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スポット  |    2025.11.28

『多摩のあゆみ』で知る!人々が繋いできた歴史と多摩地域への想い【後編】|東京都立川市

多摩信用金庫本店が運営する「たましん美術館」。
前編では、たましん美術館について、多摩のあゆみ、多摩地域と水のかかわりについての展示の紹介をしました。

後編では、多摩地域と鉄道の発展や、行楽地、歴史に関する展示などについて詳しくご紹介します!

前編はこちら

『多摩のあゆみ』で知る!人々が繋いできた歴史と多摩地域への想い【前編】|東京都立川市

多摩地域・武蔵野

「『多摩のあゆみ』創刊50周年記念展 多摩の空はつながっているか」展

東京都の西部を中心に、30の市町村からなる多摩地域。東京都の面積の約半分を占めています。

東京府群区全図

古代、多摩地域には武蔵国の国府と国分寺が置かれていました。
明治に入り、多摩地域は当初神奈川県だったのです。
その後、明治26年に多摩地域は神奈川県から東京府に移管されます。
「東京府郡区全図」はその3年後、明治29年に作られた、現在の多摩・東京の原形の姿を示す貴重な資料です。

そんな多摩地域に焦点を当てた展覧会「『多摩のあゆみ』創刊50周年記念展 多摩の空はつながっているか」展がたましん美術館で開催しています。(2025年12月21日(日)まで)

武蔵野に関する資料
《武蔵野風景》/萩原実 提供:たましん美術館

こちらの作品は紙に水彩とガッシュで描かれた武蔵野の風景画。
水彩絵具のガッシュとは、不透明水彩のことで、下の色が透けず、本作でも木々の重厚な雰囲気を醸し出しています。
雑木林の自然な様子は人の手入れがあまりされておらず、広大な敷地であったことを感じさせます。

鉄道と観光名所

左・《富士三十六景 十二 武蔵小金井》/歌川広重、右・《名所江戸百景 井の頭の池弁天の社》/歌川広重

こちらは、まだ鉄道が走っていないころの江戸時代の浮世絵。
歌川広重が描いた小金井と吉祥寺の井の頭公園です。

小金井は古くから桜の名所として知られ、玉川上水堤の桜並木は、江戸近郊随一の桜の名所「小金井桜」として江戸の人々に人気だったそう!
井の頭公園の弁財天は現在も変わらず観光名所として人気な場所ですが、奥まで見渡せるような開けた空間は、今の井の頭公園からは想像ができません。

どちらの作品も広重が愛したベロ藍「広重ブルー」が美しく、ピンク色へと変化していく空間の色彩表現は必見です!

《蒸気車往復繁栄之図 》/山武羅 誠祐

山武羅誠祐は江戸時代から明治時代にかけて活躍した絵師で、文明開化にまつわる「開化絵」をよく描いています。

こちらは、JR中央線になる前の甲武鉄道のルートと観光名所を描いた作品。
甲武鉄道の開通は1889年4月で、小金井の桜が咲く時期に合わせていたと言われています。

新宿停車場が正面に描かれ、そこから小金井の桜並木、2007年ミシュランに登録された高尾山なども描かれています。
多摩地域で有名な山といえば、高尾山と御岳山ですが、実は山の標高が高いのは、御岳山の方。
こちらの絵図でも、御岳山の方が高いことが見て分かります!

《高尾山の春》/川月泉鑑
青梅鉄道(現在の青梅線)と武蔵野鉄道(西武線)

多摩地域が歩んできた歴史

第一章では、生活における多摩川や、玉川上水。
第二章は、鉄道の発展など様々な側面から多摩地域を紹介する内容でした。

第三章では、多摩地域の歴史の中で、4つの見所に焦点があてられ、絵画作品、歴史的資料によって紹介されています。

会場の様子
《武蔵国分寺推定之賦》/棟方末華 提供:たましん美術館

こちらは、かつて国分寺市にあった武蔵国分寺の在りし日の姿を描いた作品。
木々は細かく繊細ながらも、建物自体は力強い描写で、堂々たる国分寺の姿を描いています。

木版の絶妙な摺り加減が実在していた時代の雰囲気をより醸し出しているように感じます。

《一ノ宮渡御》/綾部好男

こちらは、府中市にある大國魂神社の例大祭「くらやみ祭」を描いたもの。
作者の綾部好男氏は府中市出身で「くらやみ祭」をテーマに作品を多数描いています。

かつては街の明かりを消して深夜の暗闇の中で神輿渡御が行われたため、くらやみ祭と呼ばれることになったそう。
1000年以上前から行われており、東京都指定無形民俗文化財にも指定されています!

《格納庫のある風景》/ 豊泉恵三

こちらは、立川市にあった飛行機の格納庫を描いた作品。
立川は、かつて飛行機の街と言われており、立川市周辺には、飛行機に関連する企業や場所がたくさんありました。

立川飛行場に航空機メーカーの立川飛行機(現在の立飛ホールディングス)、またそのすぐ隣の昭島市には現在も続いている昭和飛行機工業、そして、現在はアメリカ空軍の軍用基地であり、航空自衛隊も所在している横田基地も、1940年には旧日本陸軍の多摩飛行場として開設されています。

立川飛行場は元々、立川陸軍飛行場として開設。
その後一般利用も開始され、立川からパリ行きの飛行機が飛び立ったことも!

戦後、立川飛行場は米軍の「立川基地」となり、1977年に全面返還。
跡地は現在、ファーレ立川、国営昭和記念公園、陸上自衛隊立川駐屯地などの官公庁施設や研究所施設になりました。

『最新実測立川町全図』/ 田宮測量社発行

絵画に描かれていていた格納庫があった場所は、なんと現在のたましん美術館がある辺り。
2020年4月10日に複合施設GREEN SPRINGSとして生まれ変わりました!

そのため、GREEN SPRINGSでは、立川飛行場の滑走路をモチーフとした長さ約120mカスケード(階段状の滝)で街路と多機能ホール屋上をつないでいたり、施設内には立飛が開発に関わった、R-HM型軽飛行機が一般公開されています。

戦後、立川飛行場と多摩飛行場は米軍が接収し、立川は基地の街となりました。
米軍ハウス、ビヤホールやバーもでき、立川市一帯は一時期アメリカのようになります。

《立川市変貌》/ 安西啓明

こちらは、その様子を描いた作品。
現在のme:rise立川がある辺りを描いたそうで、今の立川からは想像もできないでしょう。
時代によって姿を変えていく立川市周辺ですが、一方、立川市の隣の国立市は学園都市として発展していきます。

国立市の学園都市としてのあゆみ

国立駅は、赤い三角屋根にロマネスク風の半円アーチ窓が特徴で、イギリスの田園都市の小住宅デザインの駅舎として珍しいものでした。
実際にイギリス、ドイツ、アメリカなどの古レールが駅舎に使われていたり、フランス直輸入の街灯が並ぶなど、国立市はヨーロッパの街に近いと言えるでしょう。

元々は、100万坪ほどの雑木林だった国立の街を箱根土地株式会社(現在の株式会社西武不動産)が学園都市として開発。
ドイツの学園都市ゲッティンゲンをモデルに学園都市として作られました。

絵画と歴史的資料が伝える多摩地域

東京都の西部にある多摩地域。
そこには、多摩川を生活に取り入れながら暮らしてきた歴史や、自然と共存し、自然を愛してきた人々の想い、様々な苦難を乗り越えて発展してきた街の姿がありました。

展示の様子

今回の展示では、歴史的な文献や資料と絵画を一緒に展示することで、絵画作品を見たときに、より具体的に情景などをイメージできます。
一部の資料はデジタルアーカイブとして公開されており、スマホでより詳しく見ることができるのも、より身近に感じることができるでしょう!

展示を通して、多摩地域があゆんできた歴史と想いを知り、ぜひ絵画や資料にある場所に実際に足を運んでみてはいかがでしょうか?

※今回は取材のため、特別な許可を得て撮影しています。

たましん美術館

住所:東京都立川市緑町3-4 多摩信用金庫本店1階
電話番号:042-526-7788
開館時間:10:00〜18:00(入館は30分前まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は開館し、翌日休館)、年末年始、展示替期間
観覧料:一般500円(※20名以上の団体様の場合100円引き)、高校生・大学生300円(中学生以下無料)、障がい者手帳をお持ちの方と付き添いの方1名・たましんPlus会員(旧「シニア・スクエア」会員)ご本人及びお連れの方1名まで無料
※展覧会によって入館料が異なる場合があります。
https://www.tamashinmuseum.org/

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この記事を書いた人

ChicacoMurayama

【アーティスト/ライター】【神奈川県公認Mediallライター】 幼い頃から絵を描くことが好きで、画家活動を行う。また、読書、執筆、写真を撮ることも好きでフリーライターとしても活動。 作品は独自に研究し生み出した技法のサンドアート。コンセプトは「綺麗な世界、穏やかに心温まる世界」。展示販売、年に数回のワークショップ、ラジオでアートについて話したりアート普及活動も行う。 多めで見やすい写真とわかりやすい等身大の言葉で、アート、美術館・博物館をメインに画材、文具や神社、カフェなどを紹介していきます! 

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