2024年11月15日、愛知県常滑市にあるAichi Sky Expo(愛知県国際展示場)にて「どうだい?サミット in FIELDSTYLE EXPO 2024」が開催されました。
前編では、捨てられていたものを活用し新しいビジネスを創出した2社によるトークセッションの様子をご紹介しました。
今回の後編では「ド田舎から世界を魅了する老舗経営者」と題し行われた、大分県の旅館 山城屋 代表 二宮謙児さんと、和歌山県の湯浅醤油有限会社 代表取締役社長 新古敏朗さんのトークセッションの様子をお届けします。
地方から世界に羽ばたいた二つの企業によるトークセッション
旅館 山城屋は、温泉で有名な由布院からさらに15kmほど離れた山の奥にある小さな温泉地・湯平温泉にあります。二宮さんご夫妻で営業する旅館は今年で50年を迎える老舗です。300年前に作られた石畳が印象的な場所ですが、現在旅館に来るお客様は実に9割以上が海外からの来訪だそう。決してアクセスも良いとは言えない中、世界最大とも言われるクチコミサイト「トリップアドバイザー」で国内の旅館部門で第2位という高い支持を集めています。
湯浅醤油有限会社は、和歌山の湯浅町にある老舗醸造所「丸新本家」より醤油部門を独立させ、スタートしました。醤油の発祥の地であるにもかかわらず、湯浅町の醤油醸造の技術や文化が廃れていく現状を憂いた新古さん。旨味成分の含有量日本トップクラスである自社の醤油を手にして新古さんが向かった先は、なんとフランス。大使館に直談判し、今やビジネスはフランスで醤油レストランを立ち上げるまでに拡大しました。海外市場の開拓とともに、湯浅町の観光事業にも一役買っています。
新規市場を開拓する秘訣は「やりたい」を明確にすること
両者の紹介が終わったところで、二宮さんから新古さんへ「海外で商品を売れるようになったきっかけが気になる」と問いかけがありました。山城屋はコロナ禍でインバウンドが激減したことを境に女将秘伝の味噌の販売を始めたのですが、海外への販売進出においてはまだ難航しているとのこと。そんな問いかけに対し、新古さんは「まず 『絶対にやりたいこと』を宣言する」と回答。湯浅醤油がJAS法で定められた醤油旨味成分の特撰基準値の実に約1.5倍を記録していたことから、「これを食のフランス・経済のニューヨークに持っていくぞ」と断言したそうです。また「日本のものは買わない」と言われた際は「じゃあフランスで醤油を作ればいい」とフランスに醤油蔵を立ち上げました。その活動が功を奏し、フランス産醤油を使用したレストランも開業しました。
クチコミを増やすコツは「おもてなしの心」
続いて新古さんが山城さんに聞いたのは「クチコミを増やすコツ」について。新古さんは醤油発祥の地である湯浅町の繁栄のために現地で観光バス事業なども手がけているものの、思うように客足が伸びないようです。そこで二宮さんが回答としてあげたのが「小さなことの積み重ね」でした。コロナ禍で客足が落ちた際に、なんとホームページを104言語対応仕様に大リニューアル。
安心して奥地にある湯平温泉までたどり着けるように、電車の乗り方のレクチャー動画なども撮影しました。それらの気づきそうで気づかない気遣いの心が、来られたお客様の感動に繋がり、リピート客の増大やクチコミの拡大に繋がったそうです。
「地方だから」は挑戦を諦める理由にはならない
本セッションは、地方創生メディアのライターとして考えさせられることの多い大変有意義なものでした。「やりたい」を明確にし、そこに向かって全力で取り組む。その熱意さえあれば、たとえどんな場所だろうと成功できる。地方で輝くお二人から、そんなエネルギーを感じました。