
「美味しいね」。
そう二人で笑い合う時間が、何よりの幸せ。いつか、からだに優しいスイーツで大切な地元に笑顔の輪を広げたい――。その想いを本宮市でカタチにした夫婦がいます。
2025年1月にオープンした「ちいさな洋菓子店api(アピ)」。オーナーの沙稀さんと、キッチンを担う夫の直輝さんが営むテイクアウト専門店です。オープンから半年を過ぎた今、子どもからお年寄りまで多くの人が訪れ、「“美味しい!”の笑顔が花咲く場所」として親しまれています。
互いを想う心から生まれた夢
二人の出会いはカフェ巡りでした。共通の趣味が自然と距離を縮め、やがて結婚へとつながりました。沙稀さんはアトピー性皮膚炎のため小麦粉を多く食べることができず、外食で楽しめるスイーツは限られていました。直輝さんはそんな妻のために、自宅で米粉を使ったガトーショコラなどのお菓子をよく作っていたといいます。
自分を思って作ってくれる夫の気持ちが沙稀さんはうれしく、直輝さんは美味しそうに頬張る妻の笑顔を見るのが何よりの幸せでした。そんな時間の積み重ねが、やがて「夫婦でお店を開きたい」という二人の夢を育てていったのです。
「僕がつくるよ」決意を支えた一言
2024年、好物件との出会いや周囲の後押しもあり、二人はついに開業を決意しました。
しかし、オープンへの道のりは順風満帆ではありませんでした。
沙稀さんが経営を担い、直輝さんがキッチンをサポートし、パティシエを雇う予定でしたが、ふたりが目指す「からだに優しい健康的なスイーツ」に共感し、レシピを共につくれる職人はなかなか見つかりませんでした。従来のレシピでは、美味しさを追求するほどに脂質や糖質が増えてしまうからです。
「健康の軸は絶対に曲げたくない。でも作り手がいないと……」。経営方針に悩む沙稀さんに、直輝さんは静かに、そして力強く言いました。
「僕がつくるよ」
それから二人は夜な夜な台所に立ち、米粉を使ったスイーツの試作を重ねました。華やかさよりも「健康」を第一に――その軸は一度もぶれませんでした。
「おいしい」と「ヘルシー」を両立する信念
試行錯誤の末に生まれた「api」のスイーツは、米粉を使ったチーズケーキやシフォンケーキ、マドレーヌなど。バターを控えめにして脂質をおさえ、素材の持ち味を丁寧に引き出しています。
お客さんからは「罪悪感なく食べられる」「子どもに安心して食べさせられる」と評判で、健康を意識する人にも喜ばれています。
ネイリストでありバーでのアルバイト経験もある沙稀さんが担当するドリンクも、お店のこだわりが詰まった一品です。グラデーションが美しいドリンクは「かわいい」と大人気。テイクアウトならではのクレープも学生を中心に好評で、気軽に立ち寄れる憩いの場になっています。



大切な、帰ってこられる場所に
「学生の頃、本宮には気軽に立ち寄れる洋菓子のテイクアウト店がなかった。もしあったら嬉しいのに」
その記憶を、今度は自分たちの手で実現しました。
「地元は帰れるふるさと。未来に羽ばたく学生たちにとって、地元をもっと好きになれる存在でありたい」
二人の店づくりには、そんな願いも織り込まれています。
「api」に込めた願い
店名「api」はイタリア語で「みつばち」を意味します。
花の受粉を助けるみつばちは、地球に欠かせない存在です。「私たちのお菓子も幸せを運び、地域になくてはならない存在になりたい」と二人は話します。蜂の巣を形づくる六角形は、無限に広がる夢のシンボルでもあります。
未来へつなぐ笑顔
これから二人が目指すのは、地産地消の拡大です。規格外の野菜や果物をスムージーやジャムに加工してスイーツに使用し、農家の応援にもつなげたいと考えています。
「見た目が不揃いでも味は一級品。apiから笑顔の連鎖を生み出したい」
その言葉には、地元への感謝と未来への決意が込められています。
今日も本宮に幸せを
「ありがとう」の気持ちを忘れずに。夫婦は今日もお店を開けます。
大好きなまちで、二人の夢は確かに花開きました。
「ちいさな洋菓子店api」はこれからも、訪れる人々に笑顔と幸せを運び続けます。

店舗情報
住所:福島県本宮市中條30-9(本宮駅から徒歩3分)
営業時間:11:00~17:00
定休日:不定休
詳細はInstagramにて。
Instagram:https://www.instagram.com/api.chi_sana/