日本唯一のオムレツのまち「橋本市」。和歌山県内でたまごの生産量が最多であることから、「はしもとオムレツ」を市内ブランドとして掲げています。
2026年2月現在(※取材時)の認定店は、橋本市学校給食センターを含む13店舗。和洋中問わず個性豊かなオムレツが登録されています。

今回訪ねたのは、橋本東ICから車で5分のところにある「洋食レストラン ココット」(以下:ココット)。シェフの中岡陽介さんと、妻の亜希子さんにお話を伺いました。

洋食店としての歴史は長く、来年で開店20周年を迎えるココット。今ではメニューの半分以上をオムレツが占めていますが、開店当時はメニューになかったのだそう。
長年オムレツを提供していなかった洋食店が、はしもとオムレツに参加した理由とは。そこには、地域のために重ねてきた熟考が、たくさん詰まっていました。
開店当時はなかったオムレツ。特製ふわとろオムレツは、プロの料理人でも至難の業
作り置きはせず、注文が入ってからつくりはじめるオムレツ。今回、特別に調理のご様子を見学させていただきました。
熱したフライパンの温度を見極めたのち、とろっと注ぎ込まれる卵液。「しゅわっ」とやさしい音が弾けます。

オムレツづくりのこだわりをお聞きすると「生クリームを入れて、ふわとろに仕上げています」と陽介さん。オムレツがぷるぷるっと揺れる瞬間を、誇らしげに見せていただきました。

卵液を入れるタイミングや温度管理が難しく、オムレツづくりはプロの料理人でも至難の業。ココットでも開店当時、メニューにオムレツはありませんでした。
橋本市役所から「はしもとオムレツ」のお話を受けたときのことを、陽介さんはこう振り返ります。
「当初オムレツの提供はしていませんでしたが、僕はオムレツを包める技術を持ってはいたんです。ここから徒歩すぐのところに養鶏場があるし、家の裏で野菜も育てている。じゃあ、せっかくだしやってみようかなと思いました」

ココットで提供されているオムレツは、グラタンコロッケを包んだり、トマトが入っていたりと実にさまざま。亜希子さんは「オムレツに入れられないものはないんですよ。あとはシェフがなんとかしてくれるんで」と自信を込めます。
次第にオムレツのレパートリーは増えていき、今では10種類以上。はしもとオムレツ登録店のなかでも、最多のオムレツ数を誇っています。

特製オムレツに、さくさくのカツ。「朝食のイメージが強いからこそ、ランチでがっつり食べてもらいたい」
この日に頂いたのは「ポークカツのオムレツライス」。朝食の印象が強いオムレツを、ランチとしてがっつり食べられたらと開発されたものです。
陽介さんお手製のふわとろオムレツのうえには、豪快にポークカツ。見た目のインパクトに「おっ」とわくわくが止まりません。

オムレツの周りには季節の野菜がふんだんに敷き詰められており、この日はかぼちゃ、菜の花、かぶなど。特製デミグラスソースをたっぷりかけて頂きます。

さくさくで柔らかなカツに、後を追うかのように広がっていくオムレツのほのかな甘み。クリーミーなオムレツは口の中でさっととろけていき、「さくっ、ふわっ、とろっ」の三拍子にうっとりします。
デミグラスソースは、コクがありながらくどさはなく、ソースポット1杯分かけきっても重さは感じません。食べ応え抜群、大満足の一皿です。

自家製野菜に、新鮮なたまご。夫婦そろって栄養士の資格を持っているからこそのこだわり
はしもとオムレツでは、橋本のたまごを使うことに加え「市内産の食材を1つ以上入れること」が定められています。
ココットで選択したのは、特定の産物ではなく「自家製の野菜」。ご自宅の裏には、陽介さんのお父様が始めた畑があり、毎日朝採れのものを使用しています。
野菜はもちろん、なんとお米も自家製。ココットが「自家製」にこだわるのには理由があります。

「私もシェフも、栄養士の資格を持っているんです」
同じ学校で栄養について学んでいたというおふたりにとって、「からだにいいもの」は大切な理念。学生時代の経験が、今でも活かされているといいます。
畑で育てている作物は、すべて低農薬・無農薬。採れたてのものを使用しているため、栄養価が高い状態で提供できます。
さらに、たまごの仕入れ先である養鶏場「落合ポートリー」は、ココットからわずか徒歩5分。いつでも新鮮なたまごが手に入ります。
フレッシュな野菜に、取れたてのたまご。栄養士の資格を持つおふたりだからこそ、新鮮な食材への意識は欠かせません。
素材はあっても活かしきれていない。だからこそ「はしもとオムレツ」をみんなで広めたい
はしもとオムレツ推進協議会の会長を務める亜希子さんは、「『オムレツのまち』はうち(橋本市)だけなんです。これは紛れもないオンリーワンですね」と即答します。
一方で、特産品はあるのに活かしきれていないもどかしさもあるのだそう。地域の抱える課題についても率直に教えていただきました。

「橋本市には、柿やごぼうなど、特産品そのものはいっぱいあるんです。けれども『橋本のご当地グルメ』はなかなかなくて……。
素材はせっかくたくさんあるのに、うまく活かしきれていないのがもったいないんです」
隣で聞いている陽介さんは「道の駅には、地元の野菜や果物がたくさんある。だから、橋本のたまごでくるっと包んで、はしもとオムレツにする感じだよね」とやさしくうなずきます。

はしもとオムレツの取り組みが始まって、今年で10年。とはいえ、市内の認知もまだまだ伸びしろがあるのだそう。
「まずは、橋本市内ではしもとオムレツが定着すること。そのうえで『橋本のグルメって何がある?』と聞かれたときに『はしもとオムレツ!』ってなるのが理想ですね」と、熱い意気込みを語ります。
注文を受けてから調理を始めるので、事前に電話で一報伝えておくと安心。「ただ、時間がかかっても、これが私たちにできることなので、ベストなオムレツを用意してお迎えします」とおふたりは力強く話していました。
来年で20周年を迎えるココット。橋本づくしの特製オムレツとともに、今日も皆さんをお待ちしております。

※掲載されている商品、価格、情報は取材時点のものです。
店舗情報
店名:洋食レストラン ココット
住所:〒648-0003 和歌山県橋本市隅田町山内64-2
TEL:0736-36-5510
※駐車場10台あり
定休日:月・火曜(不定休あり)
営業時間 :11:00~14:00(ディナー18:00~要相談)
Instagram:@yoshoku_restaurant_cocotte
アクセス
橋本東ICより車で5分



