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フード  |    2024.11.19

関東を駆け巡るフードトラック「キナリノワ」が今も走り続ける理由【前編】|パンとおみそとそば

あなたは多くの人で賑わうイベントやお祭りで、豊富な種類の食べ物を売っている多種多様なフードトラックに、心を踊らせた経験はないだろうか。

筆者はある。並木道の両端に色とりどりの看板を掲げ、独自のメニューを携え営業しているフードトラックたちを眺めていると、活気あふれる江戸時代の商店街にタイムスリップしたかのような感動を覚える。普段は目にしないフードトラックの非日常的な空間に、筆者は心が躍るわけだ。

キナリノワ フードトラック

そんなフードトラックを利用し、神奈川や東京などの関東圏を中心に駆け巡る一人の女性がいた。沖縄で生まれた「ソーキそば」や「野菜みそそば」をメインに温かい食事を提供し、多くの人に笑顔を届けている。そして、能登半島地震の際には自らのフードトラックで炊き出しへと出向き、現地の人々に勇気を与えた。現在は、大和市と災害時に炊き出しを行う協定を結び、少しでも有事の際に役立てるよう取り組んでいる。

その女性のお名前は「キナリノ縁株式会社」代表取締役社長の清水麻美子さん(以降:まみさん)だ。そして、まみさんの相棒となるフードトラックの名は「キナリノワ」。

キナリノワ 清水麻美子さん

今回は、まみさんが行う活動について取材した。事業を始めたきっかけから、能登半島地震の際に炊き出しへ行った経緯など、ここでしか聞けないお話を伺ったので、ぜひ最後まで読んでいただきたい。

キナリノのフードトラックで「野菜みそそば」を食べてみた!

実は筆者、まみさんと初対面。まずはまみさんの作る「野菜みそそば」が食べたかったので、注文した。

キナリノワ 野菜みそそば

どん。「お、大きい!」というのが一言目の感想。まみさんの満面の笑みと共に温かな手から差し出された「野菜みそそば」は、一回の食事として十分に成立するほどボリューミーだった。

キナリノワ 野菜みそそば

野菜がシャキシャキで美味しい。みそ味のスープと絡み合う麺の食べ応えと、ときたまアクセントになる紅生姜がたまらない。もし食欲が喋れるとしたら、大声を上げて次の一口を催促するに違いない。

お腹いっぱいに満たされて、身も心もホカホカになったところで、本題に入りたいと思う。

清水麻美子さんが事業を始めたのは「なりゆき」だった?

——まみさん、本日はよろしくお願いいたします。

「よろしくお願いします!」

常に笑顔が絶えないまみさん。体の内側からエネルギーが溢れ出ているようで、こちらも自然と笑みが溢れてしまう。

——フードトラックをやる前は、自宅でイベントショップを開催していたそうですね。そもそも、まみさんが自分で事業を起こしたいと思った理由は何だったのですか?

「もともと私はパンが好きだったんです。でも、パン屋さんに行くと自分が食べたいパンが売っていなくて、それなら自分で作ってしまおうと思い立ちました。それでパン教室に行って習い始めたのですが、楽しくてあっという間にのめり込んでしまったんですよね。すると、ある日パン教室の先生から『あなたは生徒じゃなくて、先生になりなさい』と言われて、実際にパン作りを教える立場になりました」

「ただ、パン教室で作ったパンを自分たちだけでは消費できなくて、近所にも配っていたんです。そしたら周りから『売ってほしい』という声が上がり始めたんです。ちょうどその頃、ハンドメイド作家の方とイベントをやろうという話になり、私の自宅でイベントショップを開催することになりました」

——つまり事業を始めたのは、なりゆき的な感じですか?

「そうですね(笑)流れるままにやってきました」

パン屋から一転して無職に!フードトラックとの出会い

キナリノワ フードトラック

——では、最初はパン屋だったのが、なぜフードトラックにシフトしたのでしょうか?

「フードトラックを始めたのは、知り合いからの誘いがあったからです。自作のパンを売るイベントは、ありがたいことに自宅では収まりきらないほど人が来てくれたんです。だからもっと大きな場所でイベントショップをやりたいと考え始めて、住宅展示場の一棟を借りることにしました」

「そこでも盛況だったのですが、段々とイベントを開催する仲間たちが出産や転勤などでいなくなってしまい、結果的に私も実家の方へ引っ越さなければなりませんでした。次は何をしようかと考えていたら、父が昔使っていた税理士事務所のスペースで何かやれば?と母に言われたんです。私もパン教室をやりたかったので、まずはパン屋で生計を立てながら動き始めることにしました。すると、これまたありがたいことに、気まぐれで開店していたパン屋さんも繁盛し、やがて一人では切り盛りできなくなるほどになったんです」

キナリノワ 清水麻美子さん

「でも、9年間続けたパン屋さんでしたが、再び引っ越さなければならない事情ができてしまって結局お店は閉店しましたした。引っ越し先で職を失った私でしたが、たまたま知り合いから『余っているフードトラックを使って何かやらないか?』と誘いを受け、始めることにしたんです」

直感に従い、流れに身を任せる。ただ、これはまみさんが行動している証拠だろう。まみさんが何かのアクションを起こすことで、次の運が舞い込む。その運を逃さずに掴み取り、次第に影響の範囲が広がってゆくのだろうか。

キナリノワ 清水麻美子さん

——現在のフードトラックで販売するものを、ソーキそばとおみそ汁にした理由はありますか?

「最初はパン屋をやっていた経験を活かして、ピザのフードトラックを始めました。ほら、パン作りで生地の作り方は知っていたでしょう?でも、2年後にまた職を失ってしまうんです。フードトラックを貸してくれていた友人から、フードトラックを返してほしいと言われてしまって……」

「さて、どうしようかと悩んでいたものの、フードトラック自体はとても楽しかったから自分でやることにしました。それで、もともと大好きだったおみそ汁を商品にしたんです。おみそ汁って、日本人にとって欠かせない一品なはずなのに、最近は食べない方もいたり、インスタントで済ませてしまう方がいたりするじゃないですか?だからこそ私がおみそ汁を主食にしてやろうと思って、大きいおみそ汁を提供し始めたんです」

「でも、おみそ汁は正直に言うとあまりオペレーションが良くなかったので、代わりにソーキそばを出しました。するとソーキそばの方が売れ始めてしまい……。結果的に現在は冬限定でおみそ汁を販売していて、メインをソーキそばにしています」

キナリノワ ソーキそば

今回はまみさんの「おみそ汁」には出会えなかったが、冬に販売されるとのことなのでぜひ食べてみたい。何せ、大きいらしい。「みんなに健康になってほしい」という願いがそのままサイズに表れているそうだ。

また、まみさんは自らがフードトラックに立ち営業するだけでなく、会社で誘致事業も行っている。誘致とは、フードトラックをイベントやお祭りなどの会場に呼ぶことである。

——まみさんは、フードトラックの誘致事業もやられているのですよね?どのような背景があって誘致を始めたのですか?

「はい。最初は自分も含めて出店場所に困っていた人たちを助ける意味で、潰れてしまったファミレスの土地を借りてフードトラックを呼んでいました。この時点で法人成りをしたのですが、まさか自分が借りられるとは思っていなかったので、運が良かったと思います。結局は家賃も高かったことから出て行くことにはなるのですが、自分がフードトラックを各地に送り込めたらいいなと思い、誘致事業を始めました。ありがたいことに、今では130台ほどのフードトラックがうちに登録してくれていて、さまざまな場所にフードトラックを出店できています」

キナリノワ フードトラック

フードトラックの営業から誘致事業まで手広く事業を行うまみさん。自宅でイベントショップを始めた頃から二転三転と大きく人生が変わり続ける中で、なぜまみさんは動き続けられるのだろうか。まみさんを突き動かす原動力とは、一体なんなのだろうと気になった。

——今のお話を聞く限り、まみさんってずっと行動し続けていますね。その原動力ってなんですか?

「私は貯金もないけど、意外となるようになる、なんとかなるって精神で動いてます(笑)生きていくためにはやるしかないし、自分が動いていけば自然と周りも動いていくと思ってるので。だからこそ、私は止まっちゃいけないんです」

キナリノワ 清水麻美子さん

まみさんはインタビュー中も、お天道様に届かんばかりの笑い声で場を和ませてくれていた。まみさんの笑い声を聞くと、こちらも自然と笑みが溢れて明るくなれる。もしかすると、まみさんの笑い声を聞いた空の上のお天道様が、まみさんの位置を特定して運を注いでくれているのではないだろうか。

後半では、まみさんが能登半島地震で被災した石川県に炊き出しへ行った話を伺った。そして、まみさんの波乱万丈な人生ドラマの一部分をお話しいただいたので、ぜひ読んでみてほしい。

キナリノワ 清水麻美子さん

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この記事を書いた人

みくと

映画と映画館をひたすら愛するフリーライターです。2000年に横浜で生まれ、現在は妻と娘と大和市に住んでいます。普段は映画レビューの寄稿やSEO記事の執筆、ホームページのライティングなどをしています。趣味は、次に観る映画を「何にしようか」と悩むことと、文章を書くことです。Mediallでは、地域の映画館や神奈川の魅力溢れるお店などをご紹介します。

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