愛知県蒲郡市にある『竹島水族館』。前編の記事では2024年10月12日のリニューアルについて、取材した内容をもとに紹介しました。
後編では、竹島水族館の見どころや「もっと楽しむためのコツ」など、より深掘りした内容を館長の小林さんにお伺いしました。
竹島水族館の見どころ
愛知県豊橋市出身の私は、幼少期から大人になったいまでも竹島水族館に足を運んでいます。年間パスポートを所持していた時期もあり、リニューアル後の変化や以前と変わらない魅力も身をもって実感しています。
そこで、館長の小林さんに取材した内容や私自身の観点から、竹島水族館の見どころをピックアップしてみました。実際に足を運んだときに「注目したいポイント」として、ぜひ参考にしてみてください。
世界最大の甲殻類「タカアシガニ」
竹島水族館の見どころといえば、やはり世界最大の甲殻類「タカアシガニ」の展示です。ハサミを広げた姿を至近距離で観察すると、その大きさと迫力に圧倒させられてしまいます。
タカアシガニは深海に生息しており、本来であれば展示が難しい生き物です。しかし、蒲郡市の漁師さんとの協力関係により、竹島水族館は健康的で大きなタカアシガニの展示を実現しています。
実際に竹島水族館のタカアシガニを観察してみると、大きな脚を広げ、活発に歩き回る姿が印象に残りました。
「やっぱり一番の見どころは、竹島水族館のメインであるタカアシガニですね。匹数もたくさんいますし、まだ赤ちゃんのタカアシガニも展示しています。新館の深海大水槽では、下から眺める展示も楽しめますよ」(小林館長)
多種多様な深海生物
竹島水族館には100種を超える深海生物が展示されています。そのほとんどが初めて見るような生き物ばかりで、インパクトのある見た目や不思議な動きが印象的でした。
竹島水族館がある蒲郡市は「深海魚の町」として有名です。三河湾沖の深海から鮮度が高く豊富な深海生物が水揚げされるため、なかには「今日見られたことが奇跡!」と紹介されるほど激レアな生き物も展示されています。
「深海生物はすごく特徴がありますし、じっくり見てもらうと面白いはずです。蒲郡市の漁師さんの協力もあって、ほかの地域ではなかなか見られない生き物もたくさんいます。名前がわからなかったり図鑑に載っていなかったり、ぜひじっくり見てもらいたいですね」(小林館長)
深海生物のタッチプール「さわりんぷーる」
一般的なタッチプールといえば、ヒトデやナマコなどの浅瀬の生き物が定番です。しかし、竹島水族館のタッチプールでは、深海生物を見るだけでなく「さわって」楽しめます。
実際にタカアシガニにふれてみると、甲羅のゴツゴツとした感触が伝わりました。大きくて少し怖さもありましたが、大人しくじっとしていてくれました。
タッチプールには、さまざまな深海生物がいます。トゲトゲの甲羅が特徴的なイガグリガニは、つかんでみると少し痛かったです。
いまや深海生物の定番となったオオグソクムシもさわれます。私は少し苦手なので躊躇してしまいましたが、興味のある人はぜひタッチしてみてください。
「深海生物の展示は、冬場がベストシーズンです。深海と表層の水温差が減るので、水族館に届く深海生物のダメージが少なくなります。無事に水槽に入って見てもらえる確率が高まるので、より生き生きとした姿を楽しんでもらえます」(小林館長)
竹島水族館をもっと楽しむコツ
「せっかく竹島水族館に行くなら最大限に楽しみたい!」
そんな要望に応えるため、館長の小林さんに竹島水族館を「もっと楽しむためのコツ」をお伺いしてみました。
生き物をじっくりと観察してみる
「まずは生き物をじっくりと観察してみてください。同じ種類の生き物でも、しぐさや泳ぎ方の違いに気づきます。あるいは表情やしぐさを見て、知り合いに似てるかも?なんて考えてみるのも面白いかもしれないですね」(小林館長)
生き物をじっくりと観察してみると、眺めるだけでは気づけない個性や行動を発見できます。横から見たり正面から見たりと、見方を変えるだけでも伝わるインパクトは雲泥の差です。
「生き物を見ながら何を考えているんだろう?と、自分なりに想像してみるのも面白いかと思います。 そういった考えを補助するために解説ポップが役立ちます。たくさん貼ってあるので、読みながらヒントを発見してもらえればなと」(小林館長)
カニの仲間を観察してみると、高い場所が好きだったり狭い場所が好きだったりと個性が分かれます。高い場所が好きなツノガニの解説ポップには「脱走しようとします」の文字が。
あらためて撮影してみた写真を見ると、どことなく水槽の上を狙っているようにも見えました。
飼育員さんに話を聴いてみる
飼育員さんに気軽に声をかけやすい雰囲気も竹島水族館の魅力です。館内のアットホームな雰囲気を大切にしており、ときには飼育員さんから声をかけることもあるそうです。
「やっぱり水族館が上手くいかなかった時期は、お客さんのことを考えていなかったのだと思います。生き物好きな集団として自分たちばかりが楽しんでしまい、来てくれる人には魅力が伝わらなかった。だからこそ、魅力や楽しさを伝える視点を大切にしています」(小林館長)
館内を歩いていると、飼育員さんの取り組みや実績を紹介する展示も楽しめます。なかには「へんないきもの大王タイトルマッチ」で優勝した生き物?(飼育員)もいるそうですよ。
飼育員さんと館内ですれ違うタイミングも頻繁にあります。気軽に声をかけて質問してみると、生き物への興味が深まるきっかけになるかもしれません。
「何回も飼育員に会いに来る常連さんもいます。少しだけ秘密のことをこっそり教えてあげたりとかもできますので、 遠慮せずにどんどん話しかけてください」(小林館長)
竹島水族館オリジナルのグッズに注目してみる
「リニューアルでグッズコーナーも広くなり、すごく充実しています。ちょっとした工夫やユーモアを入れたオリジナルグッズもたくさん増えました」(小林館長)
竹島水族館のオリジナルグッズは、ほかでは見られないほど個性的です。リニューアルオープンで拡大されたグッズコーナーには、竹島水族館でしか買えない雑貨やお菓子も充実しています。
「深海魚やウツボを使った商品なんかも人気です。外箱だけを変えて中身はありきたりとならないように、自社開発した製品もたくさん販売しています」(小林館長)
取材後に私もオオグソクムシの粉末を使用した「超グソクムシ煎餅」と、メダカの卵がモチーフの飴「メダカの産卵」を購入してみました。
超グソクムシ煎餅は、パッケージデザインのインパクトがすごい。食べるのを少しだけ躊躇しそうでしたが、味はしっかりと美味しかったです。インパクトのあるパッケージにも竹島水族館のこだわりが込められています。
メダカの産卵は、卵の成育過程を表現した飴のデザインがリアル。パッケージにもヒレが動くギミックが仕込まれていて、作り込みのこだわりを感じました。
「何を売るか、どんなものを置くかということを飼育員たちが考えながら運営しています。特徴的で面白いグッズに注目していただき、わざわざ買いに来てくれるお客さんもいますよ」(小林館長)
蒲郡市の魅力を伝える竹島水族館
竹島水族館には、さまざまな深海生物が展示されています。その展示種数は、日本一と言えるほどです。
竹島水族館がある蒲郡市は、県内で唯一「沖合底引き網漁船」によって深海魚が水揚げされています。豊富な水産資源は蒲郡市の魅力であり、竹島水族館がこれほどまでに深海生物を展示できる要因です。
そして、竹島水族館には「蒲郡市の魅力を伝える役割がある」と、小林館長に教えていただきました。
「水族館には、誰でも遊びに行けるという特徴があります。子どもから大人まで、一人でも家族でも、来る人を選びません。そして水族館に地元の名産である深海生物を展示することによって、より多くの人に蒲郡という場所の特徴を伝えられます」(小林館長)
竹島水族館があることで「蒲郡の良さを発信できる」という考え方は、取材をしていくなかで私自身にとっても大きな学びでした。竹島水族館を楽しむことで、ぜひ蒲郡市を「深海魚の町」として知ってほしいとも思いました。
「遠方から来るお客さんには、水族館をとおして蒲郡という町の魅力を伝えられます。地元の方々には、蒲郡を誇りに思ってもらいたいです。そのつながりをつくる場所として、竹島水族館が貢献していきたいなという想いがあります」(小林館長)
竹島水族館で深海生物を見て・ふれて・好きになろう!
竹島水族館へ遊びに行くと、タカアシガニをはじめとする多種多様な深海生物に出会えます。水槽を眺めるだけでなく、解説ポップを読んでみたり実際にふれてみたりと、さまざまな角度から楽しめます。
竹島水族館でしか見られないような「激レア」な深海生物も少なくありません。インパクトの強い展示を満喫すれば、生き物に興味をもつきっかけになるはずです。
「竹島水族館には、わかりやすくて面白い解説がたくさんあります。じっくりと読んでもらって、楽しい会話をするきっかけになればいいなと思いますね。カピバラとかカワウソとか、魚以外の生き物もたくさんいますので、お気に入りを見つけてじっくりと観察してみてください」(小林館長)
施設情報
竹島水族館
住所:愛知県蒲郡市竹島町1-6
電話番号:0533-68-2059
営業時間:9:00~17:30
休館日:年中無休(設備メンテナンスの臨時休館あり)