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もの・こと  |    2024.11.29

前編:遠い国にいる「そのこ」に届け!希望あふれるチョコレート「アニダソ」

2024年11月13日、日本を代表する現代詩人、谷川俊太郎氏がお亡くなりになりました。92歳でした。

谷川氏は作詞や翻訳を手掛けるだけでなく、晩年は朗読もしておられました。

そしてNPO団体などからの依頼にも応じ、詩を贈っていました。「NPO法人 ACE」も谷川氏から「そのこ」という詩をいただいた団体の一つです。

ACE(エース)は、「世界の力を解き放つ -子どもたちに自由の力を。すべての人に変革の力を-」ということをパーパス(団体の存在意義)に掲げ、子どもたちの自由と尊厳が輝く、可能性に満ちた世界を目指すNPO法人です。1997年に学生5人で設立されました。

八丁味噌とカカオの奇跡の出会い!「アニダソ」で繋がるガーナと日本の未来

ACEが活動25周年を記念して作ったチョコレートが「アニダソ」です。ガーナのチュイ語で「希望」という意味です。ACEはなぜ記念としてチョコレートを作ったのでしょう。

チョコレートの原料カカオを生産している西アフリカの国では、子どもが教育を受けられずに危険な労働に従事する児童労働が問題になっており、ACEは2009年からガーナでプロジェクトを続けてきました。

団体設立25周年という節目に、ACEの支援で児童労働をなくす仕組みを取り入れた地域で生産されたカカオを使ったチョコレートを作る企画を立ち上げたのです。しかしACE単独でチョコレートは作れません。そこで力を貸してくれたのがクラウン製菓です。

クラウン製菓は江戸川区にある小さな工場です。カカオ豆の調達からチョコレート製造までの幅広い知識と経験を活かし、高品質で味わい深いチョコレートを作ってくれました。

その先頭に立ったのが、女性工場長である鶴田絹さんです。クラウン製菓は国際フェアトレード認証マークをつけたチョコレートを製造している日本でも珍しいチョコレートメーカーで、チョコレートを通じて持続可能な社会をめざしている会社です。小さな町工場から世界的な課題に挑戦する姿勢は、学生5人でスタートしたACEが目指す、「子どもたちの自由と尊厳が輝く、可能性に満ちた世界を作ること」と通じるものがありました。

ACEとクラウン製菓が試作を重ねること4カ月程度、「アニダソ」誕生

「アニダソ」には、鶴田さんが長年アイデアとして温めてきた調味料「八丁味噌」が含まれています。ガーナの発酵食品「カカオ」と日本の発酵食品「味噌」が産み出すハーモニーは、ガーナと日本の未来をつないだと言えるでしょう。

まさに関係者全員にとって「希望」のチョコレートでした。

長年ガーナを支援してきたACEと小さな町工場がタッグを組んで生まれた「アニダソ」は、谷川俊太郎さんから頂いた詩「そのこ」に希望を与えるために生まれたと言っても過言ではありません。

2023年12月、ついに「アニダソ」は発売されました。当初の生産2000枚は完売、2024年2月には更に2000枚、増産しました。この増産した2000枚の完売をもって、「アニダソ」の販売は今年いっぱいを目途に一旦終了します。

1枚¥1,296(税込)と高価ではありますが、国際フェアトレード認証マークがついています(※)このうちの¥500が、ガーナの子ども1人の半月分の給食費になるのです。チョコレート15枚の購入で¥7,500が寄付となり、それは学校に通うためのスターターキット(例:ランドセル、制服、文房具など)の値段に相当します。

※開発途上国の原料や製品が公正な条件で取引されていることなどを示すマーク

アニダソチョコレートは、「おいしい」という消費者の満足と、生産者の生活向上を叶える取り組みの一つと言えるでしょう。

後編は、谷川さんの詩に出てくる「そのこ」たちの現実をお伝えします。

遠くにいるけど同じ空を見ている「そのこ」の叫びが聞こえます。

きっと谷川さんは今も天国で「そのこ」のことを思っておられるはずです。

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この記事を書いた人

栗秋 美穂

はじめまして「多様な学びと生き方」をさまざまな視点から伝えるライタ―栗秋美穂です。 東京在住ですが、いろんな場所の記事を書きます。 映画記事も書いてます。 得意分野はイベントレポ、人物インタビュー、エッセイ。 2024年は毎日農業記録賞を始め、3つのエッセイで賞を頂きました。 趣味は草木染。小5男児の母です。

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