
「モノより、思い出」
これは20年以上前に放送された自動車のCMで使われたキャッチコピーです。CMが流れたのは、モノの所有に価値を感じる時代から経験に価値を見出す時代への転換期でした。
今回体験したのは吹きガラス。何かの体験を通じて新たな発見をしたいと思い、福井県敦賀市の『福地ガラス工房』にて、夫婦で「グラス」と「一輪挿し」を制作してきました。
『福地ガラス工房』は福地眞一さん、明子さん夫妻が経営するガラス工房です。自分たちで作品を制作する傍ら、吹きガラス教室を運営しています。
約90%の体験者がグラスを制作

「今日は何を作りますか?」
何の下調べもせずに申し込んだため何を作ればよいのかわからず困っていると、明子さんから助け船が出されました。
「参加者の約90%の方は、グラスを制作されます。グラス以外にもお皿や一輪挿し、風鈴なども作れるので、アイデアを仰ってください」
いくつかの作例を見て、筆者は少し大きめのグラスを、妻は一輪挿しを制作することにしました。作業は一人ずつとなるため、筆者が先に制作します。
「ご家族で参加される場合は、ほとんどの場合がお父さんから作られますね。後になってくると少しずつ要領がわかるので、『最初はお父さん行け!』みたいな感じです」
何気ない会話も楽しみながら、吹きガラス体験が始まりました。
未就学児でも安心して制作できる

いくつかの作例を見ると、かなり凝った色使いや複雑な模様の作品が多く、素人にもできるのかとガラスよりも先に不安ばかりが膨らみます。
「大丈夫です。未就学児でもできますので」
不安を気遣い、明子さんがにこやかに答えてくれました。こども園などの行事で工房を利用されることもあり、そこで未就学児が大人顔負けの作品を制作することもあるそうです。

さっそく簡単な説明を受け、制作へと進みます。一方で、説明を受けた時点では何をどうすればよいのかさっぱりわかりません。しかし、心配無用です。福地夫妻が一人ずつ作業工程ごとに指導し、作業も手伝ってもらえました。
未就学児が素晴らしい作品を作るのも納得です。
吹きガラスはスピードが命

吹きガラス制作では、ガラスを炉で1300℃に熱します。熱したガラスは外気に触れるとすぐに冷めて硬化してしまうため、スピードが命です。ガラスが冷える前に工程を終えなければなりません。
次の工程へと移る前には、眞一さんがガラスを熱し、明子さんが次の工程の準備と説明(逆の場合もあります)をします。最初の説明とは異なり、具体的な道具の使い方や工程の内容を説明していただけるため安心です。
透明度にこだわった原料を使用

福地ガラス工房では、透明度の高いガラスを目指しているそうです。坩堝(るつぼ)に溶けている透明なガラスは、珪砂や石灰など10数種類の原料を混ぜて溶かしています。
「主人が透明度にこだわっているので、すべて自分で調合して作っています」と明子さん。透き通ったガラスの美しさを感じてもらいたいと言います。
たった30分で完成度の高い作品に!

体験のグラスや一輪挿しは一人あたり約30分で完成します。たった30分ですが、実際に出来上がった作品を見ると、満足度は高いでしょう。時間に制約のある場合は、マンツーマンで二人同時の進行も可能です。
「5分くらいでできるので、記念にガラス玉を作ってみませんか?」
明子さんから制作を勧められたのは、ペーパーウェイトです。ペーパーウェイトのみの体験は2000円ですが、吹きガラス体験を申し込むと1000円で制作できます。ただし、「5分でできる」はプロ基準のようで、実際は説明や会話を楽しみながらの作業だっために15分ほどかかりました。
翌日まで冷やして完成

完成したグラスや一輪挿しなどは、徐冷炉に入れて約1日かけて徐々に冷やします。これは、急激な温度変化により、ガラスが割れてしまうのを避けるためです。仕上がりは翌日となるため、完成した作品がどのような色になるのか想像できません。
徐冷炉から出された作品についてはInstagramへの掲載も可能です。作品の出来栄えを確認し、「思っていたよりきれい」となるのか「もう少し違う色を使えばよかった」となるのか……
ぜひその体験も楽しんでください。
作品を受け取る際には、発送依頼をするか翌日以降に自分で受け取りに行く必要があります。吹きガラス体験をした日にそのまま持って帰ることができないので、その点だけ注意してください。
福地ガラス工房の詳細情報

- 営業時間:10:00〜17:00(体験コース)
- 定休日:不定休
- Instagram:福地ガラス工房
- 料金:3,850円~(ペーパーウェイトのみは2,000円)
福地ガラス工房の吹きガラス体験への予約は「じゃらん」がおすすめです。
>> じゃらん「福地ガラス工房」

アクセス
- 住所:福井県敦賀市金山24-9-1
- 電話:0770-22-9106
編集後記
今回は銀婚式の記念に何か残したいと考え、夫婦で福地ガラス工房の吹きガラス体験に参加することにしました。
筆者は2000(平成12)年に結婚したのですが、福地夫妻も同じく2000年に結婚したとのこと。今年が「銀婚式」だとは気がついていなかったようですが、職場の同期入社のような一体感があり、楽しいひとときを過ごせました。
『福地ガラス工房』での吹きガラス体験は、「モノ」と「思い出」の両方を得られる体験です。『福地ガラス工房』についての詳細は、以下の記事をご覧ください。