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バックストーリー  |    2026.08.28

“誰かのお母さんへ”を届ける手紙の循環。ひとつの整体院が生んだ「mamacure letters」|愛知県名古屋市

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mamacure letters(ママキュア レターズ)」は、誰かから、どこかのお母さんへ手書きの手紙を贈る小さな循環。育児や生活に追われる毎日の中で、お母さんたちの心がふっと軽くなる瞬間をつくる取り組みです。その背景を追うと、名古屋市西区にある整体院「mamacure(ママキュア)」にたどり着きました。

院長の佐藤さんに「mamacure letters」が生まれた背景や、“家族を守る整体院”として運営する「mamacure」を通して目指す地点について話を伺いました。

mamacure院長 佐藤翼さん(写真提供mamacure、以下同じ)

「mamacure letters」がつなげる応援の循環

「mamacure letters」のテーマは“お母さんをひとりにしないこと”。手紙という小さな行為が、思いがけない“誰かの支え”へと変わっていくプロジェクトです。参加者は、どこかのお母さんを想像しながら手紙を書き、その言葉はまた別のどこかのお母さんへ届けられます。

少子化が進む中、母親の見えにくい頑張りに光を当てることは、社会的な意義があるのではないか──そんな仮説が企画の出発点にありました。

一方で、「社会のために何かしたいけれど、何をすればいいかわからない」人が、若い世代を中心に多いのではないかとも感じていたそうです。そこで、参加しやすい方法として“どこかのお母さんへの手紙”という形を軸に、プロジェクトを立ち上げました。

その後「mamacure letters」は、名古屋大学キャンパス内の「Common Nexus(コモンネクサス)」(運営:東海国立大学機構)が公募する「ねのねプログラム」に採択。伴走支援を受けながらコンセプトを固め、展示やイベントが開催されました。(現在は採択期間を終えています)。

イベントでは、参加者が贈った“誰かからの感謝や応援”の手紙がお母さんへ手渡され、受け取ったお母さんからは「心が温まった」「少し救われた気がした」といった声が寄せられました。なかには「次は自分が誰かに書いてみようかな」という方もいたそうです。

筆者である私もイベントに参加し、手紙を書き、そして手紙を受け取りました。贈られた言葉に、自分はこんなに立派な母親ではないと思いながらも、不思議な温かさに包まれたのを覚えています。それはまさに、「mamacure letters」がつなげる応援の循環に触れた瞬間でした。

心に届く手紙の広がり

届けられる手紙はすべて匿名です。「知らない誰かが応援してくれている」という気づきを届けたかったからだといいます。名前によるバイアスを避け、書く側と受け取る側双方のハードルを下げる意図もありました。

「お母さん」といっても、赤ちゃんや幼児のママだけでなく幅広い世代がいます。どのお母さんに届けるのか、どんな言葉なら負担にならないかと、選別にも工夫が必要でした。フォームや紙で届いた言葉は運営側で精査し、手書きにして渡しました。子育て支援団体を通じて届けた際にも、とても喜ばれたそうです。

そして、佐藤さんの心に残った一通。それは認知症のお母さんへの思いが詰まった手紙でした。「本当はありがとうと言いたい」「でも病気の進行に気づけなかった」「まだできることはないだろうか」といった葛藤が静かに綴られていました。

この手紙は、テーマである“感謝”や“称賛”とは少し異なり、他のお母さんに渡ることはありませんでしたが、「mamacure letters」が別の支えにつながる可能性を感じた出来事だったといいます。

整体院が手紙を届ける理由

普段は理学療法士として自身の整体院「mamacure」で、お客さんをケアする佐藤さん。ではなぜ、整体院が手紙のプロジェクトを始めたのでしょうか。

理由を尋ねると、整体院の施術や発信だけでは伝えきれない「体って大事なんだよ」という思いを、別の角度から届けたかったからだと話してくれました。

“家族を守る整体院”を掲げる「mamacure」では、お母さんの心や体の変化にも自然と目が向いていました。母親が産後うつや心の問題から体調不良になれば、家族の生活に影響しやすい。この状況を課題と捉え、心理面にも働きかけられる方法を探していたといいます。

そこでたどり着いたのが、整体とはまったく異なる“手紙”というアプローチでした。思いを書いて心を整えるジャーナリングに着目したそうです。手紙を受け取ったお母さんが「次は私も」と筆をとり、苦しい体験が誰かの力へと変わっていく——そんな光景を思い描いたことが、プロジェクトの始まりになりました。

体の気になる悩みを相談できる場所をつくりたいという「mamacure」。その延長で、心や社会課題への取り組みとして生まれた「mamacure letters」。

その背景には、佐藤さんが医療の現場で抱いてきた実感がありました。

病気の先にある“その人自身”に向き合うために

整体院「mamacure」をひらいたのは、“身体だけを診る”医療では救いきれない人がいると感じた経験からでした。

現代の病院では、患者の気持ちや背景まで配慮する余裕がなかなか生まれにくいといいます。佐藤さんが働いていた整形外科でも、診断名に沿ったリハビリと痛みの対処が中心でした。生活習慣くらいは聞いても深く踏み込むことはなく、回転の速い現場では身体の回復や症状の改善といった結果が優先されました。

一方で、運動すべきとわかっていても気力が湧かない人や、痛みで動けない人の姿を目の当たりにしました。患部だけ整えても再発したり、別の不調が出ることも少なくありません。

こうした状況から、体だけでなく心やマインドにも目を向ける必要を感じたといいます。 症状の位置づけや人生観、患者自身が「どうしたいのか」という視点が大切だと気づいたそうです。

病気を治しても、その人の全体がよくなるとは限らない。その人自身に向き合える場所をつくりたい——その思いが、2023年の「mamacure」開業へとつながりました。

mamacureを象徴するピンクの壁。普段は本やアート作品、季節のお花などが飾られています。

「家族を守る整体院」が伝える“予防”とは

「mamacure」の“家族を守る整体院”というコンセプトには、佐藤さん自身の原体験があります。高校生のときにお母さんを突然亡くし、「人はこんなにも簡単に死ぬんだ」と身をもって体感したといいます。病名はくも膜下出血。まだ40代後半という若さでした。

理学療法士として働く中で、佐藤さんは40代〜50代が体の不調が表れやすい世代だと実感するようになりました。20代、30代は寝れば戻っていた疲れも、40代、50代になると回復しきれない部分が残る。

その小さな不調を抱えたまま60代〜70代で大きな病気に発展すれば、手術か薬に頼り続けるか、選択肢が限られる現実を見てきました。

自身の生命力で踏ん張れるよう、体を変える“最後のチャンス”は、40代、50代にある。この考えから、子育てがひと段落し“お母さんから自分に戻る”世代の女性が、自分のために通える整体院をつくりたかったといいます。

施術の前後には季節のお茶が一杯用意され、ほっと一息つける心遣いです。

未来のための“健康”という選択

実際には、20代から70代まで幅広い人が訪れているという「mamacure」。年齢や性別に関係なく、体を整えることの大切さ、そして「予防」の視点を伝えています。

佐藤さんの考える予防とは、「自分がどう生きたいか」を起点に健康を考えること。10年後、20年後の姿を言語化し、その未来に必要な習慣を自分で設定し、積み重ねていきます。

一般的な健康基準では、「血圧が高いから塩分を控えましょう」といったアドバイスが示されますが、それだけで人が行動を変えられるとは限りません。だからこそ、病気を防ぐ行動だけでなく、個々の人生に沿った選択こそが予防には欠かせないと語ります。

「mamacure」では施術の前に、まず話を聞く時間を大切にしています。「どうなりたいか」を質問しながら深掘りし、不調の背景にも丁寧にアプローチします。

柔らかな色調で清潔感がある内装は、病院でも家でもない中間の雰囲気を意識したそうです。落ち着いた空間でリラックスして施術を受けられます。

mamacureが目指す“日常を守る”新しい循環

日々の施術を通して、多くの人が「なんとなく不調」や「なんとなく不安」を抱えていると感じるという佐藤さん。今後は、産後の体のダメージなど見えにくい悩みを拾い上げる仕組みを、企業や団体と連携しながら形にしたいと話します。

拾った小さな悩みを整体院でのケアにつなげたり、サービスとして展開したり、あるいは「どうしたいのか」を意識する流れを広めることも視野に入れているそうです。

ひとりひとりの日常を守るという信念を胸に、体の知識や健康への視点を通して笑顔を届ける整体院「mamacure」。

日本中の家族が健やかに暮らせるよう手助けできたら本望だと語る佐藤さんの笑顔が、印象的でした。

店舗情報

名称:mamacure(ママキュア)
住所:愛知県名古屋市西区秩父通2-12 AlbaGrande名護屋 601
診療時間:9:00〜22:00(最終受付21:00)
定休日:日曜日・祝日
電話番号:090‐1417‐4815
ホームページ:https://mamacure.jp/
予約方法:電話またはWebから可能

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この記事を書いた人

やまぐちゆかり

生粋の名古屋人ライター。地域の日常に息づくストーリーを、暮らしの視点から記事にします。趣味はまちあるきと甘いもの。一児の母。

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