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アート  |    2026.09.01

同じ自然を見つめながら、たどり着いた表現は正反対だった──二人のアーティストが描く「CONNECT」

「自然」をテーマにした展覧会と聞くと、どんな作品を思い浮かべるでしょうか。山や森、川の風景を描いた絵画。植物をモチーフにした写真。あるいは、環境問題を訴えるインスタレーションかもしれません。

しかし、兵庫県尼崎市のA-Labで開催される展覧会「CONNECT」は、そのどれとも少し違います。
この展覧会には、自然を見つめ続ける二人のアーティストが参加しています。

一人は、光を追い続ける銅版画家・武雄文子。

もう一人は、風や音、空気といった目に見えない感覚を映像作品へと取り込む筒井夏鈴。

二人に共通するテーマは「自然」。

けれど、その向き合い方は驚くほど対照的でした。

だからこそ、この展覧会のタイトルは「CONNECT」なのかもしれません。


「CONNECT」は、二人の出会いから始まった

武雄さんと筒井さんが出会ったきっかけは、2025年にA-Labでそれぞれが担当した小中学生向けワークショップでした。

異なる分野で活動する二人でしたが、「自然」をテーマに作品を制作しているという共通点がありました。

そこから「二人で展示をしてみよう」という話が生まれ、今回の展覧会へとつながっていきます。

タイトルの「CONNECT」には、さまざまな意味が込められています。

武雄さんと筒井さんがつながること。

作品と鑑賞者がつながること。

そして、人と自然がつながること。

一つの言葉でありながら、その解釈は一つではありません。

鑑賞する人によって、新しい「CONNECT」が生まれていく余白が残されています。


同じ自然を見つめながら、たどり着いた表現は正反対だった

今回、お二人にお話を伺っていて最も印象に残ったのは、同じ「自然」をテーマにしながら、そのアプローチがまったく異なることでした。

武雄さんは、自然を「見る」ことから作品を生み出します。

光の変化や色彩、そこに潜む見えない現象を観察し、銅版画という技法を用いて可視化していきます。

一方の筒井さんは、自然を「感じる」ことから制作を始めます。

風が頬をなでる感覚、葉が揺れる音、湿度や空気の気配。映像だけでは伝えきれない体験を、音やセンサー、空間そのものを使って再構築します。

武雄さんは自然を分解し、その本質を見つめようとする人。

筒井さんは自然を全身で受け止め、その体験をもう一度作品として立ち上げる人。

一人は「光」を入口に。

もう一人は「空気」を入口に。

登る道は違いますが、二人が目指している場所は同じです。

それは、「自然との距離を少し近づけること」。

この対照的な表現が、一つの展示空間で出会うことこそ、「CONNECT」の魅力なのだと感じました。


光を見つめ続ける版画家・武雄文子さん

武雄さんは、銅版画という伝統的な技法を用いながら、独自の表現を追求しています。

もともとは漫画家を目指していたという武雄さん。

描いた作品をコピー機で複製したとき、原画とはまったく違う印象になることに衝撃を受けました。

「コピー機には、自分とは違う世界が見えているのではないか」

その小さな気づきが、現在の作品制作につながっています。

完成した版画をコピー機でスキャンし、その途中で作品を動かす。

コピー機という日常的な機械を制作工程の一部に取り入れたこの技法は、武雄さん自身が生み出したオリジナルの表現です。

版画は「複製」の芸術とも言われます。

しかし武雄さんは、その特性をさらに拡張し、光や時間の流れまで作品へ取り込もうとしています。


五感で自然を再構築する映像作家・筒井夏鈴さん

一方、筒井さんが向き合っているのは「体験」です。

大学では映像を学び、自然の風景を撮影するために山へ通いました。

ところが、完成した映像を見返したとき、大きな違和感を覚えたといいます。

そこには確かに山の景色が映っていました。

しかし、その場で聞こえた葉擦れの音も、木々を抜ける風も、湿った空気も、肌で感じた感覚も映ってはいなかったのです。

「映像だけでは、その場所を体験したことにはならない」

その気づきから、筒井さんは葉の揺れにセンサーを取り付け、その動きをデータ化し、音へ変換するなど、作品ごとに様々な技法を試しながら制作を続けています。

映像を「見る」のではなく、その場を「感じる」。

五感を通して自然を体験する作品は、鑑賞者に新しい自然との向き合い方を提案してくれます。


二人が届けたいのは、「答え」ではなく「きっかけ」

お二人への取材で、共通していた言葉があります。

「人にそっと寄り添う作品でありたい」

社会を変えたい。

環境問題を訴えたい。

価値観を押し付けたい。

そうした強いメッセージを掲げるのではなく、それぞれが感じた自然との向き合い方を静かに提示する。

その作品が、誰かの日常へ少しずつ溶け込んでいけばいい。

そんな考え方でした。

だから、「CONNECT」は何か一つの答えを示す展覧会ではありません。

作品を見て何を感じるか。

光を見て何を思うか。

風や音に耳を澄ませたとき、どんな景色が浮かぶのか。

その答えは、きっと鑑賞者一人ひとりの中にあります。

自然とのつながり。

作品とのつながり。

そして、自分自身とのつながり。

「CONNECT」というタイトルには、そのすべてが込められているように感じました。


イベント情報

A-LAB Exhibition Vol.52「CONNECT 武雄文子・筒井夏鈴 二人展」

会期:2026年8月22日(土)~9月23日(水)
開催時間:10:00-18:00
休館日:火曜日 ※9月22日(火・祝)は開館
料金:無料
会場:あまらぶアートラボ「A-Lab」
   兵庫県尼崎市西長洲町2丁目33−1
公式サイト:https://www.ama-a-lab.com

武雄文子
公式HP:https://takeoayako.com/
Instagram:https://www.instagram.com/takeo_ayako/

筒井夏鈴
Instagram:https://www.instagram.com/neverend_xia/

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この記事を書いた人

灯と余白

兵庫県西宮市在住。地域の魅力は、観光名所や特産品だけではなく、そこで暮らし、働き、挑戦する人たちの物語の中にもあると思っています。一人ひとりが大切にしている想いや、その場所に根づいた営みに丁寧に耳を傾けながら、地域の新たな魅力をお届けしていきたいです。誰かの物語が、誰かの一歩につながる。そんな記事が書けたらいいな。

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