
田んぼと緑の山に囲まれた福井県敦賀市に『福地ガラス工房』があります。ここは、ガラス作家の福地眞一さんと明子さん夫妻が営むアトリエです。
『福地ガラス工房』では、眞一さんと明子さんが日々作品を作りながら、吹きガラス体験教室を運営しています。
今回は『福地ガラス工房』の福地眞一さんと明子さんに、これまでの経緯や業務内容、吹きガラス体験教室などについて伺いました。
夫婦それぞれが別々のガラス工房で修業

ガラス制作は二人がペアとなり、息を合わせなければ良い作品ができないといいます。寺地はるな(著)『ガラスの海を渡る舟』には、兄と妹の息が合わずに四苦八苦する様子が描かれていました。
兄妹でも難しい作業を福地夫妻は言葉も交わさずに黙々とこなします。その姿はまさに阿吽の呼吸。息ぴったりの福地夫妻ですが、修業期間から一緒だったわけではありません。
眞一さんと明子さんは別々のガラス工房で修業を積み、ガラスを通じで知り合ったそうです。
眞一さんは京都のガラス工房で修業

眞一さんがガラス作家を志したのは、20代のとき。石川県の工房で受講した吹きガラスの講座がきっかけでした。透き通るガラスに魅了された眞一さんは、東京ガラス工芸研究所で本格的に吹きガラスを学びます。
その後、京都晴耕社ガラス工房での修行を経て、地元の敦賀で『福地ガラス工房』を設立しました。眞一さんは暮らしになじむシンプルなガラス作品を追求し続けています。
ガラス作りの体験で興味を抱きアシスタントへ

妻の明子さんは美大卒業後に敦賀市内の遊具製作会社で商品開発やイラストの作成をしていました。ガラスと出会ったのは、明子さんが社会人として働き始めた二十歳の頃。滋賀県彦根市のリサイクルガラス工房でのガラス作り体験だったといいます。
「彦根の駅裏に小さなガラス工房があったので、休日を利用して吹きガラスを習っていました。溶けたガラスの魅力に取り憑かれ、『これを仕事にしたい』と思ったのがきっかけです。思い切って会社を辞め、能登島ガラス工房でアシスタントとして働くことにしました」
その後、岐阜県の工房での修業を経て敦賀市に戻ります。当時は敦賀市内にガラス工房があることを知らなかったという明子さん。『福地ガラス工房』を営んでいた先輩作家の眞一さんと出会い、2000年に結婚しました。
現在は夫の眞一さんとともに、日々試行錯誤しながらも楽しく工房を営んでいます。

明子さんは器作りだけでなく、バーナーを使用したアクセサリーや花の制作を手掛ける作家としても活躍中です。
3つの窯は眞一さんの手作り

創業にあたり、眞一さんの最初の仕事は窯の制作だったといいます。眞一さんはこれまでに習得したスキルをもとに自分自身で溶解炉、再加熱炉、徐冷炉の3つの窯を作りました。
もっとも難しいのは温度管理です。年に一度の坩堝(るつぼ)交換のとき以外、溶解炉の火を絶やすことはありません。温度変化が激しくなる強風の日には、煙突のダンパーを手動調整して約1300℃の高温を保ち続けています。
明子さんはアナログだと笑いますが、アナログな手法で約30年も火を絶やさないことは、なかなかできることではありません。
原料へのこだわり

眞一さんのこだわりはガラスの透明度です。そのため原料にもこだわりがありました。一般的に、原料であるソーダガラスは専門業者から購入しますが、眞一さんはソーダガラスの調合をすべて自分で行っています。
「夫の眞一はこだわりが強いので原料を数種類調合して、より透明度の高いガラスの制作を追求しています」
そのこだわりは自身の作品表現だけに止まりません。
ガラスの美しさを体験してもらいたい

「ガラスの美しさや透明感、質感などの魅力を多くの人に感じてもらいたい」
福地夫妻は炉の温度に負けないくらいの熱い思いを語ってくれました。福地ガラス工房では、自身の作品を製造販売するだけでなく、誰でもガラスの魅力に触れられる「吹きガラス体験教室」を開催しています。
吹きガラス体験教室の詳細は、下記の体験記事をご覧ください。
未就学児でも楽しめる「吹きガラス体験」でモノと思い出を|福井県敦賀市『福地ガラス工房』
コロナ禍以降、外食産業以外の施設でも感染症対策を要求されるようになりました。福地ガラス工房でも多分に漏れず、マウスピースを装着することで感染症対策を行っています。

マウスピースがあれば、潔癖症の人も安心して楽しめるのではないでしょうか。
福地ガラス工房の作品はどこで購入できる?

福地ガラス工房では作品の展示販売を行っていますが、ほとんどの注文はインターネットでの通信販売です。また、クラフトイベントやワークショップにも参加しているとのこと。敦賀市内には福地夫妻が制作した器を使用している飲食店もあります。
作品販売は主にインターネット
主に作品を販売しているのは、大阪の『工芸店ようび』です。『工芸店ようび』では店舗販売だけでなく、色々なお店に卸したり、楽天市場『工芸店ようび』で販売したりしているとのこと。
また、敦賀市内の『干物屋㐂(よろこび)』でも作品を販売しています。敦賀市近隣の方は、こちらがおすすめです。
クラフトイベントや個展
毎年7月、8月には、三重県熊野市の『花燿館』で個展を開催しています。インターネット上には情報はほとんどありませんが、近くの方はぜひ足を運んでみてください。
また、市内外のクラフトイベントに参加したり、ワークショップ『工房祭』を開催したりしています。
「『工房祭』は手作りの楽しさを感じてもらいたくて工房内で実施しているイベントです。吹きガラスだけでなく、さまざまな作家によるワークショップを開催しています」
明子さんはお客さんの楽しむ姿を思い出すように説明してくださいました。『工房祭』は8組ほどの作家が参加する年に一度のイベントです。作品の販売だけでなく、体験もできるので恒例の人気イベントとなっています。2025年は11月29日(土)に開催予定です。
敦賀市内の飲食店で器を楽しむ
敦賀市内には『福地ガラス工房』の器を使用しているカフェや和食店があります。
食事とともに器も楽しんでみてはいかがでしょうか。
福地ガラス工房の詳細情報

- 営業時間:10:00〜17:00(体験コース)
- 定休日:不定休
- Instagram:福地ガラス工房
- 料金:3,850円~
福地ガラス工房の吹きガラス体験への予約は「じゃらん」がおすすめです。
>> じゃらん「福地ガラス工房」
アクセス
- 住所:福井県敦賀市金山24-9-1
- 電話:0770-22-9106