【前編】でご紹介した、南アルプス北部に位置する山梨県北杜市で、崩れた登山道の保全活動の他、後世へ山を守り継ぐ仕組みづくりをしている「一般社団法人 北杜山守隊」。
北杜山守隊の具体的な活動内容や今後の展望とは ⸺。
【後編】では、北杜山守隊が目指す未来をさらに深堀りしてお届けします。
「このままでは手遅れに」南アルプスの危機
そもそも、山はどのような過程で崩れていくのでしょうか。
登山道はもともと地域の人が生活のために利用していた自然路で、地域の人たちによって維持・管理されていました。
しかし、生活様式の変化で生活としての山ではなく、レジャーとしての山へと変わっていき、登山ブームによって登山者が急激に増え始めました。
人の踏圧により土壌が水分を吸収しなくなったことで、登山道上を水が流れ、土壌を削り、侵食が広がっていったのです。
さらに地域の高齢化や山岳会の消滅により、維持・管理する人も減少し、崩れて放置された登山道が天災でますます荒廃していきました。
現在は利用に対して保全が全く追いついていない状態です。
山のレジャーは多様化していて、今後も利用量は増加することが見込まれます。
早い段階で、利用よりも保全が上回る状態にしていかないと、手遅れになりかねません。
目指すのは「共助」の体制
とはいえ、北杜山守隊が目指しているのはただ保全活動をするだけではなく、保全活動を「維持・継続」するための仕組みづくりをし、実際に運営していくことです。
継続のために課題となる「財源の確保」と「人手不足」を解消していく必要があります。
そのために、北杜山守隊は登山道保全ワークショップを軸とした自主事業の展開、インタープリターや技術者の人財育成を重点課題に捉えた取り組みを行っています。
高橋さんは「北杜山守隊は、持続可能な保全活動のために不可欠な『財源』と『人財』に関して、北杜市および北杜山守隊会員の皆さまやワークショップに参加してくださる皆さまに支えられています。私たちの活動は、自助だけではもちろんできませんし、公助があってもまだ不足していますが、共助によって支えられることで、安定的かつ持続可能な活動ができる希望が見えてきています」と話します。
北杜山守隊のビジョンである「みんなで守る、山の道」の実現は「共助」の仕組みに支えられていますが、その仕組み化は決して簡単なことではなく、地道な努力が1つずつ実を結ぶ活動です。
北杜山守隊のみならず、山の保全活動をする団体は共通して「技術者の育成」と「活動維持の財源確保」が活動を継続するための課題とのこと。
「課題解決のために、インタープリターや技術者の研修、他の保全活動団体との交流、また寄付の呼びかけなどを行い、体制を強化していきたいと思っています」と高橋さんは今後の展望も語ります。
夢は北杜市に魅力ある仕事を創り出すこと
南アルプスの景観や生態系を守るべきなのは、登山者だけでなく、自然の恩恵を受ける私たち一人ひとりが後世へ伝えていくべき使命です。
手遅れになりかねない山崩れの現状をより多くの人々に知ってもらうために、北杜山守隊をはじめとする保全活動団体の皆さんが都市部で講演をするなどして、伝播活動を続けています。
「地域の魅力を守りたい」と移住した覚悟と原動力が、地域の皆さんだけでなく、都市部の皆さんの心にも訴えかけます。
そんな地方創生のカタチも、地域の魅力を高めていく一手となることでしょう。
長年の会社員生活から一転、南アルプスを守る使命をもって移住した高橋さん。
高橋さんは北杜市観光課所属の地域おこし協力隊ですが、将来的には北杜山守隊が自らの財源で事務局スタッフを採用できる財源を確保することを目標としているそうです。
「北杜市に魅力を感じる人は多くても、移住を決断するためには魅力ある仕事や住環境がないと難しい。北杜市に魅力ある仕事を生み出すことができたら」と高橋さん。
「今の選択に1ミリの悔いもありません」と晴れやかに言う高橋さんの清々しい笑顔を見ていると、南アルプスの明るい未来を確信せざるを得ません。
北杜山守隊の情報
名称:一般社団法人 北杜山守隊(ほくとやまもりたい)
住所:山梨県北杜市武川町山高3567-212 アグリーブルむかわ
連絡先:info@hokuto-yamamoritai.org
公式サイト:https://hokuto-yamamoritai.org/
イベント開催について:https://hokuto-yamamoritai.org/news/1701/
Instagram:https://www.instagram.com/hokuto.yamamoritai/
facebook:https://www.facebook.com/hokuto.yamamoritai
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