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もの・こと  |    2024.08.31

知的障がい者ソフトボール東京都代表チームは優勝を目指す

知的障がい者のソフトボール大会「ハンズホールディングスCUP 2024東日本大会」が、2024年9月15日(日)と16日(月・祝)に宮城県の楽天イーグルス利府球場ほか宮城県内で開催されます。

東日本から8チームが参加し、熱戦を繰り広げる本大会。今回は、本大会の優勝を目指す東京都代表チームを取材し、ソフトボールと大会への想いを訊きました。

全国優勝経験を持つ歴史あるチーム

東京都代表チームは1996年から練習会を開始し、今年で28年目を迎える歴史あるチームです。監督の井上一仁さんを中心に、岡本雄一さんと吉田久明さんがコーチとして選手たちを指導。今は20代が中心の若いチームですが、過去に全国優勝経験を持つ強豪です。

選手たちの多くは、特別支援学校などで教員を務める指導者陣の教え子たちで、この日も、普段から練習を行っているという東京都あきる野市にある小峰運動公園には8名の選手が集まり、猛暑日の中で13時から16時まで汗を流しました。

充実しているわけではない環境

練習は準備運動から始まり、キャッチボールで身体を慣らしていきます。大半の選手は平日に仕事をしているため、練習は貴重な時間です。限られた時間の中で、いかに技術向上できるか。練習中に何度も指導者陣にアドバイスを聞きに来る選手たちが印象的でした。

吉田コーチは「学生時代からソフトボールを続けてきた選手たちもいるなかで、彼らのソフトボール人生がそこで終わってしまうのは本当にもったいない」という想いで、東京都代表チームにスカウトした選手も数多くいるようです。

現状、知的障がい者がソフトボールを続けられる環境は十分であるとは言えません。チーム数も少ないため、全国優勝経験のある東京都代表チームにとっては、レベルの近い相手を見つけることも簡単ではありません。

また、小峰運動公園も決してアクセスが良い立地にあるとは言えません。選手の多くは電車とバスを使って練習にやって来ているほか、練習道具も実費で用意し、かつグラウンドまで持ってくる必要があります。

また、指導者陣もボランティア。基本的に月2回で行われている練習も、大会前は毎週あるため、指導者にとっても負担がないわけではありません。それでも、東京都代表チームが練習に励む理由の一端を外野練習から知ることができました。

「彼らは可能性の塊です」

外野練習では、フライボールを捕る能力や試合を想定した連携などが強化されますが、ここで驚いたのは選手たちが持つ運動能力の高さです。ベンチから見ていて、届かないと思うボールに走って追いついたり、ジャンプしてキャッチをするシーンが何度もありました。吉田コーチからも「すごいでしょ、あれ普通は届かないですよ」と選手たちを誇りに思っている様子が感じられます。

吉田コーチは続けて「彼らは可能性の塊です。僕は野球経験者ですが、彼らのアスリート能力には驚かされますし、だからこそ、どこまで上手になるのか気になるんです」と語り、それが指導者を続けていることのモチベーションにもなっていると明かしてくれました。

また選手の一人からは「監督とコーチが野球やソフトボールについて詳しいので助かります。上手くなりたいと思ったときに、とても良いアドバイスをくれる」といった声も聞かれ、東京都代表チームはチーム全員で高みを目指していると伝わります。

選手たちの根本にあるのは「楽しい」という感情です。学生時代はサッカー部に所属していたという選手からは「吉田コーチに誘っていただき、ソフトボールを始めました。ここには一緒に頑張る仲間もいて、ソフトボールが本当に楽しいです」と笑顔で語ります。選手たちにとって、ソフトボールは運動を楽しめる貴重な場所であるだけでなく、日々の仕事を頑張る理由にもなっています。

難しさもある

しかしその一方で、教えるうえでの苦労があることも事実です。コーチ陣は「気持ちのコントロールが課題」と挙げて、選手たちのモチベーションを維持するのに難しさを感じることがあると話します。

「ときどき、気持ちが荒れてしまう方や高ぶりすぎてしまう方もいます。そして一番は気持ちの切り替えの難しさですね。プレーが上手くいかないと気持ちが極端に下がってしまって、立ち直ることに時間を要することもあります」と吉田コーチは話しました。

それでも、指導者陣は選手たちに対して、時折厳しく接します。吉田コーチにその訳を訊きました。

「私たちは知的障がい者のチームではありますが、東京都の代表チームです。だから選手たちには、その自覚を持ってほしいと言っています。もちろん、練習は楽しくやりますし、試合も本気でやります。だけど、選手たちには私生活が第一だと伝えています。なぜなら、私たちは家族や職場の人に支えてもらってソフトボールができているので、そこを怠るべきではないと思っているからです」

選手たちは挨拶や準備、片付けを疎かにすることはなく、東京都の代表だからこそ、それらを積極的に行います。選手の一人が筆者に塩分補給用のキャンディーを渡し「暑いので、食べてください」と気遣ってくれました。選手たちが持つ自主性こそが、東京都代表チームが強豪たる理由だと感じます。

このスポーツを多くの人に観てほしい

最後にバッティング練習が行われました。バッターボックスからピッチャーマウンドまでの距離はおよそ13m。岡本コーチが専用の機械を使ってボールを送球し、選手たちの指導に当たります。選手たちは簡単そうにボールを打ち返していきますが、体感速度は時速130〜140kmにもなるそうです。その速さを体感したいと思い、筆者もバッティングを体験させてもらいました。

筆者は学生時代に運動部だったこともあり、それなりに自信を持っていたのですが、結果は三振。バットにボールを当てるだけで精一杯でした。吉田コーチは「当てるだけでもすごいですよ」と言ってくださり、続けて「彼らはそれを当たり前のようにやってのける。近年では、障がい者ソフトボールのレベルも上がっていて、チェンジアップやライズといった球種を使ってくるピッチャーもいます。実際に観に来てもらうことで、このスポーツのすごさがわかると思います」と語り、知的障がい者ソフトボールの面白さを教えてくれました。

「ハンズホールディングスCUP 2024東日本大会」について、キャプテンの石橋尚人さんは「目標はもちろん優勝です」と意気込みます。東京都代表チームは難しい環境に置かれながらも、純粋にソフトボールを楽しみ、技術向上に努めるアスリート集団です。石橋さんは「自分たちがソフトボールをできているのは、指導者の方々と周囲のサポートしてくれる方々のおかげです。応援してくださる皆様のためにも、大会で頑張りたいです」と、大会を感謝を伝える場にしたいと話してくれました。

大会に向けて、選手たちは練習のギアを上げていきます。東京都代表チームの今後の活躍に目が離せません。

クラウドファンディングのお知らせ

8月15日より支援スタート!「希望のバットを振れ」知的障がい者ソフトボール東日本大会を応援してください。日本知的障がい者ソフトボール連盟が立ち上げたクラウドファンディング「希望のバットを振れ!」は、知的障がい者スポーツの未来を切り拓く重要な一歩です。
9月に宮城県で開催される「ハンズホールディングスCUP 2024東日本大会」は、選手たちに自己実現と希望をもたらす貴重な機会。この大会を通じて、知的障がい者スポーツの魅力を広く発信し、社会の理解と支援を促進することを目指しています。

このクラウドファンディングは、単なる大会運営支援にとどまりません。知的障がい者の余暇活動の充実、指導者への支援、そして将来的には西日本大会や全国大会の実現まで視野に入れた壮大なプロジェクトです。皆様のご支援が、知的障がい者スポーツの新たな章を開く力となります。このプロジェクトにご注目いただき、共に知的障がい者スポーツの未来を創造しませんか?あなたの支援が、選手たちの希望の光となるのです。

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ハンズホールディングスCUP 2024東日本大会

「ハンズホールディングスCUP 2024東日本大会」は、共生社会の形成と知的障がい者スポーツの活性化を目指す大会です。日本知的障がい者ソフトボール連盟主催のもと、ハンズホールディングスグループが主管し、8つの企業・団体の協賛を得て開催されます。東日本各都道府県から7チーム約140名の選手が参加し、熱戦を繰り広げます。障がい者スポーツの普及と理解促進に貢献する重要な大会となります。 なお、本大会のクラウドファンディング「希望のバットを振れ!知的障がい者ソフトボール東日本大会を応援してください!」を実施しております。皆様のご支援をお待ちしております。

この記事を書いた人

浅野凜太郎

2001年生まれのフリーライター/千葉市を中心に活動中/カメラ(SONYα6700)/動画編集/サッカー、バイク、音楽、映画、本、カルチャー、サーフィン、、海外旅行、地域創生/大学時代は焼き栗を売り歩いていました。よろしくお願いします。

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