愛知県蒲郡市にある『竹島水族館』。見て・ふれて楽しめる深海生物たちやユニークな解説ポップが人気の水族館です。
一時は廃館の危機に追い込まれるほどの閑散期を乗り越え、竹島水族館ならではの魅力を築き上げてきました。そして、2024年10月12日に総工費約7億円をかけてリニューアルオープン。
そんな竹島水族館の魅力や取り組みについて、水族館館長の小林さんにお話をうかがいました。記事は前編と後編に分かれています。今回のテーマは「リニューアル後の変化」です。
リニューアル後の変化|どのように変わった?
リニューアルによる大きな変化は、展示エリアの拡大と展示のスケールアップです。
リニューアル後の敷地面積は、従来の約2倍に広がりました。以前はお世辞にも広いとは言えない館内でしたが、よりゆったりと余裕のある配置で水槽が展示されています。
「いままでは小さな水槽が並んでいたので、どうしても館内が渋滞してしまうこともありました。水族館全体が広くなったので並ばなくても入れますし、ゆっくりと楽しんでもらえるのはとても大きな変化です」(小林館長)
深海の世界に没入できる大水槽
リニューアルでとくに注目したいポイントは、水量120トン・横幅7メートルの深海大水槽です。大きなタカアシガニも悠々と動き回れるほどの広さがあります。
「深海の水槽としては、日本で2番目くらいの大きさです(美ら海水族館の次くらい)。とてもこだわりがあるので、深海大水槽を見るだけでも竹島水族館に来る価値があるかなと思います」(小林館長)
水槽内の壁や天井を見せないような工夫も施されているため、暗闇の先にどこまでも広がる深さや奥行きも感じられました。まるでリアルな深海に潜り込んだかのような没入感です。
また、水槽内の注目ポイントは、深海に沈むクジラの骨です。海面付近を泳いでいるクジラは、一生を終えると深海に沈んでいきます。そして、沈んだクジラを深海の生き物たちが食べることで、骨だけが残っていく。
そんな生態系や世界観を再現したレイアウトによって、深海の世界にますます興味を惹かれました。ただ水槽を眺めるのではなく、深海の世界を想像してみるのも没入感を高めるポイントです。
深海大水槽の裏側には、タカアシガニを下から見上げられる仕掛けもありました。海底に生息するタカアシガニを「下から見る」なんて初めての経験です。
「深海の世界に浸れるように、さまざまな仕組みに力を入れました。タカアシガニを見上げられる水槽は、世界中どこの水族館にもありませんよ」(小林館長)
取材の際に深海大水槽のバックヤードを見学させてもらいました。深海の環境を再現するための暗い室内では、首振り扇風機に取り付けられたライトが異彩な存在感を放っています。
どうやら、水槽内を照らすライトの動きや色のグラデーションを生み出すため、首振り扇風機が活躍しているそうです。
「光の当て方や動かし方には、とてもこだわっています。サンゴがキラキラと明るい水槽に比べて、やっぱり暗い水槽ってなかなか見てもらえないんですよ。あまり動き回らない深海の生き物に注目してもらうため、しっかりと世界観を演出できるように仕組みを考えています」(小林館長)
可愛らしい動物たちも仲間入り
新館には、水辺で暮らす動物たちのエリアも設けられています。
リニューアル前の旧館では、お客さんの渋滞が発生していたカピバラエリア。プール付きの広々とした新館エリアに引っ越して、観覧スペースも家族で並んで見られるほどに広がっています。
お気に入りの木箱にすっぽりと収まっていたおかげで、カピバラを至近距離で観察できました。おそらくエサ入れ用の木箱ですが、気にしない様子もカピバラらしさなのかもしれません。
新館のアシカプールには、オタリアの「ラブ」が暮らしています。スイスイと泳ぎまわる姿はもちろん、遊び相手を探しているかのように近寄ってきてくれる人懐っこさも人気です。
アシカショーで盛り上がっていた旧館のプールには、ミナミアメリカオットセイの「カイ」と「フウ」が常設展示されています。
リニューアル後の環境変化に慣れるため、一定期間はショーパフォーマンスを休止中です。元気なパフォーマンスを披露するため、現在はトレーナーさんとのスキンシップの様子を公開しています。
「アシカのプールも広くなりました。広いスペースでゆったりと見やすくなっただけでなく、動物たちが悠々と暮らしている姿も楽しんでもらえます」(小林館長)
旧館のカピバラがいたスペースには、コツメカワウソが仲間入りしていました。スヤスヤと寝ているタイミングでしたが、可愛らしい姿を堪能できました。
従来の人気展示も健在
リニューアルによって、新たな魅力を楽しめる新館エリアがオープンしました。一方で旧館エリアは、従来の「竹島水族館らしさ」が残る人気展示も健在です。
竹島水族館(リニューアル前の旧館)といえば、インパクトのある展示やアットホームな雰囲気が人気を集めています。お世辞にも大きいとは言えない竹島水族館も、その人気や注目度は大きな水族館に負けていません。
飼育員さん手作りの解説ポップ「魚歴書」は、竹島水族館の人気コンテンツです。手書きのゆるいイラストとユニークな解説が注目を集め、魚歴書を楽しみに訪問するお客さんも少なくありません。
魚歴書を読んでみると、けっこう「変なこと」も書かれています。しかし、読み終わるころには、なぜか生き物に詳しくなっているから不思議です。
魚歴書をはじめとする竹島水族館の解説ポップは、水槽の周りを埋め尽くすほどにバリエーションが豊富です。たとえ生き物に詳しくなくても、解説を読みながら誰でも楽しめる工夫が施されています。
「竹島水族館としては、生き物に興味をもってもらう、好きになってもらうというきっかけづくりを大切にしています。たとえ生き物を知らなくても、その場の雰囲気を存分に楽しめるような工夫が竹島水族館の魅力です」(小林館長)
インパクトのある水槽レイアウトも竹島水族館ならではの魅力です。どこを見ても数え切れないほどのウツボが顔を出す気持ち悪さ(誉め言葉)は、誰かに伝えたくなるほど記憶に残ります。
ウツボ軍団の水槽を見ると、誰もが「うわぁ…」と声を漏らします。しかし、なぜか目を離せなくなってしまう不思議な水槽です。
「リニューアル後に変化した部分も多くありますが、人気のある水槽展示は変わらずに残しています。楽しんでもらっていた従来の要素が消えてしまわないように、じっくりと考えながらリニューアルしています」(小林館長)
狭いスペースを好むカサゴの習性を活かしたカサゴマンション。ホームセンターで買ったブロックの手作り感が「これぞ竹島水族館」という安心感すらあります。
「旧館は少し変化したところもあるのですが、常連さんたちが来ると”落ち着く”とか”懐かしい”とか言ってもらえます。事務所が新館に移ったので、新しい展示を楽しめるスペースも増えていますよ」(小林館長)
見どころが増えた竹島水族館へ遊びに行こう!
今回は竹島水族館のリニューアルによる「展示の変化」を紹介しました。新館エリアの注目ポイントは、深海の世界に没入できる深海大水槽。タカアシガニを下から眺められる竹島水族館ならではの展示手法も見どころです。
「すごく気軽に来られる水族館なので、ふらっと足を運んでいただけるだけでも楽しめます。アットホームな雰囲気も大切にしていますので、飼育員たちにも気軽に話しかけてみてください」(小林館長)
普段は見られない深海の生き物を身近に感じながら、リニューアル後の非日常的な海の世界を体感してみましょう!後編の記事では、竹島水族館の魅力をさらに深堀りしていきます。
施設情報
竹島水族館
住所:愛知県蒲郡市竹島町1-6
電話番号:0533-68-2059
営業時間:9:00~17:30
休館日:年中無休(設備メンテナンスの臨時休館あり)