃべりが好きな人も、一歩足を踏み入れてみたらきっといつもとは違う素敵な出会いが待っているはず。ぜひ足を運んでみてください。

くわのみ書房

Instagram  https://www.instagram.com/mulberrybookstore/

住所 千葉県習志野市大久保1-8-10
TEL 047-419-3567
営業時間 11:00〜18:00
定休日 日曜日、月曜日

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この記事を書いた人

竹田 りな

宮城県出身、千葉県船橋市在住。3歳の娘を育てながらライターとして活動しています。好きなこと・ものは、娘と絵本を読むこと、読書、旅行、街歩き、コーヒー、お酒です。船橋市を中心に、魅力たっぷりな人・お店・スポットなどをご紹介していけたらと思います。

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