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もの・こと  |    2025.08.14

子育ての「よりみち」しませんか? 発達障害のある子を持つ家族の心を灯す、温かな居場所|石川県金沢市

「うちの子、周りの子と少し違うかも…」。子育て中の不安が、発達障害の診断で孤独な戦いに変わることも。誰にも言えない悩みを抱え、情報に惑わされ、一人で途方に暮れることはありませんか?そんな保護者の心にそっと寄り添う、発達障害の保護者・家族の会「よりみち」。子育ての途中でほっと一息つける、その活動と温かな想いに迫ります。

孤独な闘いから生まれた「つながりの場」

孤独な闘いから生まれた「つながりの場」

「よりみち」が生まれたきっかけは、スタッフの皆さん自身の経験にありました。

「同じような立場の保護者仲間と出会うまでは、我が子が周りのお子さんたちとは異なるために、孤独に闘ってきました」

そう語るスタッフの皆さん。しかし、同じ発達障害の子を持つ親たちとの出会いが、彼女たちの心を大きく変えました。相談し、励まし合い、共感し合う。そんな定期的な集まりが、明日へのエネルギーになっていると実感したのです。

子どもたちが少しずつ成長し、落ち着いてきた頃、スタッフの皆さんの心に新たな想いが芽生えます。
「自分たちがこれまでこの場に救われてきたように、今まさに迷い悩んでいる保護者さんたちのための場があるとよいのでは…」
その想いが形となり、「よりみち」は始まりました。

「子供が診断を受けた時、とにかく情報が欲しかったです。同じようなお子さんがいる方とつながり、様々なお話を伺う中で共感できること、そして出来ないことが自分の中にある事に気付き、それを改めて考える事で自分がどのような親になりたいかが形作られていきました」

子育てに絶対的な正解はありません。だからこそ、多様な価値観や経験に触れることが、自分だけの「納得できる選択」を見つける羅針盤になります。「同じように悩んでいらっしゃる方々がそれぞれの幸せの形をお互いに見つけ合えるのではないかと思いました」スタッフの皆さんのそんな願いが「よりみち」の原点にはありました。

気軽さと安心感を大切にした「よりみち」のカタチ

「よりみち」が大切にしているのは、参加者の心の負担を限りなく軽くすること。

気軽さと安心感を大切にした「よりみち」のカタチ

「それぞれが我が子の事で精神的負担を抱えているので、出来るだけ負担を軽くし、また同じように会を立ち上げたい人が『これなら自分にでも出来そう!』と思えるようにハードルを低くしております」

その言葉通り、活動は至ってシンプルです。毎月1回、座談会を開催。そこは、日常生活ではなかなか口に出せない発達障害に関する悩みを、同じ立場の保護者同士が心おきなく語り合える貴重な空間です。

参加者が気軽におしゃべりできるよう、会場にはちょっとしたお菓子が用意されています。お茶を飲み、お菓子をつまみながら、和やかな雰囲気で話は弾みます。

参加者が多い日には3〜4人の少人数グループに分かれる配慮も。大きな声で話すのが苦手な人でも、気兼ねなく心の内を明かせるように工夫しています。

参加対象は、発達障害のある方の保護者であれば誰でも歓迎。親御さんはもちろん、お孫さんのことで悩む祖父母の方も参加しています。

子どもの年齢も、就学前の幼児から就労に悩む20代〜40代の成人までと幅広く、様々なライフステージの悩みが共有されます。匿名での参加も可能で、「他言無用」のルールが徹底されているため、安心して参加できる心理的安全性が確保されています。

「ただの失敗」が「有益な事例」に変わる場所

「ただの失敗」が「有益な事例」に変わる場所

「進級や進学、就労といった環境の変化に不安を抱えていた子どもが、楽しく平和に過ごしている様子を聞くときは、我が事のように嬉しい。そして、最初は悩み苦しそうに参加していた保護者さんが、回を重ねるごとに笑顔を取り戻していく姿は、何よりのやりがいです」

勇気を出して初めて参加した人が、他の保護者とつながり、会が終わっても話が尽きない様子を見ると、「会を開催してきて本当に良かった」と実感されるそうです。

参加者からよく聞かれるのは、学校での対応の難しさ。大多数の定型発達の子どもに合わせて作られた環境が、発達障害のある子にとっては辛く感じられることです。

そんな時、学校や子どもにどう向き合えばいいのか。その答えを「よりみち」が直接提供するわけではありません。

「私たちがお悩みを解決できるわけではありません。ですが、同じ立場同士でお話ししていくことで、選択の幅を広げたり肩のチカラを抜いたりするきっかけになればと思っています。そして、何より『保護者さんご自身』を大切にしてほしいと願っています」と、保護者へのあたたかなメッセージも印象的でした。

子どものことに注力しがちな毎日の中で、少しだけ自分のための時間を持つ。「ご自愛」を意識してほしい、というメッセージは、日々奮闘する保護者の心に深く響くでしょう。

スタッフの皆さんは、自身の経験を振り返り、語ります。「自分が色々やって来た中で失敗も多々あります。自分一人ではただの失敗ですが、会の中で話す事で他の誰かにとって有益な事例となることもあり、経験の共有がとても大事だと感じます」

一人で抱えれば「失敗」で終わってしまうことも、仲間と共有すれば誰かの未来を照らす「知恵」に変わる。ここには、同じ悩みを持つ人々がつながる「ピアサポート」の真髄があります。

誰もが安心して「よりみち」できる社会へ

「地域の中で『発達障害がある』ということをオープンにするには、まだまだ勇気が必要だと感じています」

誰もが安心して「よりみち」できる社会へ

スタッフの皆さんは、社会の現状を冷静に見つめます。だからこそ、当事者の保護者同士が安心してつながれる「よりみち」のような場が求められているのでしょう。

「もしかしたら、発達障害についてオープンにすることが当たり前の世の中になれば『よりみち』は必要なくなるかもしれません」その言葉には、いつか誰もが孤立することなく、ありのままで生きられる社会への強い願いが込められています。

参加を考えている方へのメッセージ

「初めての場に参加することはとても勇気がいることだと思います。でも、勇気を出して繋がってみてください。同じ立場の保護者同士だからこそ、得られるものがあると信じています。友達とお茶を飲みに行くような気楽さで『よりみち』で明日へのエネルギーをチャージしにいらしてください。お待ちしています」

参加を考えている方へのメッセージ

「参加者の様々な価値観、考え方に触れ考える事できっと自分なりの幸せの形が見えてくると思います。他の人とは違ってもいい。是非色々な方とつながっていただきたいと思います」

取材を終えて

子育てという長い旅路。もしあなたが今、少しだけ道に迷い、立ち止まりそうになっているのなら、あなたの気持ちを分かってくれる仲間がいる「よりみち」に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。そこにはきっと、再び前を向いて歩き出すための、優しい光が灯っていることでしょう。


【活動情報】
発達障害の保護者・家族の会「よりみち」
活動内容や開催日時の詳細は、公式Instagramをご確認ください。
Instagram: https://www.instagram.com/yorimichi_asdadhd/

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この記事を書いた人

松永 つむじ

プロライターチーム「TSUMUJI Writing Studio」代表。車好きの先生Webライター&エディター|愛車はスイフトスポーツMT|Lancers 認定ランサー|元予備校講師|フリーランス| 執筆ジャンル:車、旅行、英語、教育、学習、生活、恋愛、家庭など| 女性の自立応援のひとつとして、「ライター」という働き方を紹介し、育成する活動も行っています。

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