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スポット  |    2026.03.10

江戸街道の実感が湧いてくる!神奈川県川崎市の「大山街道ふるさと館」

江戸時代に整備された、東海道、中山道、甲州街道、日光街道、奥州街道の五街道は、よく知られていますが、そこから枝分かれする脇往還(わきおうかん)と呼ばれる街道も数多く存在しました。

東海道の脇往還である矢倉沢往還(やぐらざわおうかん)は、現在の国道246号線の原形で、東京都の赤坂から神奈川県の大山(おおやま)を結ぶ道として、古くから多くの人に使われてきた街道のひとつです。大山は、常に山上に雲をたたえ雨を降らせることから「あめふりやま」とも呼ばれ、古くから雨乞い、五穀豊穣、商売繁盛の神として親しまれました。

「大山街道ふるさと館」は、大山街道(矢倉沢往還)を舞台に、街道の宿場として賑わった往時と現在の街並を比較しながら、周辺の文化や産業の道のりを実感できる無料の博物館です。

溝の口駅周辺を歩いていて、偶然発見した「大山街道ふるさと館」ですが、展示を見る前と後では、明らかに周辺地域の見え方が変化しました。

今ひとつピンと来なかった江戸街道への理解が深まってきたことも嬉しかったのです。そこで、より多くの人に「大山街道ふるさと館」を訪れてほしいと思い記事を作成することにしました。

「大山街道ふるさと館」の通りは、江戸と相模方面を結ぶ物流の中心だった

訪れた日は、ちょうど企画展「大山詣りと人々のくらし」を開催中でした。企画展をやっている以外の時期は、常設展を実施、地域ゆかりの陶芸家・濱田庄司(はまだしょうじ)の作品や、周辺の郷土資料を中心に、古文書、民具などを展示しています。

入口から展示室までのスロープを歩いていると、「大山街道」の歴史と成り立ちや、時代による変遷が感じられます。

ピンクの矢印(筆者による加筆)が、「大山街道ふるさと館」です。
「明治の終わりころの家並みの様子(高津小学校創立60周年記念誌を参考に作成)」

「大山街道ふるさと館」展示より
「大山街道ふるさと館」展示より

「大山街道ふるさと館」のある街道沿いでは、現代まで脈々と続く老舗のお店や史跡を実際に確認できます。その内のいくつかをご紹介します。

濱田庄司(1894-1978)の生家「和菓子大和屋
かつて「大山街道ふるさと館」に隣接する場所にありました。濱田庄司は、益子(ましこ)を拠点に民藝運動を推進した人間国宝第1号ですが、生涯戸籍を川崎市高津区から移さず、溝口の宗隆寺(そうりゅうじ)に眠るなど、郷土と関わりを持ち続けました。同じく川崎市高津区の出身である小説家・歌人の岡本かの子とは、同時代に同じ小学校に通いました。


川崎市大山街道ふるさと館|大和屋菓子店

「大山街道ふるさと館」は、人間国宝の濱田庄司の作品を所蔵しています。

『飴釉白掛鉢』 濱田庄司作


糀(こうじ)ホールと岩崎酒店(2021年8月に閉店) 
神奈川県川崎市高津区溝口3-11-15
岩崎酒店は、明治中期(1887年頃)に造り酒屋の「糀屋(こうじや)」として創業しましたが、戦時中の国家統制により日本酒の製造が制限されたため、酒類販売店へ転換。現在はクラシック音楽ホールとギャラリーを運営。

糀ホールと岩崎酒店のHP 昔の岩崎酒店


灰吹屋(ハイフキヤ
神奈川県川崎市高津区溝口3丁目14-19
1765年 (江戸時代中期)創業、川崎市溝口に本社のある地域密着型ドラッグストア・調剤薬局。
灰吹屋の歴史 / 灰吹屋薬局

「大山街道ふるさと館 」展示より

岡田屋足袋店
神奈川県川崎市高津区溝口2-10-20
江戸後期に創業、昭和に入ってからは足袋以外にも祭り用品や作業着全般を扱っている。
岡田屋足袋店 – 岡田屋足袋店・足袋・半天・はっぴ専門店

「大山街道ふるさと館」展示より


はかりとお茶の田中屋
川崎市高津区溝口3丁目14‐1田中屋ビル
1760年頃、よろず屋として創業。

川崎市高津区 はかり 計測器 温度計 株式会社田中屋

川崎市高津区の日本茶専門店 田中屋|当店オリジナル『武州茶』や和紅茶など、様々なお茶や関連グッズを取り揃えております。

「大山街道ふるさと館」展示より

いよいよ展示室です。

中央に横たわる巨大な復元太刀は納太刀(おさめだち)と言います。鎌倉幕府初代将軍の源頼朝が、平家打倒の際、大山寺(おおやまでら)に祈願に訪れた際、自らの太刀を奉納したとされ、これにあやかり、江戸の庶民に、大山詣りに納太刀を奉納することが流行したと考えられています。当初は長さ30cmほどでしたが、大きいものであるほど粋であるとされ、中には7mを超えるものも納められるようになりました。

納め太刀 | 伊勢原市

毎年7月に開催される高津区民祭では、大山街道(二子新地駅周辺〜高津交差点付近)を使用し、町内会や地元団体が中心となったパレード、お神輿、屋台などで賑わいます。

江戸庶民の娯楽として親しまれた、歌舞伎、浄瑠璃、寄席、文学などで、「大山詣り」をモチーフにした作品が数多く生まれています。

スロープとガラス窓を駆使した来場者に優しいモダンな建物

建物正面、右側の駐車場スペースを入った先には中庭が広がっています。1992年完成の鉄筋コンクリート造りで、ガラス窓とスロープが特徴的な建物内部を、展示を巡りながら体感できます。

設計を担当した、「富永讓(とみながゆずる)+フォルムシステム設計研究所」のホームページでは、建物の内部構造が公開。建築に関する知識はなくても空間美に浸れます。
川崎市大山街道ふるさと館 | 富永讓+フォルムシステム設計研究所

竣工:1992年
施工:川崎組
延床面積:1094.60㎡
用途:博物館、イベントホール
構造・規模:RC造(一部SRC造)地上4階
(富永讓+フォルムシステム設計研究所HPより抜粋)

中2階へ通じるスロープを行くと、無料休憩できる談話室(ラウンジ)が現れます。右手スロープの手すりに見えるのは、かつて、相模川の鮎を大山街道を通り江戸へ運んだことにちなんだ、鮎のぬいぐるみ「あゆぐるみ」です。

「大山街道ふるさと館」の行き方

東急田園都市線「高津駅」から徒歩5分ですが、JR「武蔵溝ノ口駅」、東急田園都市線・大井町線「溝の口駅」から行く場合は、駅から徒歩1~2分の「ケンタッキーフライドチキン 溝ノ口店」を目印に行くとわかりやすいです。「大山街道ふるさと館」まで、徒歩で7分~10分程度。

「ケンタッキーフライドチキン 溝ノ口店」の右脇の通りを入ります。

見えてくる東急田園都市線の高架下を通り抜けます。

しばらく、道なりに進み、溝口駅入口の交差点を右に入ると大山街道です。

そのまま行くと、大石橋(おおいしばし)が見えてきます。大山街道と二ヶ領用水(にかりょうようすい)が交差する場所です。

二ヶ領用水は、多摩川から水を引いた、江戸時代初期の1611年に完成した約32kmの人工農業用水路。国の登録有形文化財の久地円筒分水(くじえんとうぶんすい)が、二ヶ領用水に沿って左手に800mほど進むとあります。

久地円筒分水とは、二ヶ領用水の水を下流の各地域へ正確に分けるために造られた仕切り設備のこと。詳しい説明は、川崎市のサイトをどうぞ。
川崎市 : 久地円筒分水
川崎市 : 二ヶ領用水 水文化都市川崎の創造

大石橋を渡り、90メートルほどで「大山街道ふるさと館」に到着です。

ホームページでは、ご紹介しきれなかった大山街道周辺の歴史や知識、年間の楽しいイベント情報が満載。ぜひ、一度ご覧ください。

川崎市 大山街道ふるさと館

川崎市高津区溝口3-13-3
電話:044-813-4705
開室時間:午前10時から午後5時
閉室日:年末年始(12月28日から1月4日まで)
ただしその他の期間でも展示替え等で閉室する場合あり。
入場料:無料
川崎市大山街道ふるさと館|トップページ

参考資料

川崎市 2.高津大山街道の特徴と課題

川崎市「溝ノ口に集う人々」 ~多摩川と大山街道に結節する文化~

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この記事を書いた人

まやぎはとこ

広島出身、東京23区在住。 食べること着ることが好きな一方、どケチで優柔不断、そのせいで常に頭が混乱、書くことで正気を保とうとする日々、興味の対象は人間、食べ物や服の好み、趣味、仕事……目の前にいる人になるまでの人生を聞くことが好き。日本を含めた世界中の人々がどんな食べ物をどういうスタイルで食べるのか、何をどう着ているのか、気になります。

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