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もの・こと  |    2025.01.02

夢は杉を使った知育玩具『ZURENGA』で世界進出|長浜市『株式会社浅尾』【後編】

ZURENGAを組み立てて作った家は子どもが入って遊べる

滋賀県長浜市の『株式会社浅尾』では、木のおもちゃ『ZURENGA』の製造・販売を行っています。前編に引き続き、木でおもちゃを作り始めてからZURENGAができるまでのことや、今後の展望などについて伺いました。

前編はこちら

夢は杉を使った知育玩具『ZURENGA』で世界進出|長浜市『株式会社浅尾』【前編】

杉の木でおもちゃを作る難しさ

ZURENGA miniのパーツを仕上げながら語る浅尾さん

春先になるとスギ花粉症に多くの人が悩まされることからもわかるとおり、日本の山は杉の木がそこここにあります。じつは、日本の森林の約41%が人工林であり、その内の約44%が杉の木です。(参考:林野庁「スギ・ヒノキ林に関するデータ」

日本国内ならどこの山にもあるため、大変親しみのある杉の木ですが、残念ながらおもちゃの材料としては普及しませんでした。

「そもそも杉のような柔らかい木でおもちゃを作る発想がなかったのだと思います。何せ、加工が大変です。彫るのは比較的簡単ですが、仕上げに手間がかかります」

おもちゃとして使用される木材としては、一般的に彫りやすくて堅い木が好まれます。たとえば、日本古来からおもちゃとして親しまれてきた独楽や積み木の材質はブナの木などです。また、ヨーロッパで作られている木のおもちゃも同様に堅い木を使用しています。

キグミンの森にはたくさんのZURENGAが置いてある

したがって、杉を使ったおもちゃ自体がほとんど無い状況ですが、決しておいしい市場ではありません。なぜなら、大企業が取り組むにはリスクが高すぎるからです。株式会社浅尾では大企業が取り組めないことを逆手に取り、勝機を見出そうとしました。

「杉は軽くてスポンジのようなイメージです。子どもが落としたり、衝突したりしても比較的安全に遊べます。だから、杉を使って色々なおもちゃを作りました」

しかし、木のおもちゃ作りに取り組んでみたものの、なかなか売れるものができません。ZURENGAが生まれたきっかけは、展示会への出展だったと言います。

ZURENGA誕生秘話

ZURENGA miniのロボット

「あるとき、『展示会に出展しませんか?』と言われたのがきっかけです。そのときはただの木レンガを作って出展したのですが、展示台を作る業者の人に『積むだけではつまらないよ。これ組み合わせてつながるようにできないの?』と言われました」

まったく無責任な発言だったと言います。木のレンガを組み合わせるのは簡単なことではありません。社員一丸となって考えた結果、レンガの6面全部に穴を開け、丸棒でつなげる発想に至りました。ZURENGAの誕生です。

ZURENGAはレンガの6面に穴を開けているため自由度が高く、工夫次第でさまざまな形状を作り出せます。あるとき、ZURENGAを貸し出した子ども施設の担当者に呼ばれて訪問したところ、子どもたちは時間を忘れて遊び続けていたそうです。

たった4人の会社が日本おもちゃ大賞に輝いた

ZURENGAは大きなサイズで施設向けの商品のため、個人向けにはZURENGA miniを販売しています。

ZURENGA miniは『日本おもちゃ大賞2023』のエデュケーショナル・トイ部門(知育・教育・教科学習に役立つ玩具)で優秀賞を受賞しました。

画像出典:ZURENGA公式サイト

大賞を受賞したのは、タカラトミーアーツでした。ほかに受賞している商品は、有名企業や有名なキャラクター商品ばかり。名だたる大企業が立ち並ぶなか、社員4人の会社が製造しているZURENGAが受賞しました。これには浅尾さんも驚いたと言います。

下記の動画は日本おもちゃ大賞のプレゼンを検討している社内の様子です。

「社員から、おもちゃ大賞に応募すると言われたときには反対しました。応募しても受賞できるわけがないと思っていましたから。しかし、実際に受賞することになり、我々以上に世間が驚いたようです」

日本おもちゃ大賞で優秀賞を受賞してからは取材が相次いだとのこと。また、ZURENGAは日本おもちゃ大賞だけでなく、2020年には木材の優れた利活用の実践を顕彰する『ウッドデザイン賞』も受賞しています。

いつかヨーロッパへ

ZURENGAの家の中は子どもがくつろげる空間になっていた

「言葉は悪いかもしれませんが、木のおもちゃは北欧が牛耳っています。だから、ヨーロッパで認められることが一つの目標です」

ZURENGAは日本国内において、2020年のウッドグデザイン賞や2023年のおもちゃ大賞の優秀賞を受賞したことで、大きな注目を集めました。一方で、おもちゃ業界ではまだまだ認知度は低く、売り上げにはつながらない状況です。

浅尾さんは、日本で価値を認められるためにも、ヨーロッパで認められなければならないと言います。

ZURENGA miniの説明書

たとえば、浮世絵が茶碗の包み紙であったことは有名な話。日本の陶器を輸出する際に梱包材として使用していた浮世絵がヨーロッパで芸術として認められたことで、日本国内においても浮世絵の芸術性が認められるようになりました。

また、近年は芸能やスポーツ分野においても、海外で認められて逆輸入されるパターンが増えています。ZURENGAも北欧で認められれば、日本国内においても認知度が高まることは間違いありません。

「ドイツの展示会に出展しようと考えているのですが、今のところ資金がなくて出展できない状況です。まずは頑張って資金を貯めるところから始めます」

展示会への出展は費用面の壁だけでなく言葉の壁もあるため、さまざまな準備が必要です。ZURENGAが世界で認められ、逆輸入される日を楽しみにしています。

キグミンの森とZURENGAの詳細情報

ZURENGAに関する詳細情報は下記の公式サイトをご確認ください。

Web:お家が作れる天然木製ブロック・木育おもちゃ「ズレンガ」

キグミンの森へのアクセスは以下のとおりです。

キグミンの森
〒526-0059 滋賀県長浜市元浜町14-22(JR長浜駅から徒歩10分)

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この記事を書いた人

のがわ

滋賀県担当のアラフィフライター「のがわ」です。地元の滋賀県や隣県の福井県に関する情報をお届けします。趣味の剣道は練士七段ですが、試合は中学生にも負けるレベルです。色々な地域に出稽古に行き、出会った方々の物語や観光情報などを記事にします。

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