「こんにゃくなんて、どれも同じでしょ?」と思っている方にこそ、ぜひ知ってほしい物語があります。愛媛県松山市永木町、かつての街道の入り口に佇む「重松食品」を訪れると、その考えは180度変わるはずです。明治9年創業の同店は、今年で節目の150年を迎えます。五代目の重松雄二さん(以下、雄二さん)が守り続けるのは、手間ひまを惜しまない「本物」の味です。お遍路さんの感動から始まったこの物語を知れば、いつもの食卓がもっと豊かになるでしょう。今回は、老舗が守り抜く驚きの製法と、150年愛される秘密に迫ります。
金毘羅街道に刻まれた「丸屋新兵衛」の志

重松食品の歴史は、明治9年(1876年)まで遡ります。江戸時代から続く、松山の東へ向かう「金毘羅街道」の出発点である現在の場所で、その歩みは始まりました。
創業のきっかけは、初代がお遍路さんの「お接待」で提供されたこんにゃくの味に、深く感動したことだったと言い伝えられています。初代は「自分でもこの感動を形にしたい」と一念発起。

当時の信仰の深さを物語るように、香川県の金毘羅山の参道には、丸屋新兵衛の名が刻まれた石碑が今も並んでいます。車もない時代、松山から香川まで気合と根性で足を運び、信仰と美食への情熱を燃やした初代の志が、今の重松食品の根底にあるのです。

その後、屋号は「重松食品」へと変わりましたが、150年経った今も、雄二さんは同じ場所で商売を続けています。街並みは変わっても、新兵衛さんが抱いた「美味しいこんにゃくを届けたい」という純粋な想いだけは、この地で脈々と受け継がれています。
2日間かける伝統製法「寝かせ造り」

今の時代、機械によるオートメーション化を進めれば、こんにゃくはわずか半日で完成します。しかし、重松食品ではあえて2日間という時間をかける伝統製法「寝かせ造り」を貫いています。

四代目の堅さんは、周囲が次々と自動化に舵を切る中、「自動化しても美味しくはならない」と、頑固なまでに手作りの製法を守り抜きました。五代目の雄二さんも、修行先の大規模工場で機械製法を経験した際、自分の家のこんにゃくとの味の違いに驚いたそうです。

経験を経て、雄二さんは「昔からの作り方を継承することが間違いではない」と確信しました。ゆっくりと時間をかけて固めることで、独特の強いコシと、味が染み込みやすい絶妙な食感が生まれます。
松山の水が作る「肌に馴染む味」と厳選された国産原料

美味しさのもう一つの秘密は、工場のすぐ横を流れる石手川の伏流水(地下水)です。重松食品では創業以来、この地下水を使い続けています。
「松山で食べられるものだから、松山の人の肌に馴染んだ水で作るのが一番」という雄二さんの言葉には、地域への深い愛情が込められています。水道水ではなく、不純物の少ない地下水を使うことで、こんにゃく特有の臭みが抑えられ、原料の良さが引き立つのです。

原料となるこんにゃく粉も、長年信頼を置く問屋から仕入れる純国産のものにこだわっています。最近では、東日本大震災後の風評被害をきっかけに、「地元産で安心なものを」と、雄二さん自ら松山市内でこんにゃく芋の自家栽培にも挑戦。
将来的に「オール重松産(自家製芋)」のこんにゃくを目指すという、熱いプロジェクトも進行中です。
「アク抜き不要」の衝撃!そのままかじって美味しい理由

多くの主婦や料理人を驚かせているのは、重松食品のこんにゃくが「全品アク抜き不要」だという点です。通常、こんにゃくは凝固剤(石灰など)の影響で、独特のエグみや臭みが出てしまいます。
一方、重松食品では一晩じっくりタンクの中で寝かせることで、余分なアクが自然と抜けていきます。上質な凝固剤を使用し、時間をかけて丁寧に不純物を取り除くことで、「袋から出してそのまま食べられる」ほどの品質を実現しているのです。

「まずはそのままかじってみてほしい」と雄二さんが胸を張るその味は、エグみが一切なく、こんにゃく本来の風味が口いっぱいに広がります。
五代目の「遊び」が150年の伝統を進化させる

前編では、重松食品が150年かけて磨き上げた「こだわり」と伝統の製法を紹介しました。しかし、この老舗がこれほど長く愛される理由は、単なる「守り」だけではありません。

後編では、五代目・雄二さんの驚くべきプライベートにも注目します。「遊びの合間に仕事をすべし」というユニークすぎる家訓の真意や、トライアスロンに機械分解といった多趣味な日常が、どう仕事に活かされているのか?職人技が光る「バタ練り」の秘密や、プロ直伝のレシピまで、さらに深く重松食品の魅力に迫ります。お楽しみに!
店舗・会社情報

| 項目 | 内容 |
| 会社名 | 重松食品 |
| 代表者 | 五代目 重松雄二 |
| 住所 | 愛媛県松山市永木町1-31 |
| 営業時間 | 8:00~18:00 |
| 購入の目安 | 「シャッターが開いていたら」いつでも購入可能 |
| 定休日 | 日曜祝日(祝日は9月以降など営業する場合あり)、お盆、正月 |
| 駐車場 | 2台分あり |
| 電話番号 | 089-931-3656 |




