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人  |    2024.12.29

スーパー(普通の)ボランティア徳永さんに聞く【はじめの一歩】後編

前編では、東京都町田市在住のスーパー(普通の)ボランティア徳永さんに、能登半島での活動についてお聞きしました。また、徳永さんが初めて災害現場に行った経緯もうかがっています。ぜひ前編もお読みください。

後編では、東日本大震災でのボランティア活動や、徳永さんの考えるボランティアについて話していただきます。

前編はこちら

スーパー(普通の)ボランティア徳永さんに聞く【はじめの一歩】前編

東日本大震災でのボランティア活動

ー阪神淡路大震災後は、どのような活動をなさったのですか。

徳永:ご存知のように、2011年に東日本大震災が発生しました。このときは、子どもが通っていた小学校で結成した「オヤジの会」に呼びかけて4〜5名でボランティアに行きました。GWや夏休みを利用したり、土日・連休を利用したりして2ヶ月に1回くらいのペースで通いました。活動先は、気仙沼・陸前高田・釜石・大船渡・大槌町・南三陸などです。当時は、休日になるとボランティアが数百名規模で来ていましたね。ボランティアの拠点や小学校の校庭などにテントを張る宿泊場所もできて、受け入れ体制が日進月歩の感がありました。

ー東日本大震災のボランティアはどのくらい続けたのですか?

徳永:2013年ごろには先にあげた地域での、私たちが携われるガテン系作業はほとんどなくなってしまいました。その後、原発事故の影響で復旧が進んでいない、福島県南相馬市の現実を目の当たりにしてショックを受けます。能登の発災前までは毎月のように、南相馬市でボランティア活動をしていました。ですから、東日本大震災のボランティア活動はまだ継続しています

釣りとボランティアの意外な共通点

マイチェーンソーを見せてくれた徳永さん

ーご自身が熱心にボランティア活動をするようになったのは、なぜだと思いますか。

徳永:私は趣味がいっぱいあるんですが、中でも一番お金と時間を使ったのは「釣り」なんです。58歳頃まで、かなり熱中していました。ボランティアと釣りは、似ているところがあるんです

ー具体的にはどういうところが似ていますか。

徳永:釣りって、対象魚ごとに道具や仕掛けがまったく違うんです。ボランティアも依頼された作業内容で道具や手順がまったく違う。良い結果を得るために釣りでは仕掛けを工夫したり潮目を読んだり、道具も凝るようになります。釣り名人や船宿のオヤジからも、さまざまなことを学ぶんです。

ボランティアも経験豊富な人から知恵を学び、目的達成のための最適な道具を入手し、さらに工夫を加えて、一人でも多くの人の笑顔を獲得しようとします。共通点は「お金」と「時間」がかかっちゃうこと。二つの違いは、釣りは自己満足だけど、ボランティアは他者満足なところです。ボランティア活動をすると、被災された方から本当に喜ばれます。工夫も努力も得るものの質も、ボランティアの方が「上」なんじゃねェ!と最近は思っています。

中国のことわざに「一生幸せになりたかったら、釣りを覚えなさい」という一節がありますが、私は「釣り」の所を「ボラ(ボランティア)」に置き換えて生きてるんですネ。ビジネスで味わえる満足は相手が曖昧なことが多いですが、ボランティアで味わえる満足は、目の前にいる人がダイレクトに伝えてくれます。

ー釣りとボランティア活動の共通点は、非常に意外でした。しかし、徳永さんの話を聞くうちになるほど、と納得しました。

ボランティア活動におけるチームワーク

チームワークが特に必要な屋根作業の風景~徳永さん撮影

ーボランティア活動では、チームワークも重要そうですね。

徳永:それは本当にそうです。一つの現場を完遂するには、協力し合うことが不可欠です。ボランティア活動は会社組織とは違い明確なリーダーシップというより、みんなで協力して進めていく横社会なんです。初めて会う人とでも円滑にコミュニケーションを取らなければなりません。

ー徳永さんにとってボランティア活動とはどのようなものですか。

徳永:私にとってボランティア活動とは「その日たまたま出会った人と、誰かの人生に関わりに行くこと」です。実は、これは偶然見つけたSNSの投稿にあった言葉なんです。熊本地震で初めてボランティア活動に参加した女性の投稿です。私は、投稿を読んでとても感動しました。この言葉は、いまや私の活動の原点であり、バイブルです。

ーどのような投稿内容だったのですか。

徳永:ボランティア活動の詳細だけでなく、出会った人々との触れ合い、そして活動を通して感じたことが丁寧に綴られていました。最後に「その日しか一緒じゃない人たちと誰かの人生に関わりに行く日、過ごしてみませんか」と締めくくられていたんです。私はこのフレーズにやられました。自身が体験した素晴らしい時間をもっと多くの人に味わって欲しいという言葉ですよね。ボランティア活動の「はじめの一歩」を踏み出しやすくしてくれるような、素敵な言葉だと思いませんか?

ー素敵な言葉ですね。そして、非常にリアルな言葉だと思いました。ボランティア活動に興味をもっている人に伝えたいことはありますか。

徳永:ボランティア活動が自分に合っているかどうか、やってみないと分かりません。まずは一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。もちろん、うまくいかないことや、思うように結果をだせない場合もあります。それでも、新しい発見や、自分自身の成長に繋がる経験ができるはずです。そして、その経験を通して、他者との繋がりや、社会貢献の喜びを実感できるでしょう。

まとめ

徳永さんに取材を申し込んだ際「ナンバーワンでもオンリーワンでもない普通のボランティアですけど、それでもよければ」と返事をいただきました。取材の際は、質問に率直に丁寧に答えていただき、感謝しています。

ボランティア活動には、釣りと似た魅力がある一方で、他者の満足をダイレクトに感じられる特別な喜びがあると語る徳永さんの言葉には、多くの人を引き付ける力があると思いました。ボランティア活動に必要なのは、特別な技術やスキルではなく「やってみよう」という気持ちと、行動力ではないでしょうか。徳永さんが引用した「その日しか一緒じゃない人たちと誰かの人生に関わりに行く」という言葉は、ボランティア活動の本質を端的に表しています。

初めは不安や戸惑いがあるかもしれませんが、その一歩が新しい発見や成長、そして人との繋がりを生み出すきっかけとなります。徳永さんのように、自分の趣味や特技を生かしながら、自分に合った活動を見つけることができれば、きっと充実した時間を過ごせるでしょう。

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この記事を書いた人

wakka

神奈川県出身、東京都在住のライターです。生花店店長やベーカリーカフェで働いた経験があります。趣味はお散歩と読書。お散歩で見つけた地域の魅力を発信します。

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