前編で紹介したタスクブリーフィング(競技者会議)を経て、ついに数十機のバルーンが一斉に立ち上がります。
後編では、一斉離陸を見られる「競技フライト」と、地上で楽しむ「バルーンファンタジア」について紹介します。
夜明け前の会場へ|静寂と高揚が交錯する時間
5時47分の電車で佐賀駅を出発し、5時53分に「バルーンさが駅」に到着。そこから10分ほど歩くと、ローンチエリア正面の観覧エリアに着きます。この時点ではまだ競技者の姿はなく、会場には静けさが漂っていました。
一方で、大会本部のアナウンスチームがスピーカーから流す解説が、そんな静寂を心地よく満たしていきます。佐賀インターナショナルバルーンフェスタの歴史や、佐賀の見どころ、地元グルメの紹介などが流れ、夜明けを待つ間も退屈しません。

競技フライト前には、タスクブリーフィング(競技者会議)を実施中。GOサインが出ると、各チームが大型バンでローンチエリアへ進入し、広げたバルーンを手際よく膨らませていきます。

離陸OKの合図である緑色のフラッグが掲げられると、会場の空気が一気に熱を帯びます。早朝の河川敷で炎が立ち上がり、無数の気球がゆっくりと姿を現す様子は、まさに空のショーの始まりを告げる瞬間でした。
競技フライト|息を呑む一斉離陸

緑のフラッグが掲げられ、離陸の許可が出る。それを合図に、ローンチエリア全体が一気に動き出しました。
あちこちでバーナーの炎が上がり、熱を帯びた空気が気球の中へ送り込まれていきます。芝生の上に横たわっていた巨大な布が、風をはらみながら少しずつ立ち上がり、その形を整えながら空へと向かっていきました。
次第に立ち上がるバルーンが増え、あたり一面がさまざまな色に包まれます。青い空を背景に、赤・黄・白・オレンジ・ストライプ柄など、それぞれのチームの個性が、まるで舞台の幕が上がるように姿を現しました。

OKサインが出た後は、どのタイミングで離陸するかはパイロットの判断次第。風向きや高度を読み、戦略に合わせて早めに飛ぶチームもいれば、他の気球の動きを見ながらじっくりと上昇のタイミングを計るチームもあります。
空へと吸い込まれるように、一機、また一機と離陸していく。会場からは歓声やシャッター音が響き、気づけば空は無数の気球で埋め尽くされていました。風に乗ってゆっくりと流れていくその光景は、ただのバルーンの打ち上げではなく、人と自然が呼吸を合わせて描くアートのような瞬間でした。
バルーンファンタジア|可愛いデザインのバルーン

競技フライトが終わると、会場の雰囲気ががらりと変わります。空を舞っていたバルーンが遠くに消えたあと、地上では「バルーンファンタジア」がスタート。観覧エリアのすぐそばにキャッチーなデザインのバルーンが次々と登場し、再び会場が活気づきます。

動物やアニメキャラクターなどのユニークなバルーンたちが並び、空へ浮かぶというより立っている状態で展示されるこのイベント。ローンチエリアが解放され、観客はすぐ近くまで近づけるため、バルーンの巨大さや布地の質感、バーナーの熱を間近に感じることができます。
地上ではスタッフやパイロットが笑顔で手を振り、写真撮影や簡単な質問にも快く応じてくれます。競技中の緊張感とは一転して、ここではどこか温かい空気が流れていました。
おわりに

佐賀バルーンフェスタは、自然条件に左右されるため、行ってみないと分からない要素が多いイベントです。しかし、だからこそ体験できた瞬間の価値が大きいです。一斉離陸の迫力、バルーンファンタジアの温かい雰囲気、年に1度の祭りを楽しみにしている人々の熱量、そのどれもが現地でしか味わえません。
競技としての緊張感と、祭りのような開放感。その両方が同じ場所で同時に存在しているのが、このイベントの魅力です。
佐賀の秋の空に、熱気球がゆっくりと浮かび上がる光景。その特別な朝を、一度は現地で見届けてみてはいかがでしょうか。




