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もの・こと  |    2024.12.24

豊富な地下水でびわ湖の宝石を養殖・加工|長浜市『テラダ水産』

養殖しているビワマス(画像提供:寺田さん)

「ビワマスは人気ですね。やはり味と食感がニジマスとは違います。ただ、成長が遅いのが難点です」

そう語るのは、滋賀県長浜市で養殖業『テラダ水産』を営む寺田さん。テラダ水産はびわ湖のほとりの一角でビワマスやニジマス、ウグイ、テナガエビ、スジエビなどを養殖しています。今回は、テラダ水産の寺田龍二さんに、事業内容や今後の活動などについて詳しく伺いました。

豊富な地下水がある土地での開業

ビワマスの水槽に地下水を汲み上げている

テラダ水産が現在の場所で養殖業を開始したのは、2013年(平成25年)。以前は姉川の近くで、同じように養殖業を営んでいましたが、豊富な地下水のある旧湖北町に養殖用の池を作ったのが始まりでした。

寺田さんの親戚が事業を行っていたこともあり、その隣の土地で寺田さんの両親が経営を始めたとのこと。

「地下水を汲み上げているので、夏でも冬でも水温をほぼ一定の14℃に保てます。ビワマスは特に低水温を好む魚種なので、水温が低いのが養殖の条件です」

テラダ水産の養殖場が位置するのは余呉川の河口付近。びわ湖まで約3kmの場所となっており、余呉川がすぐ隣に流れ、地下水も豊富です。

ビワマスだけでないテラダ水産の事業内容

ニジマスに餌を与える寺田さん

テラダ水産では、養殖業とビワマスやニジマスの加工販売を行っているとのこと。それぞれについて、詳しく伺いました。

釣り堀で大人気の餌を養殖

テラダ水産で養殖しているドジョウの出荷状態(画像提供:寺田さん)

テラダ水産で養殖しているのは、食用の「ビワマス」「ニジマス」と、釣り用の餌の「テナガエビ」「スジエビ(シラサエビ)」「ドジョウ」などです。また、びわ湖で獲れたウグイも釣り餌用として販売しています。

「近年、ウグイが釣り堀用の餌として人気が出てきました。ウグイは食用としては人気がないのですが、生命力が強いので生餌として人気があります」

ウグイは淡水魚でありながら、海水のなかでも30分以上生き続けるほど生命力が強いといいます。ほかの魚種が住めないような強酸性の水域にも生息する魚種であり、針を挿してもしばらく泳ぎ続けるとのこと。鯛を釣る際には生餌のウグイが人気のようです。

また、ドジョウは大阪でタチウオを釣る際に使用するテンヤ(針とおもりが一体になったもの)の餌として人気があります。

「ドジョウの出現は、釣り堀好きな人たちにとっては画期的です」

従来のテンヤは、きびなご(ニシン科の小魚)を餌として使用していました。しかし、きびなごはすぐに破損するため、頻繁に餌を付け替えなければなりません。一方で、ドジョウは丈夫なので何度でも繰り返し使用できます。

養殖しているスジエビの最大サイズ(画像提供:寺田さん)

従来から餌としての人気が高いエビについても伺いました。テラダ水産ではテナガエビやスジエビの養殖をしていますが、エビの養殖も難しい印象があります。

「スジエビは一般的に6cm程度が最大サイズです。うちで養殖しているテナガエビはかなり大きく育つため、釣り堀で鯛釣り用の餌として人気があります」

一般的にエビは高水温に弱いとされますが、テラダ水産で養殖しているエビは高水温にも強く、近年の夏の暑さにも負けないそうです。一方、ビワマスの養殖は難しいと寺田さんは吐露します。

ビワマス・ニジマスの加工販売

ビワマスとニジマスの燻製を製造している様子(画像提供:寺田さん)

びわ湖にのみ生息する固有亜種のビワマスは、「幻の魚」や「びわ湖の宝石」とまで称される魚種です。近年は食用として人気が高いのですが、流通量も少なく、滋賀県でもなかなか食べられません。

ビワマスの養殖が難しい点は、成長速度の遅さにあります。

「2年かけて育てても、800g程度です。やはり1kgくらいにまで育てたいと思っているのですが。1kgのビワマスが釣れたと聞くと、羨ましいと思ってしまいます」

一方でニジマスは成長速度が早く、約半年で出荷できるサイズになるとのこと。ただし、ビワマスとニジマスでは味や食感が大きく異なり、人気があるのはビワマスです。

テラダ水産ではビワマスやニジマスを燻製や塩麹漬け、醤油麹漬けなどに加工し、産直びわ『みずべの里』にて販売しています。ビワマスの燻製は生ハムの食感に近く、お酒に合うと人気です。

びわ湖の生態系が変化している

餌を求めて寄ってきたビワマスたち

びわ湖での漁獲高は年々減っていると、寺田さんは危惧します。

「近年の異常気象や環境の変化によって、びわ湖の全層循環が起こり難くなっています。全層循環が起こらないと、びわ湖全体に酸素が行き渡りません。酸素のない層ができると、生態系に大きな影響があります」

また、ブラックバスやブルーギルなどの外来種が増加したことも大きな要因です。びわ湖の生態系の変化によって食用の魚の漁獲高が少なくなっています。寺田さんは釣り業界に身を置いている者として、危機感を抱いているとのこと。

「食用として人気の無い魚に関しても、従来とは違う形で需要につなげたいと思っています。近年、ビワマスのトローリングはかなり流行っていますし、食用とは違う切り口のビジネスとしてヒントになりそうです」

ビワマス釣りは漁場利用の適正化のため、『琵琶湖海区漁業調整委員会』に申請し、承認されなければなりません。今年度は、1900人の枠があっという間に埋まってしまったというから驚きです。

遊漁者によるビワマス釣りは抽選制となっているため、「チケットが取れない」という話をよく耳にします。寺田さんは広い視野で今後の活動を検討中とのこと。

テラダ水産の商品購入方法

販売しているビワマスの燻製(冷燻)(画像提供:寺田さん)

テラダ水産で養殖しているエビやドジョウ、ウグイなどの釣り用餌は大阪や兵庫、和歌山、愛知、京都、福井の釣具店などで販売中です。お問い合わせはSNS(テラダ水産【とある湖⭐︎幻のサーモン】)までお願いします。

また、ビワマスやニジマスの加工食品は、産直びわ『みずべの里』で購入可能です。産直びわ『みずべの里』へのアクセス方法は、下記の地図を参照してください。

〒526-0113 滋賀県長浜市南浜町297 産直びわ『みずべの里』

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この記事を書いた人

のがわ

滋賀県担当のアラフィフライター「のがわ」です。地元の滋賀県や隣県の福井県に関する情報をお届けします。趣味の剣道は練士七段ですが、試合は中学生にも負けるレベルです。色々な地域に出稽古に行き、出会った方々の物語や観光情報などを記事にします。

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