Mediall(メディアール)

オンリーワン・ナンバーワンをキュレーションする地方創生メディア

もの・こと  |    2024.07.17

「OGUNO」書く喜びをすべての人に届けたいー大阪の老舗ノートメーカー|大栗紙工株式会社【後編】

前編では、大栗紙工株式会社3代目の妻で取締役の大栗佳代子さんに、伝統の技術を守りながら発達障がい当事者の声を取り入れた「mahora(まほら)ノート」を生み出した背景をお伺いしました。

▼前編の記事はこちら

14万冊販売。目に優しい『mahora(まほら)ノート』誕生の背景に迫る|大栗紙工株式会社【前編】 | Mediall(メディアール)

このmahoraノート、実はノートの形にとどまらず、さまざまな展開をしています。そこにはお客さまの声を聞き、「書く喜びを全ての人に届けたい」という大栗さんの並々ならぬ想いがあったからでした。

徐々にバリエーションが増えたmahoraシリーズ

mahoraノートは、2020年2月にレモンとラベンダーカラーの発売以降、クラウドファンディングを経て、1年後にはミントカラーの追加やサイズ展開の拡大が実現しました。

左からセミB5、B6、A6、B7。「メモをとるときにちょうどいいサイズがあったら……」とお客さまからの要望でサイズ展開が広がったそう。

さらに、子ども向けの「まほらゆったりつかう学習帳」も誕生しました。

「主に学習障害(LD)の方にとっては、脳の機能障害のために、ノートの中にナンバーが入ったり、マス目がはっきりしているとしんどくなって、学習への意欲もそがれてしまう……そんな親御さんからのお声を反映して作成しました」と大栗さん。

受け取る情報が極力少なくなるように配慮し、ノートの中身はシンプルに設計しています。

「まほらゆったりつかう学習帳(かんじ)」通常よりも一マスの幅を広くとり、よみがなを書くところが幅広の網掛けです。方眼紙のような十字線のない「バランス中心点」が特徴のノート。

同社の取り組みは各所で評価され、2021年にはmahoraノートは「大阪製ブランドベストプロダクト」認定や「日本文具大賞デザイン部門優秀賞」「GOOD DESIGN AWARD」など数々の賞を受賞しました。

発達障がいの方々だけでなく、一般の方にも徐々に認知されるようになり、今ではmahoraシリーズは14万冊も販売されるヒット商品になりました。「このノートでないと書けない」とリピーターの方も増え始め、ノートにとどまらず、シートタイプなど使う用途に合わせてバリエーションは広がっています。

シートタイプのmahora。「子どもたちがノートを忘れたときに1枚ずつ渡せるものが欲しい」と発達障がいの生徒が通う通級学級の先生と生徒の声から生まれました。

1冊のノートが別の誰かのためになる「ペイフォワード」で社会貢献

大栗さんは、mahoraノートを発達障がいの当事者のみなさんに手に取って使っていただけるようにある仕組みを考えました。それが「ペイ・フォワードまほらノートプロジェクト」です。

ペイフォワードまほらノート(全3種類) イラストレーターYOSSANさんが描いたイラストを箔押ししています。

「今までは、発達障がいの方々に届けたい一心で、できる限りシンプルなデザインを目指していました。しかしながら、ノート自体は、上質な紙質で書きやすいと一般ユーザーにも一定数購入されています。

かわいい表紙のノートであれば、もっと手に取っていただけるかもしれない。本来使っていただきたいと願っていた発達障がい者の方々へ『寄付』の形で応援できるのではないかと考えたのです」

大栗さんは、表紙に箔押しされたペイフォワードまほらノートを1冊購入すれば、2冊の通常版のmahoraノートを発達障がいの2人にプレゼントする仕組みを生み出しました。

この仕組みを聞いて、想いに賛同してくれた方がいました。

「ノートは1冊990円(税込)で、1,000円以下で気軽な形でお気持ちをいただいて、障がいのある方々にお届けできたらいいなと考えていたところ、クラブハウスで話してくださった方がいたんです。

話を聞いたイラストレーターのYOSSANさんが『イラスト描きます!』と手を上げてくれて……描いてくれた絵がどれもかわいかったので、全部の絵を採用して表紙に箔押ししています」

プロジェクトのスタート地点から、関わったみんなが笑顔になる。応援の循環が生まれる素晴らしい取り組み。

これまで特別支援学校、支援学級、放課後デイサービス、就労支援施設など4千2百冊近くのノートがさまざまな場所に寄付されてきました。

人を想うOGUNOの未来。「書く喜びをすべての人に届けたい」

これまでの「ノートはこういうものだ」という既成概念をくつがえし、たった一人のお客さまのご意見やご要望にも耳を傾けてきた大栗紙工株式会社。

柔軟なアイデアで、世の中に「あったらいいな、うれしいな」と思える紙製品を作り続けています。

大栗さんにお話を伺ってきて、1冊のノートから社会貢献の仕組みができたり、社会課題を考えるきっかけにもなっていることが分かりました。

廃棄するお米からできた紙「kome-kami」を使用したSustainable Pad

最後に大栗さんにこれからについて伺いました。

「ノートは『書く』喜びを分かち合える紙の束です。ノートの型に囚われず、書く喜びをすべての人に届けたい。これからも書く人のことを想い続けていきたいと考えています。必要としてくださる方々の声を聞いて、今後も使う人が笑顔になれるようないろんなシリーズの紙製品をOGUNOブランドとして製造していきます」

大栗紙工株式会社のオリジナルブランド「OGUNO」は、ノートの枠を超えて進化し続けています。一人ひとりのニーズに耳を傾け、社会貢献の視点も取り入れながら、書く喜びを追求する姿勢が、これからの文具業界に新たな風を吹き込んでいくことでしょう。

▼ノートの購入はこちらから

OGUNOブランドサイト

大栗紙工株式会社

住所:大阪府大阪市生野区巽北3丁目15‐7

公式サイト:大栗紙工株式会社

ブランドサイト:OGUNO(オグノ)

X:https://x.com/oguno_notebook

Instagram:https://www.instagram.com/oguno.notebook/

記事をシェアする

この記事を書いた人

澤 優歌

兵庫県神戸市在住の取材ライター|神戸市西区・北区・明石・加古川近郊地域の人・物・コトの価値魅力を中心にお届けします。趣味は映画鑑賞・ドライブ・阪神の応援。3人姉妹子育て中。

関連記事