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アート  |    2025.06.29

日本各地のデザインを集めてつなぐ!『DESIGN MUSEUM JAPAN展2025』|国立新美術館

国立新美術館で5月15日~25日まで開催していた「DESIGN MUSEUM JAPAN展 2025~集めてつなごう 日本のデザイン~」。
今回は、昨年に続き「DESIGN MUSEUM JAPAN展 2025~集めてつなごう 日本のデザイン~」を取材してきた様子を紹介します!

DESIGN MUSEUM JAPAN展 入口
DESIGN MUSEUM JAPAN展

日常のくらしの中に、優れたデザインが多数、隠れています。
デザインとは、いわゆる形、色など見た目のデザインだけでなく、素材やコミュニケーションさえもデザインとしてとらえることができます。

国立新美術館展示風景①
国立新美術館展示風景②

2020年1月からNHKにて 「デザインミュージアムをデザインする」 (Eテレ) という番組が始まり、プロジェクトが始まります。
現在、活躍するクリエーターたちが日本各地のデザインをリサーチ、紹介することで、日本全体をひとつの大きなデザインミュージアムにしています。

今回は、栃木県、京都府、奈良県、大阪府、鳥取県、島根県、高知県、宮崎県の地域を紹介していきます。

「白色でシンプルなほうろう」と「京都で生まれたヒラギノフォント」(栃木県・京都府)

栃木県 栃木/グラフィックデザイナー 菊地敦己氏

国立新美術館展示風景(菊地敦己 「ほうろうの生活用品」<デザイナーなし>の温かいデザイン)

栃木県に、ほうろうの全工程を国内で唯一生産しているメーカーがあります。
ほうろうとは、金属の表面にガラス質の釉薬を焼き付けたもの。

強くて錆びやすい鉄と美しくもろいガラスを結合させ、互いの良い点を生かしながら、弱点を補い合っています。

国立新美術館展示風景(菊地敦己 「ほうろうの生活用品」<デザイナーなし>の温かいデザイン)

一見、無駄に見える取っ手も、使い手のことを考えると必要なものであることがわかります。
白色でシンプルではありますが、使う人の気持ちを考えているからこそ作り出せる、温かいデザインでしょう。

京都府 京都/現代美術作家 宮永愛子氏

国立新美術館展示風景(宮永愛子 「ヒラギノフォント」明朝体と京都の新しく古い関係)

1993年、京都でヒラギノフォントが誕生しました。
日本人になじみの多い「明朝体」は形や線の太さにより、文字の味わいが表現できます。

国立新美術館展示風景(宮永愛子 「ヒラギノフォント」明朝体と京都の新しく古い関係)

ヒラギノシリーズで最初に開発された明朝体の原字は手描きで、細かな点を修正するにも時間がかかりました。
自分たちが当たり前に使っている文字が何度も修正されたり、たくさんの履歴があることを知らない人も多いでしょう。

文字との適度な空間、文字を構成する線で囲まれた空間、重心の位置、文字の濃度を意識し、読みやすく落ち着いた印象を持たせています。

「天然の冷蔵庫氷室」と「ガラスの産地が生んだ魔法瓶」(奈良県・大阪府) 

奈良県 天理/建築家 塚本由晴氏

国立新美術館展示風景(塚本由晴 「氷室」かき氷を生んだランドスケープ)

1991年、天理市で日本最古といわれる大型氷室跡が出土しました。
「氷室」とは天然の冷蔵庫のこと。
氷は冬に氷室に蓄えられ、暑い夏に利用できるように天皇に献上されました。

国立新美術館展示風景(塚本由晴 「氷室」かき氷を生んだランドスケープ)

氷室は地形にも関係しています。
古来の人々は、もともとある谷戸と屋根の地形を利用し、池の周りでは落ち葉がないように木を刈るなど、適宜管理していました。
当時の人の努力が氷室保存の状態を整えていたのです。

大阪府 大阪/インテリアデザイナー 五十嵐久枝氏

国立新美術館展示風景(五十嵐久枝 「魔法瓶」ガラス職人たちの情熱が生んだ<特産品>)

大阪は江戸時代からガラスの産地として知られていました。
長崎の商人、播磨屋清兵衛がオランダ人からガラス製法を学び、その後、大阪天満宮の前でガラスの製造を始めます。

国立新美術館展示風景(五十嵐久枝 「魔法瓶」ガラス職人たちの情熱が生んだ<特産品>)

魔法瓶は20世紀初頭に作られるようになり、1910年前後に輸入されるようになります。
その後、1912年にはじめて国産の魔法瓶が誕生し、大阪では多数の魔法瓶が制作されるようになりました。
時代とともに変わるデザインも魔法瓶の魅力です。

「魂のデザイン大漁旗」と「頑丈に作られた石州瓦」(鳥取県・島根県)

鳥取県 米子/映像工芸作家 菱川勢一氏

国立新美術館展示風景(菱川勢一 「大漁旗」漁師たちを鼓舞する魂のデザイン)

海で漁師たちを鼓舞する大漁旗。
現在は、船を新造した際に親戚や仲間からのお祝いとして贈られています。

国立新美術館展示風景(菱川勢一 「大漁旗」漁師たちを鼓舞する魂のデザイン)

いまや数少ない大漁旗を作る染物店が手作業で作るすべて1点もので、布に図柄を手描きし、色を染めて完成させます。
図柄を依頼主と相談し、宝船や恵比寿などの縁起物や、猟師が狙う獲物であるカニやイカなどを取り入れたデザインになっているそうです。

コントラストの強い配色など、旗が派手な裏には「安全を願う強い気持ち」が込められています。

島根県 大田/プロダクトデザイナー 深澤直人氏

国立新美術館展示風景(深澤直人 「石州瓦」瓦が生み出す町の<雰囲気>)

石州瓦は、愛知県の三州瓦と兵庫県の淡路瓦と並ぶ日本三大瓦の一つです。

島根県大田市は、山間部は雪が降り、日本海に面したエリアは海の荒波にさらされ、台風の通り道にもなりやすい地域。
石州瓦は、地元で採れる素材が使われ、厳しい状況にも耐えられるように頑丈に作られています。

国立新美術館展示風景(深澤直人 「石州瓦」瓦が生み出す町の<雰囲気>)

粘り気が特徴の粘土が使用され、釉薬の原材料には、松江市宍道町来待地区で産出された、軟質で加工しやすい来待石を使用しています。
1350度の高温で焼くことで、硬く頑丈で水をはじきやすい瓦が誕生するのだそう。

石州瓦は、この地域でしか見ることができない、独特な景観を生み出しています。

「コミュニケーションのデザイン」と「人をつなぐネオンデザイン」(高知県・宮崎県)

高知県 高知/デザイナー 宮前義之氏

国立新美術館展示風景(宮前義之 「街路市」市 300年続くコミュニケーションのデザイン)

高知県には江戸時代から続く「街路市」があります。
1690年に土佐藩第四代藩主、山内豊昌公が藩の政策として、場所と日取りを定めたことが始まりです。

街路市は、野菜や果物の特産品のほか、郷土料理、工芸品まで何でもそろう生活に寄り添った日本最大級の市場。

国立新美術館展示風景(宮前義之 「街路市」市 300年続くコミュニケーションのデザイン)

約1kmの道路におよそ300店のお店が出店し、生産者の話を聞きながら商品を手に取ることができます。
作り手と買い手がコミュニケーションを取りながら、300年以上も続く売り買いは、コミュニケーションのデザインと言えるでしょう。

宮崎県 宮崎/グラフィックデザイナー 佐藤卓氏

国立新美術館展示風景(佐藤卓 「スナック」<間>をつなぐ本能のデザイン)

宮崎県最大の繁華街、宮崎県宮崎市の西橘通り通称「ニシタチ」。
店主と客の距離が近く、親しみやすい雰囲気が魅力のスナックが多数並びます。

国立新美術館展示風景(佐藤卓 「スナック」<間>をつなぐ本能のデザイン)

ニシタチエリアには、1000店以上の飲食店があり、多数のスナックの看板があります。
お客さんを誘導するための目印であるネオン看板。
色や大きさにフォーマットがあるものもあれば、書体までこだわって制作されているものまで、さまざまなネオンを目にすることができるでしょう。

日本各地にあるデザインを知る

国立新美術館展示風景③

今回は、国立新美術館で5月15日~25日まで開催していた「DESIGN MUSEUM JAPAN展 2025~集めてつなごう 日本のデザイン~」を取材してきました。

本展では、地域の特性を生かした石州瓦から、ネオンのデザイン、コミュニケーションが繋ぐデザインなど、日本各地でさまざまなデザインを知ることができました。
生活の中にあるデザインに興味をもつことで、新しい視点が生まれてくるかもしれません。

デザインミュージアムジャパン公式サイト
https://design-museum-japan.jp

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この記事を書いた人

ChicacoMurayama

【アーティスト/ライター】【神奈川県公認Mediallライター】 幼い頃から絵を描くことが好きで、画家活動を行う。また、読書、執筆、写真を撮ることも好きでフリーライターとしても活動。 作品は独自に研究し生み出した技法のサンドアート。コンセプトは「綺麗な世界、穏やかに心温まる世界」。展示販売、年に数回のワークショップ、ラジオでアートについて話したりアート普及活動も行う。 多めで見やすい写真とわかりやすい等身大の言葉で、アート、美術館・博物館をメインに画材、文具や神社、カフェなどを紹介していきます! 

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