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地域応援ブランド  |    2024.05.01

【愛知県】株式会社 巴製作所|デザイン経営への挑戦・若き経営者の覚悟(後編)

創業76年を迎える「株式会社 巴製作所」の代表取締役社長、坂井聡佑さんへのインタビュー。

前編は、巴製作所が「デザイン経営」を取り入れた経緯や、坂井さんが受講した「デザイン経営支援プログラム」について語っていただいた。

後編では、坂井さんがプログラムを受けて感じた変化や、今後の目標について伺った。

プログラムを通して見えてきた「巴製作所が社会に提供してきた価値」と、これからの「新規事業」とはーー。

「社会に安心感を届けたい」巴製作所の価値の提供

デザイン経営支援プログラムでは、自分自身や会社についてのヒアリングが時間をかけて行われた。

その中で坂井さんは「巴製作所は社会にどのような価値を提供してきたか」と問われる。

「その場では表層的なところしか答えられなかったのですが、社内の人と話をしていく中で考えが洗練されていきました。巴製作所で製造しているレンチは、普段日の目を浴びるものではないんですけど、パンクした時に活躍するという、ある種お守りのような位置付けで、社会に価値を提供してきたんじゃないかという意見が出たんです。それを元に再定義して、巴製作所は安心感を提供する会社という位置付けにしていきたいと思いました」(坂井さん)

それは、坂井さんが社長になって改めて掲げたミッションとビジョンにも表現されている。

Mission
すべての人が安心して暮らせる世の中を実現する

Vision
人々が安心して暮らすために、”お守り”のように社会に安心感を届ける

引用元:株式会社 巴製作所 -TOMOEについて

お守りの役目を果たしてきたレンチのように、新規事業も「社会に安心感を届ける」という方向性で検討中だ。

「一つの案ですが、高齢者向けの事業を検討しています。今後少子高齢化は確実に進むので、高齢者の生活を楽にするようなツールが必要だと考えたからです。また、私の父が3年前に脳梗塞を発症し、その後も後遺症に悩まされているところを、子どもとして見てきたことも関係しています。父と同じような状況にある人達に向けて、社会をより良く生きてもらえるような取り組みをしていきたいと思いました」(坂井さん)

プログラムを終えた坂井さんが感じるのは、方向性が明確になったという手応えだ。

「プログラムを受けていなければ、将来的に何がしたいのかわからず、新規事業の軸もブレてしまっていたかもしれません。これから新規事業を進めていく中で、方針転換をする場面も出てくると思うんです。でも、ブレていいところとブレてはいけないところがある程度はっきりしたので、やりたいことや方向性を見失うことはないと思います」(坂井さん)

社名の「巴」は三つ巴からきている。「三」が表すものは諸説あるが、「商品の納入先であるお客様」「TOMOE」「車に乗るすべてのドライバー」を表し、その三者に対して価値を提供していく会社であることから名付けられたと言われている。社名の由来は、今回のプログラムを機に坂井さんが調べていく中で知ったことの1つ。

悩める中小企業の「希望の光」を目指して

坂井さんに、今の巴製作所が抱えている課題について伺った。

「近年の業績が芳しくない中で、社内で従業員に経費削減をお願いせざるを得ないこともありました。そうすると、若手の社員は会社や自分の未来に対して不安を持ちますよね。良い会社には、ワクワクするような前向きな空気感があると思うんですけど、ダメな会社はその逆だと思うんです」(坂井さん)

まずは会社の空気感を変えていきたいと話す坂井さん。

デザイン経営に取り組み始めたことで、会社の雰囲気や従業員の反応に変化が出てきたことを実感していると言う。

「今回のような新しい取り組みを進めていく中で、従業員がワクワクしてくれているのを感じるんです。先行きに関する期待感がちょっとずつ芽生えてきているのかなと思います。これからも、従業員と個別で話をする時は『今はこういうことをやっているんだよ』となるべく話して、適宜共有していきたいですね」(坂井さん)

創業当時から受け継がれてきた思いとともに、新たな道を切り拓いていくーー。

76年の歴史と伝統を背負いながら、新しいことに挑戦するプレッシャーはいかほどか。

かなりの重圧を想像するが、坂井さんの表情は明るい。

「会社のお金を使う以上、プレッシャーはもちろんあります。でも、事前に必要以上に不安になることはなくて、懸念点をその都度洗い出して対策を打てばいい。今は会社が良い方向に変わっていくことに対してワクワクしたポジティブな気持ちが大きいです」(坂井さん)

坂井さんを突き動かすのは、モノづくりに携わるサプライヤーとしての使命感だ。

「日本の経済を支えてきたモノづくりでは、中小企業を中心に苦しい状況にあります。物価上昇や人材採用難といった課題に、弊社もまさに直面しているところです。そのような中で、中小製造業が世の中に提供している価値は依然として大きい。弊社が成功事例を示すことで、同じような境遇にある中小企業に『巴製作所が成功したんだから、僕たちも頑張ろう』と思ってもらえるような、一歩踏み出すきっかけになれる会社を目指したいですね」(坂井さん)

日本の中小企業を活気づけたいーー。

そう語る坂井さんの言葉には、強い覚悟が感じられた。

会社情報

株式会社 巴製作所(愛知県丹羽郡大口町)

1948年創業。トヨタ自動車の一次サプライヤーとして自動車用搭載工具と特殊整備用工具の製造を行う。鍛造、切削、プレスなどの多様な技術で、顧客のニーズに迅速に対応し、信頼される製品を提供している。

住所 愛知県丹羽郡大口町秋田3丁目215−1
電話 0587-95-2196
WEB https://tomoe-ss.co.jp/

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この記事の地域応援ブランド企業

株式会社巴製作所

株式会社巴製作所(愛知県丹羽郡大口町)は、ハブナットレンチの専門メーカーとして長年の実績を持つ。しかし需要減少に直面し、同社は「デザイン経営支援プログラム」に参加。そこで自社のアイデンティティと強みを再確認し、伝統的なモノ作りの価値観を大切にしつつ、新規分野に果敢に挑戦することの重要性を学びました。自社の本質を見つめ直すことで、未来に向けた新事業の芽を見出した同社は、伝統と革新を両立させた新たな方向性を模索し始めています。

この記事を書いた人

Takano

フリーライター。元WEBエンジニア。社会福祉士の資格をもつ。SEOライターを経て、現在は主に取材記事を執筆。文章を通して、魅力あふれる企業・人・お店・自然・食べ物・イベントを紹介。旅先で植物園、美術館、博物館を訪れるのが好き。 感情が伝わる文章を目指しています。ぜひ、PRのお手伝いをさせてください!

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