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もの・こと  |    2024.12.18

第41回全国緑化都市かわさきフェア:木々との会話、街と人の暮らし。樹木医インタビュー【後編】

樹木医と聞いて、一番最初に思い浮かべたのは「木のお医者さん」ということでした。

しかし今回、ガイドツアーに参加してその仕事内容は多岐に渡ることが分かりました。

単に「木の健康状態をチェックする」だけでなく、周囲の環境との関係も考慮しながら「診断」を行うことが求められます。

※樹木医の資格を取得するには、造園や園芸の実務経験が5年以上あるか、樹木医補の認定を受けてから1年以上の実務経験があることが必要です。樹木医補の認定は東京農業大学や日本大学などで取得することが出来ます。尚、大学院で林学、農学、造園学、園芸学などを学び、卒業した場合はそれが実務経験となります。

前編はこちら

第41回全国都市緑化かわさきフェア前編|生田緑地で樹木医体験

大切なことの一つは、未然に倒木を防ぐこと

診断で大切なことは倒木の可能性のある木を見つけ、診断。速やかに対応することです。

もし倒木してしまったら、けが人が出るなどの被害が起きるためです。

樹木医の仕事というのは、目の前の木の調査、診断をするだけでなく、その先を見据えて動くことも必要なのです。

「事故を防ぐことで樹木を悪者にしない社会を作ることが大切だと思っています」

樹木も人も幸せになる社会は、自然との共存、つまり現代の私達に課せられた大きな問題です。それに果敢に挑むのが樹木医と言ってもいいでしょう。

樹木医の多くは別の仕事を持っている

現在、樹木医をメインにしている人は少数で、樹木医の資格を本業にいかしている人が多いのが現状ですが、全国に事務局があるので互いに連絡を取り合い、情報交換も活発に行われています。

「こういう虫が発生しているけど、そっちではどう?とか、木だけでなく自分が知らなかった虫やその他の情報交換ができるのも楽しいですね」

また、学会や勉強会も頻繁に行われるので知識がアップデートされ、それをまたアウトプットしていくというのも大切な仕事です。

いつも現場にいるわけではない、事務作業も大切な仕事

事務所で調査用紙に木の状態を詳しくレポートするのも樹木医の重要な仕事といいます。

「お客様にお渡しする木の診断書、いわゆるカルテですね。一本一本、丁寧に診断して、樹木の状態をお客様に分かりやすく書く。その他、ここには枯れた木が何本あるか、といったデータも入力していきます」

子ども達への影響

樹木は土壌環境や、キノコなどの菌類など、様々な要素と複雑に関わり合って生きています。樹木医はこれらの要素を総合的に診断することで、樹木の健康状態を判断します。子供たちは、樹木医の仕事を通して、自然界の複雑な関係性や、生態系のバランスについて学ぶことができます。

樹木医は街の安全を守るスーパーヒーロ

「倒木の恐れがある木を報告し、切ってもらうことで人間への被害を未然に防げた時に『町を守った』という気持ちになります。やりがいですね」

照れたような表情はとても誇らしげで、「使命感」という言葉を思い浮かべました。

前述したとおり、樹木医はあくまでも「資格」です。

しかし「木を守りたいから」という熱意で難しい試験を突破し、長い実務経験を経て、樹木と関わる仕事に携わる人が全国にいます。

「私がこの町を救った」ーー。

そんな使命感を持ち、達成感を味わえる「樹木医」という仕事。四季を通じて人々の生活に安らぎを与えてくれる木々を守りながら、事故を未然に防ぐこの人達は、私達の暮らしと密接にかかわる「スーパーヒーロー」なのです。

編集後記

今回のインタビューには4人の樹木医の方が応じてくださいました。

その中で皆さんが何度か口にするひとつの共通語がありました。それは私の質問に対して「一概には言えない」という返事でした。

私は記事を書いているうちにこの言葉を何度も思い出し、「樹々も人間と同じように、一概には言えない事情や個性があるのだ」と思いました。


それに対応している樹木医と言う仕事はもしかしたら「樹木の育ての親であり、教師」のような役割も果たしているのかもしれない、そんなことを感じた学びの多い取材でした。

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この記事を書いた人

栗秋 美穂

はじめまして「多様な学びと生き方」をさまざまな視点から伝えるライタ―栗秋美穂です。 東京在住ですが、いろんな場所の記事を書きます。 映画記事も書いてます。 得意分野はイベントレポ、人物インタビュー、エッセイ。 2024年は毎日農業記録賞を始め、3つのエッセイで賞を頂きました。 趣味は草木染。小5男児の母です。

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