忙しい日々の中、自然の中でリフレッシュしたいと思っても、遠出する時間はなかなか取れないものです。
そんな時に訪れてほしいのが、川崎市高津区にある「神庭緑地(かにわりょくち)」です。
古代の遺跡が点在するこの緑地には、日常を忘れさせてくれるような静かな竹林が広がっています。
「神庭緑地」を歩く
「神庭緑地」は、およそ2ヘクタールの自然が残る、歴史と自然が重なり合う場所です。
縄文時代から古墳時代、そして現代へと続く「歴史」と「自然」が息づく貴重なスポットとして、2002年に特別緑地保全地区に指定されました。

緑地は「神庭・里山を楽しむ会」の方々によって守られています。歩道や竹林の整備などの日常的な管理のほか、四季折々のイベントも開催されています。

神庭緑地の入り口に立つと、まず目に飛び込んでくるのは急峻な階段です。

用意された杖は、ちょうど最後の一本が残っていました。
さっそく手にとり、階段を上り始めます。

実際に上り始めると、見た目以上の急こう配。杖をつきながら慎重に一歩一歩進みます。

踊り場のベンチで息を整えながら振り返ると、眼下には川崎の街並みが広がり、遠くのビル群と同じ高さにいることに気づきます。
「蟹ヶ谷古墳群」と「神庭遺跡」
頂上は広場になっています。
広場の左手、白い柵で囲われた一角には、こんもりと盛り上がった「古墳」があります。これは6世紀から7世紀ごろに築造された「蟹ヶ谷古墳群」の一部です。
現在、緑地内に確認できるものだけでも4基の古墳が残っており、これらは当時の有力者の墓と考えられています。

また緑地内にある「神庭遺跡」からは、縄文時代から古墳時代にかけての180軒を超える住居跡が発掘されています。あわせて縄文土器などの生活用具も出土しており、この地に数千年にわたり人々が暮らしてきたことを示しています。
この場所は日当たりが良く水はけに優れた台地で、近くを流れる川の恵みも受けられることから、古代の人々にとって暮らしやすい環境だったと考えられます。
「神庭(かにわ)」という地名の正確な由来は、実ははっきりと分かっていません。「神の庭」を連想させるこの名ですが、膨大な数の住居跡や古墳といった歴史的背景を考えると、ここが古くから特別な場所として尊ばれてきたと想像できそうです。
静けさに包まれる竹林
広場の右手には見事な「竹林」が広がっています。

一歩踏み込むと、もうそこは「竹林」の中!
密集した竹が日光を遮り、気温が数度下がったような感覚を覚えます。
竹林の階段をどんどん下っていくと、どこか別の空間に迷いこんだかのような不思議な気持ちになってきます。

やがて平らな場所へとたどり着きます。
外界の騒音はふっと遠のき、葉が擦れ合う「サワサワ」という乾いた音だけが耳に届きます。ここが川崎の住宅街であることを忘れてしまうほどの静寂です。
竹林の空気をゆっくり吸い込むと、心まで軽くなるように感じられます。

すり鉢状の竹林には、伐採された竹が置かれていて、居合わせた小さな子どもたちは、それに乗ったり飛び越えたりしながら楽しそうに遊んでいます。
こうした光景も、「神庭・里山を楽しむ会」の方々が、竹林を丁寧に手入れされているからこそ生まれるものなのでしょう。

竹林を抜け、反対側の階段を上ると、「神庭・里山を楽しむ会」の拠点となっている作業小屋が見えてきます。軒先には、ワークショップで作られたリースなどの飾りが並んでいます。

そういえば、竹林で出会った方が、「昨年末に正月飾りを作るイベントに参加して、素敵なリースができたのよ」と話していたことを思い出します。
おわりに
神庭緑地は単なる市民の憩いの場ではなく、積み重なった歴史を感じながら心身をリセットできる貴重な空間です。
急な階段を下りて杖を元の場所に戻し、住宅街へと戻る頃には、先ほどまで見ていた日常の風景が少し違って見えるはずです。
尚、入口は3カ所あり、急な階段を通らず、頂上の古墳のある広場へ直接アクセスすることもできます。階段や高いところが苦手な方はそちらから行かれることをお勧めします。
基本データ
神庭緑地(かにわりょくち)
所在地: 神奈川県川崎市高津区蟹ケ谷119-1
入園料: 無料
アクセス
▪東急線・横浜市営地下鉄線「日吉駅」より東急バス「さくらが丘」行き、「さくらが丘」下車、徒歩約6分 (急な階段を通らずに行けるルートです)
▪JR線・東急線「武蔵小杉駅」より川崎市バス「蟹ヶ谷」行き、「明津」下車、徒歩約6分。
その他、東急線元住吉駅、JR線武蔵中原駅、武蔵新城駅からのバス便もあり




