高槻市・摂津富田駅近くに、地域の人が安心して足を運べる助産院があります。その助産院を運営するのが、院長の元木彩子さん。
産婦人科でも現役で助産に携わりながら、「親や子どもたちがいま本当に必要としている支援は何か」を考え、日々活動の幅を広げてきました。そうした取り組みの中でも、彩子さんが近年とくに力を入れているのが「性に関する学び」です。
お話を伺う中で、私自身が持っていた性教育のイメージも大きく変わる場面がありました。この記事では、彩子さんがどんな思いで活動しているのか、その背景にある考えを紹介します。まずは彩助産院のふだんの活動から見ていきましょう。
彩助産院ではどんなことをしている?

子育て経験のある方なら、産婦人科で助産師さんに母乳相談や乳房ケア、育児相談などでお世話になった方は多いでしょう。彩助産院でももちろん、そういった相談に対応しています。院内にはよもぎ蒸しもあり、妊娠中の方も妊娠中ではない方も、皆さんが身体を温めてデトックスできるようになっていました。
ただ、彩助産院が行っているのは、これだけではありません。
特に力を入れておられるのは、性教育です。
性教育と聞くとどんなイメージを思い浮かべますか?「身体のつくり」「性感染症」「避妊」などのイメージを持たれる方が多いのではないでしょうか。私もその一人です。
彩子さんから「性教育に力を入れています」と伺ったときは正直、「学校で習った性教育の授業みたいな感じかな?」と思っていました。ところが、実際に話を伺うと、思っていた以上に幅広いテーマを扱う教育なんだということに気付きました。
なぜ性教育なの?

彩子先生は9歳と5歳の2児のお母さんです。
2人目を妊娠中、長女ちゃんが3歳の頃に「ママのお腹はどうなっているの?」と興味を持ち始めました。しかし、当時の彩子先生は3歳の小さな子にうまく話すスキルはありませんでした。そのため、看護学生に話すかのように胎児の成り立ちを話したり、長女ちゃんが生まれたときのDVDを見せたりしたそうです。
「本当にちゃんと伝わるのだろうか?」と半信半疑ながらも、当時は聞かれたから答えようとの思いで説明しました。「だけど、長女がすごく理解してくれたんですよね」と話す彩子さん。
3歳でこんなに理解してくれるなら、もっときちんと話した方がいいのではないかと思ったのが性教育に力を入れようと思ったきっかけでした。
それだけでなく、毎日のように性被害・性犯罪のニュースが報道されており「今すぐに性教育を始めなければ」という思いで、性教育についての学びを深めていかれたそうです。彩子さんが性教育に力を入れるようになった背景には、自身の子育てでの気づきがありました。
彩子さんが伝える性教育とは?

こうした経験から、彩子さんが伝える性教育は「体の仕組み」だけにとどまりません。人との境界線や同意、自己決定権など人間関係の土台を作る人権教育になっています。
「性教育は、自分と他人の境界線を知ることです。
水着で隠れる部分は自分だけの大切な場所であり、嫌なことは『嫌』と言っていい。自分の体は自分のものだと教えることが、将来的なDV被害や性被害を防ぐことにつながります」と彩子さんは言います。
例えば、同意のない暴力や理不尽な扱いは、どんな関係性であっても許されないこと。それは親子関係や学校の友達関係でも同じです。
「子供の頃から『人権』の感覚を持っていれば、誰かに傷つけられたときに『それはおかしい』と気づける。自分を守るための知識なんです」
性教育の現状と課題とは?

しかし、彩子さんが取り組む「包括的性教育」を広げていくには、日本ではまだ大きな壁があります。
「学校では30年前に作られた『はどめ規定』がいまだに残っていて、性交や受精の過程について詳しく教えることが制限されているんです。過去の政治的な背景や事件の影響で、現場の先生たちも萎縮してしまっている現状があります」
世界基準から見れば当たり前の知識も、日本ではタブー視されがちです。オランダなどの性教育先進国では、幼少期から教えることがスタンダードになっていますが、日本はまだまだです。
「学校で教えられないなら、家庭や地域でカバーするしかない」と彩子さんは語ります。だからこそ、助産院のような場所が、公教育では手の届かない部分を補う重要な役割を担っているのです。
病院・助産院だけでなく教育機関でも

現在の彩子さんの活動は病院や助産院の中だけにとどまりません。「家庭だけで伝えるのが難しいなら、私が伝えに行きます」というスタンスで、地域の保育園や幼稚園、小中学校での講演活動にも力を入れています。
講演では、年齢に合わせた伝え方を大切にされています。
小さなお子さんたちには「プライベートゾーン」の話を中心に、「自分の体を守る方法」や「嫌なことは嫌と言っていい」というメッセージを。思春期に差し掛かる学生たちには、体の変化の話はもちろん、SNSでのトラブルやデートDVなど、リスクから身を守るための知識も伝えています。
学校でトラブルがあった際に、先生方からSOSをもらい、学生たちに性教育のお話に行くこともあるそうです。しかし、それでは遅いんですよね…。「小さいうちから当たり前のように性教育の知識を頭に入れておくことが、大きくなってからのトラブル防止にもつながる」と彩子先生は言います。
取材後記

彩子さんに取材をした数日後、自治体のPTA主催で性教育の講演会がありました。講師はなんと彩助産院の彩子さん。
私自身、これまでは「子どもに性教育といった内容のことを伝えるのは小学校高学年ぐらいからでいいだろう」と思っていました。しかし、彩子さんへの取材や講演会を通して幼児のうちからもっと知ってほしいと思うようになりました。
彩子さんは現在「性教育関連でお声がけがあればすべて対応している」と言います。保育園や幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、大人など年齢や状況に応じて性教育の話をすることができるそうです。関西で性教育の講義や講演を検討する際は、ぜひ彩助産院の彩子さんへ。
性教育を含め、誰かに話したいと思ったときに安心して頼れる場所があること。それが彩助産院の大きな価値なのだと感じました。
| スポット名 | 彩助産院 |
| 時間 | 9:00〜17:00 |
| 問い合わせ先 | 090-1212-2823 |
| アクセス | JR京都線 摂津富田駅下車 徒歩約5分 阪急京都本線 富田駅下車 徒歩約6分 |
| 住所 | 大阪府高槻市桜ケ丘北町6−7【MAP】 |
| 公式URL | https://takatsuki-ayajyosanin.amebaownd.com/ |
| @ayajyosanin |



