
JR肥前麓駅から徒歩5分。
家々が立ち並ぶ道路沿いを歩いて行くと、手入れの行き届いた庭が見えてくる。鳥栖市で2004年6月に開業し、21年の歴史を持つ「Café Vivace」(以下ヴィバーチェ)だ。
オーナーの大塚 重之(しげゆき)さんは、大分県日田のご出身。大手コーヒーメーカー・キーコーヒーで38年間勤めた経歴を持つ。鳥栖への移住は、転勤がきっかけだったのだそう。
現在は、妻の美恵子(みえこ)さんと、娘の美由希(みゆき)さんの3人でお店を切り盛りしている。
ヴィバーチェに込められた意味やお店の魅力について、美由希さんにお話を伺うことができた。
鳥栖でこだわりの詰まった喫茶店を開業
店名の“ヴィバーチェ”は、音楽用語で“速く、活発に”を意味する単語だ。
また、イタリア語では“生き生きと、活気に満ちた”というニュアンスで訳される。
店名を決めるにあたって、最初は和風な単語も候補に挙がっていたが、どこかしっくりとこない。そんな中、偶然にもヴァイオリニストの葉加瀬太郎さんが出演するラジオ番組で“Vivace”という単語を耳にする。言葉の響きや意味が、目指したいお店のイメージと合致した瞬間だった。

純喫茶風のシックな店内には、随所にこだわりが詰まっている。
「身内に大工さんがいて、内装もテーブルも全部相談しながらひとつひとつ作ってもらったんです」
レトロな純喫茶風の店内は、よく見るとすべての席が半個室のような作りになっている。そしてその広さは、場所によって少しずつ異なっていた。ひとりで座るのにちょうど良い席や、大人数でゆったりするのにぴったりな席まで様々だ。
美由希さんによると、テーブルも各スペースに合わせた設計になっているので、すべて大きさが違うのだそう。
「ここは大人数で座る席で、2つのテーブルがそれぞれ、ほんの少し台形になっているんですよ」
言われてよく見てみると、2席並べてあるテーブルの天板が、本当に僅かだが台形になっていた。上底に当たる部分をくっつけると、席に座った人が皆、自然と中央を向いて顔を合わせるような格好になる。

常連さんの中には、お気に入りの席を予約する人も。
言われなければ、おそらく気付かないまま過ごしてしまうであろう“さりげないこだわり”の積み重ねが、ヴィバーチェを形づくっている。
喫茶店の贅沢なコーヒーで楽しむ、自分のための時間
提供されるコーヒーの中で、最もこだわりが深いのが“ダッチコーヒー”だ。
「水出しコーヒー」とも言われ、近年では家庭でも手軽に作れるイメージが強くなってきた。
しかし、ヴィバーチェのそれは、一般的な「水出しコーヒー」とは一線を画す。
ヴィバーチェのダッチコーヒーは、セラミックフィルターに空いた数ミクロンの微細な穴を通して、8時間もの時間をかけて落とす。雑味や不純物が取り除かれるから、アイスで飲んでも濁らないし、淹れたときのままの深い琥珀色が美しい。
えぐみのない、非常にスッキリとした味わいも特徴的だ。

飲み方も、ホットとアイスのほかに、抽出したままの状態でいただく“冷たいダッチホットコーヒー”や“水出しコーヒーソーダ”など、選択肢が幅広い。
「アイスで飲むときは、ミルクや砂糖を入れてカフェオレにしても全く違う味わいになりますよ」
どれもそれぞれ印象が異なるため、飲み比べて自分好みの飲み方を探してみるのも楽しそうだ。
また、同じダッチコーヒーでも、アイスとホットで使うコーヒー粉を変えているのだそう。ここにも、重之さんのこだわりが光る。
「一度飲んだら、それからずっとダッチコーヒーばかり注文されるお客様もいる」のだとか。それほど、ヴィバーチェのダッチコーヒーにはファンが多い。

カウンター正面にある棚には、素材も形も異なるカップが所狭しと並んでいる。
もともと趣味として旅行先で1客ずつ集めていたものに加え、「ここで使ってほしい」とお客様から譲り受けたものも多い。素材も形も、飲み口の広さもさまざまだ。
「持ち手が細いと、ご年配の方は手を入れにくい。若い人は力があるから、細くても持てるじゃないですか。そんな風に、重さやデザインも含めてその人に合ったものを選んでいます」

丁寧に選んだカップに、その都度その都度、1杯ずつ丁寧にコーヒーを淹れる。
「家で飲むのとは違った雰囲気を楽しんでもらいたい」という細やかな心遣いこそ、ヴィバーチェで心地よい時間が過ごせる秘密なのだろう。
鳥栖に根付いた喫茶店は、やがてみんなの拠り所に
「一度来てくれたお客様がリピーターになってくれることが多くて。そうして、ご家族やお友達を連れてきてくださるから、だんだんご縁がつながっていくんです」
子どものいる家族からご年配まで、ヴィバーチェの客層は幅広い。
地域の方の利用も多く、コミュニティセンターでの習い事を終えた女性グループが来店することもある。また、近くの大学に通う先生や学生が、講義終わりに訪れることも。
「ここに通ってくれていた学生さんが、就職して里帰りしてきたときに『マスター、元気?』なんて言って、立ち寄ってくださることもあるんですよ」と、美由希さんは嬉しそうに話す。

ヴィバーチェには、「ただいま」と言いたくなるような、アットホームな雰囲気がある。
それは、初めて訪れる人にも知り合いのように気さくに話しかけてくれる、重之さんの人柄によるところが大きい。軽やかなコミュニケーションが、人と直接関わることが少なくなった現代において、少しくすぐったくもあり、嬉しくもある。
美由希さんいわく、重之さんと話すのを楽しみに来店する、ファンのような方も多いのだとか。

「一人で来られる女性も多いんですよ。主婦の方とか、ちょっと仕事前に寄ったりとか。しゃべりに来るというよりも、ここでゆっくり過ごして、気持ちをリセットされているような印象です」
静かにゆったりと過ごしたいときは、半個室のような空間で自分だけの時間を楽しむのも、ヴィバーチェでの過ごし方のひとつ。
自分が心地よくいられる席で、自分のために選ばれたカップを使い、丁寧に一杯ずつ淹れられたコーヒーや、会話を楽しむ――。なんて贅沢な時間なのだろう。
「ここに来たらホッとする、また頑張ろうって思ってもらえるような、そういう場所になれたら良いなと思っています」
ゆったりとした時間が流れる店内には、今日もたくさんの人が訪れる。
鳥栖市を訪れた際は、忙しい日常から離れて、ヴィバーチェで一息ついてみてはいかがだろうか。
店舗情報
| 店名 | Café Vivace(ヴィバーチェ) |
| 住所 | 佐賀県鳥栖市平田町2970-1 |
| 電話番号 | 0942-84-1737 |
| アクセス | 肥前麓駅から徒歩5分 |
| 営業時間 | 月曜日~土曜日 10:00 – 20:00 |
| 定休日 | 日曜日 |




