筆者の生まれ故郷の岡山県岡山市東区の瀬戸町宗堂(そうどう)には非常に珍しい桜があります。地名から名づけられた「宗堂桜」です。江戸時代から管理、保全されている宗堂桜は毎年4月中旬ごろに可憐で美しい花を咲かせます。
実は、県の天然記念物にも指定されるほど希少性が高い桜です。
今回は、宗堂桜の悲しい伝説や希少性について徹底解説しますので、ぜひ花見シーズンにお越しくださいね。
宗堂桜はどこにある?
宗堂桜があるのは、岡山県岡山市東区瀬戸町宗堂という場所です。岡山市の東、備前焼で有名な備前市の隣にあります。
宗堂桜は、妙泉寺というお寺の寺跡に咲く桜です。妙泉寺は、今から360年ほど前に廃寺になった日蓮宗不受不施派(にちれんしゅうふじゅふせは)のお寺となります。毎年、春には住職のお墓の近くで美しい花を咲かせます。
なお、妙泉寺跡は、別の記事で紹介した宗堂の笹埜醤油さんのすぐ近くもあります。
笹埜醤油店についての記事もご覧ください。
宗堂桜が天然記念物に指定されている理由
宗堂桜は、特殊な八重桜(シロヤマザクラの赤芽複弁をもつ品種)であり、60枚ほどの花弁のうち、内側の20枚ほどが反転し開き切らないという特徴があります。
日本中を探してもこのような八重桜の例はなく、宗堂だけに存在するため、その地名から「宗堂の桜」として昭和31年に岡山県の天然記念物に指定されました。
なお、天然記念物に指定されているものは、個人宅の庭に植えられている2本の樹木になります。本当に見事な桜です。撮影する際は、住んでいる方に許可を取ってからにしてくださいね。お互い気持ちよく観光しましょう。
宗堂桜にまつわる悲しい伝説とは?
妙泉寺は日蓮宗不受不施派のお寺でした。日蓮宗不受不施派とは「法華経信者以外からのほどこしを受けず、ほどこしもしない」という主張を続けた日蓮宗の一派ですが、権力者に服従しなかったためキリスト教と共に迫害や弾圧を受けていました。
妙泉寺の住職である雲哲院日鏡(うんてついんにっきょう)は、日蓮宗不受不施派を開いた日奥上人の弟子であり、非常に徳が高いお坊さんでした。伝承によると、害虫の被害や水不足などをたちまち解決するといった霊験あらたかな僧侶であり、農民たちからとても慕われていたそうです。
あるとき、池田藩主に会食に招かれた日鏡は死を覚悟して出席しましたが、やはり毒を盛られてしまいます。それでも、必死に寺まで戻り、仁王門のあたりで息絶えたそうです。
仁王門付近の参道には日鏡が植えた桜並木がありましたが、日鏡の死を悲しんで悼み、それ以降、これらの桜は花びらを全部開ききらずに咲くようになったのでした・・・。
そして、1666年に廃寺となりましたが、その他の岡山県下にあった日蓮宗不受不施派のお寺も池田藩の弾圧によって次々と廃寺になりました。
また、宗堂桜は他の土地に移設すると本来の淡いピンクの色合いが出なくなるなど、宗堂の地でしか特性を保てないことも神秘性を高めています。
宗堂桜について
宗堂桜は直径3cmほどの可憐な花を咲かせますが、ぼんぼりのようなボリュームがあるのが特徴の1つです。ソメイヨシノと比べると、八重桜であるため花弁が多く、内側の花弁が反転するのがとても珍しく、伝説と相まって人気があります。
毎年、4月中旬になると多くの見物客が訪れる知る人ぞ知るレアな観光スポットです。私もよく訪れて花を楽しんでいます。
宗堂では花見の季節になると、「万の富を探す会」のメンバーの方がボランティアで無料観光案内をしてくれます。宗堂桜が見頃を迎える直前には、ボランティアの方が現地に十数名集まり、解説のポイントなどを確認しつつ練習されています。
見頃を迎える頃に「宗堂桜祭り」が開催されますが、露店などは出ませんので、お弁当や飲み物はご持参ください(すぐ近くにセブンイレブンがあります)。
宗堂桜祭りの開催中は、観光ボランティアの方から宗堂桜の説明を聞きながら桜を観賞できます。観光ボランティアについては、瀬戸町観光文化協会に問い合わせしてくださいね。
【宗堂桜の情報】
住所:岡山県岡山市東区宗堂1010
連絡先:080-1948-8894(瀬戸町観光文化協会、受付時間は 9:00~17:00)
開花時期:4月中旬ごろ
入場:無料、自由に24時間出入り可能
妙泉寺跡にはライトなどの照明設備はありませんので、夕方以降に行かれる場合は、懐中電灯を持参してください。夜間は近所迷惑にならないように配慮しましょう。
岡山の桜でもトップクラスの宗堂桜を見に行こう!
岡山にはいくつもの桜の名所があります。真庭市の「醍醐桜」や新庄村の「がいせん桜」などは非常に有名ですが、宗堂桜はレア度では1番といえるでしょう。
地域の方々や「万の富を探す会」のメンバーが宗堂桜を守るため、地道に植樹や保全活動を続けており、これからも地域の宝、岡山県の至宝の桜が存続することを祈ります。
妙泉寺跡には、約70本の宗堂桜だけでなく、ソメイヨシノや八重桜、しだれ桜など、いくつもの種類の桜が植えられ大切に育てられているので桜の種類の違いを観察することも可能です。
なお、10台ほど停車可能な専用駐車場がありますが、見頃の時期は多くの見物者が訪れるため、最寄りの万富駅やキリンビール岡山工場からシャトルバスが運行されます。
今年(2024年)は、地区の魅力を知ってもらおうと、紙芝居で宗堂桜の伝承を伝える企画もあったそうです。
花見後は、近所の笹埜醤油店でおいしい醤油やだし醤油を買って帰りましょう!
おすすめは、「岡山白桃めんつゆ」で、うどんやそうめんによく合います。気さくな5代目店主が商品について詳しく教えてくれるので安心です。
それでは、ぜひ岡山の伝説を巡る旅にお越しくださいね。