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スポット  |    2025.11.28

『多摩のあゆみ』で知る!人々が繋いできた歴史と多摩地域への想い【前編】|東京都立川市

立川駅北口の多摩信用金庫本店に美術館があることをご存知でしょうか?
今回は、たましん美術館で開催中の「『多摩のあゆみ』創刊50周年記念展 多摩の空はつながっているか」を紹介します!

たましん美術館外観

たましん美術館とは?

東京都立川市に本店を置く大手信用金庫、多摩信用金庫。
1933年、有限責任立川信用組合として設立し、その後、2006年に多摩中央信用金庫、八王子信用金庫、太平信用金庫の3つの信金が合併し、多摩信用金庫となりました。

多摩地域を中心に営業しており、一部神奈川県相模原市にも展開しています。

多摩信用金庫本店のエントランス

2020年6月、多摩信用金庫本店・本部棟の新築・移転にともない、新本店・本部棟内に開館した「たましん美術館」。
多摩地域の文化の拠点として、地域に根ざした美術館です。

JR立川駅北口よりモノレール沿いのサンサンロードを歩くと、約6分で到着。

多摩地域出身作家の作品をはじめ、絵画・古陶磁・彫刻・浮世絵など、多摩信用金庫が所蔵する「たましんコレクション」をメインに企画展を開催しています!

たましん美術館入口 提供:たましん美術館

多摩のあゆみ

2025年10月11日から開催されている「『多摩のあゆみ』創刊50周年記念展ー多摩の空はつながっているかー」。
本展は、多摩信用金庫が無償で配布する『多摩のあゆみ』にちなんだ企画展示です。

展覧会の様子

『多摩のあゆみ』とは、1975年に創刊され年4回発行している季刊郷土誌。
今年で創刊50周年を迎え、毎号異なる特集テーマを設けて特集を組んでいます。

『多摩のあゆみ』創刊号  提供:たましん美術館

「多摩地域の映画館と映画文化」や「江戸時代の多摩を歩く」など多摩地域と関わる様々な特集を組んでおり、取材時の2025年10月現在、199号まで発行。
多数の郷土史家、研究者、博物館・資料館の学芸員の協力を得ながら、毎号テーマに即して、多摩地域を深堀りする内容になっています。

『多摩のあゆみ』閲覧場所

本展覧会では、実際に『多摩のあゆみ』を会場で閲覧できます。
創刊号〜第120号まではデジタルアーカイブで読むことも可能。

また希望者には着払いにてお送りすることができます。

『多摩のあゆみ』表紙一覧

展覧会会場では、貴重な『多摩のあゆみ』創刊号も展示されており、歴代の表紙を一覧できるパネルも展示されています。

長年、表紙を描いたのは、画家の倉田三郎。
倉田は東京市牛込区市ヶ谷(現在の新宿区)生まれで、黒田清輝らの指導も受け、東京美術学校図画師範科を卒業した画家です。

在学中から二科展に出品したり、三岸好太郎らと春陽会の若手6人による麓人社(1934年に解散)を結成したりするなど、精力的に活動。
20代半ばから約20年間、立川市の東京府立第二中学校(現在の都立立川高等学校)の教師を務めました。

職場の近くということもあり、倉田は立川の下古新田(現在の錦町・羽衣町付近)に住んでいたのですが、その後、亡くなるまでの59年間は小金井市に住居を構えていました。
倉田は膨大な数の風景画を描いていますが、多摩地域を描いた作品も多く残っています。

多摩地域と水の関係

多摩地域には、山梨県から東京都、神奈川県を流れて東京湾へと繋がる多摩川が流れています。
展示では、多摩川や玉川上水、小河内(おごうち)ダムの歴史を語る資料と美術作品が並んでいます。

左・《名勝八景 玉川秋月 玉川鮎汲の図》/歌川豊国(二代) 右・《諸国六玉川 武蔵調布》/歌川広重

こちらは、多摩川と人々の生活の様子を描いた浮世絵作品。
多摩川で鮎漁をする様子(左)と調布で布をさらす様子(右)が描かれています。

多摩川の歴史は古く、万葉集に多摩川で布をさらす姿を見て、愛しい人への思いを募らせたという歌があるほどで、7〜8世紀には「たまがわ」と呼ばれていたそう!

布が川の水に浸り自然に浮き流れる様子は見事な描写。
調布市は元々、布を納税するたづくりが盛んな地域で、現在でも布田など布に関連する地域名が多く残っています。
鮎漁をする周りには民家も描かれており、多摩地域の住民が多摩川とともに生活してきたことがよくわかる2作品です。

多摩川流域に自生する植物を感じさせる作品
玉川上水の資料

玉川上水は全長約43キロの水路です。
羽村市で多摩川の水を取り入れ、なんと江戸まで運んでいたそう!
江戸の水を支えていたのは多摩地域だったことがわかります。

その後、奥多摩町には川や谷をせき止めて水を貯めるための小河内ダムが作られることになります。
小河内ダムは、東京の水道専用のダムとして1957年に完成。

ダムができる前、この辺りには小河内村があり、集落が多く存在していました。

《武州多摩郡小河内温泉畫図》

そして、小河内村には南北朝時代から利用されていた歴史のある鶴の湯という有名な温泉もあり、この浮世絵からは当時、温泉地として賑わっていた様子がわかります。
その後、ダム建設に伴い、小河内村の住人の多くは山梨県や昭島市に移住していきました。

ちなみに、昭島市は東京都で唯一、深層地下水のみを水道水源としている地域。
昭島の地下には、多摩川が長年にわたり形成した厚い砂利層があり、水を通し貯める地層として働き、それによって水が蓄えられているため、地下水を利用できる貴重な地域でもあります!

今回は、たましん美術館で開催中の企画展「多摩の空はつながっているか」について、『多摩のあゆみ』、多摩地域と水のかかわりを示す展示の紹介をしました。
後編では、多摩地域と鉄道の発展や、行楽地、歴史などのコーナーについて詳しくご紹介します!

※今回は取材のため、特別な許可を得て撮影しています。

たましん美術館

住所:東京都立川市緑町3-4 多摩信用金庫本店1階
電話番号:042-526-7788
開館時間:10:00〜18:00(入館は30分前まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は開館し、翌日休館)、年末年始、展示替期間
観覧料:一般500円(※20名以上の団体様の場合100円引き)、高校生・大学生300円(中学生以下無料)、障がい者手帳をお持ちの方と付き添いの方1名・たましんPlus会員(旧「シニア・スクエア」会員)ご本人及びお連れの方1名まで無料
※展覧会によって入館料が異なる場合があります。
https://www.tamashinmuseum.org/

後編はこちら

『多摩のあゆみ』で知る!人々が繋いできた歴史と多摩地域への想い【後編】|東京都立川市

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この記事を書いた人

ChicacoMurayama

【アーティスト/ライター】【神奈川県公認Mediallライター】 幼い頃から絵を描くことが好きで、画家活動を行う。また、読書、執筆、写真を撮ることも好きでフリーライターとしても活動。 作品は独自に研究し生み出した技法のサンドアート。コンセプトは「綺麗な世界、穏やかに心温まる世界」。展示販売、年に数回のワークショップ、ラジオでアートについて話したりアート普及活動も行う。 多めで見やすい写真とわかりやすい等身大の言葉で、アート、美術館・博物館をメインに画材、文具や神社、カフェなどを紹介していきます! 

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